エネルギー×スマート農業でイノベーションを!
かんでん Update
2021.11.15

エネルギー×スマート農業でイノベーションを!

ベンチャー企業とともに新領域に挑むK4 Venturesは、2021年3月農業のデジタル化と営農支援サービスを展開する「テラスマイル」との業務提携を開始した。そこで、農業・食料分野という新領域で新たなサービス創出に取り組む関西電力 経営企画室 イノベーションラボの和田山嗣倫に話を聞いた。

テラスマイルとの業務提携内容は?

テラスマイルは「営農者を豊かにする」をミッションに2014年設立のアグリテックのスタートアップ企業。クラウド農業情報基盤Right ARMを活用して最適な出荷時期を提案するなど、農業経営支援サービスを通じ農業をデジタル化し、省力化や高品質生産などを実現するスマート農業を推進しています。提携によりAI出荷予測などRight ARM機能を強化するとともに、事業連携による新たなサービス開発を目指していきます。まずは、当社のグループ会社 気象工学研究所の持つ高精度、多種な気象データをRight ARMで活用し、サービスの充実を図ります。野菜は出荷時期によって価格が大きく変動するため、野菜等の消費予測と気象データなどを組み合わせ、高く売れる出荷時期を予測した生育計画を立てることで、農業従事者の所得向上に貢献することができます。
将来的にはエネルギーや情報通信事業で培った知見を最大限活用し、ゼロカーボン化やSociety5.0実現に向けたイノベーションを起こしていきます。

関西電力経営企画室イノベーションラボ 和田山 嗣倫
関西電力経営企画室イノベーションラボ
和田山 嗣倫
データとAIを活用した「RightARM」
データとAIを活用した「RightARM」

エネルギーと農業は関りが薄いように感じるが、
農業分野を選んだ理由は?

農業とエネルギーは密接に絡んでいます。特に、ハウス栽培は温度調節に多大なエネルギーが使われており、冬場の加温に使う動力源のほとんどが重油。ゼロカーボンの流れのなかで、動力源を電気に換える意義は大きいと考えています。
また、重油価格の上昇を販売価格に転嫁することが難しく、重油の値上がりで生産を中断される農家さんも多くいらっしゃいます。エネルギー課題の解決が就農人口の増加や農家さんの所得向上などにもつながると考えています。

具体的にはどうする?

まず、既存技術を活用するという観点からは、ヒートポンプの活用が有効と考えています。ただし、これまで同じやり方でヒートポンプを普及させようとしても、イニシャルコストが高く、初期投資の回収に時間がかかり、なかなか導入が進まない。そこで、テラスマイルの収穫予測技術を使って、足もとのエネルギーコスト(投資)と先行きの収入予測(リターン)との費用対効果を示すことができれば、活用の場面が増え、ヒートポンプ普及の糸口がつかめるのではないかと考えています。

「農業は成長が危ぶまれている」と見る人も多いが、
農業の未来をどう見ている?

高齢化による担い手不足や耕作放棄地の増加など確かに課題は多いです。ただ農業総産出額*データを見ると、2009年から2019年には増加に転じていますし、大規模経営への集積が加速、新たに就農を希望する若者も増加しています。こうしたトレンドに、テラスマイルのようなスマート農業の社会実装にチャレンジするスタートアップが出始めている。まだまだ課題もあるが、大きなチャンスを秘めている事業だと考えています。

*農産物と農産物を原料としてつくられた加工農産物を販売した売上額

業務提携を進めるうえでの苦労、やりがいは?

新たな価値を社会へ

関西電力ではイノベーションを自律的・継続的に巻き起こし新たな価値を社会に届けている

関西電力にとって農業が新たな領域であることは間違いなく、農業の抱える課題や可能性などの事業理解とテラスマイルのビジョンや戦略の理解に時間を費やしました。一方で、農業の生産性向上には、エネルギーの有効活用が欠かせないため、当社がこれまで培ってきたノウハウと新たな領域との重なり合う部分に着目し、関西電力が提携する意義を見出し、投資実行できたことはひとつの成果でした。
とはいえ、本番はこれからです。農業分野の事業機会創出という最終目的に向け、社会実装できなければ価値がないので、テラスマイルの成長とともに、我々としても、新たな領域での事業機会を獲得できるよう、スピード感を持って検討を具現化したいです。そこまでできて、本当の意味でのやりがいを感じられると思います。

今後の抱負を!

まずは、テラスマイルの成長をサポートすることで、持続可能な農業の発展に貢献したいです。それとともに、ヒートポンプの利活用に向けて、現状の利用実態把握などを通じて、テラスマイルの技術との組み合わせなど、これまでと違うアプローチを検討しています。その上で、関西電力として農業とエネルギーとの重なり合う領域での新事業の開発。あくまでも一例ですが、ハウス栽培で先行するオランダでは、コジェネを取り入れて売電と農業をセットで事業展開するビジネスモデルを確立していたり、日本でも営農を続けながら、農地の上に太陽光パネルを設置し発電するソーラーシェアリングという取組みも進みつつあります。
今後、日本国内は、人口減をはじめとした、過去に類を見ない形に社会が変わっていくと想定されます。スマート農業の推進や地産地消も、その対応策の一部ですが、新たな社会・地域におけるインフラの果たす役割はとても大きく、インフラ事業、さらに言えば、関西電力自身が、新しい社会に適応していかねばならない。その時に、農業とエネルギーのような、異分野同士を新結合させる発想や思考が極めて重要になると考えています。「関電発 エネルギーと農業のハイブリッド人材」として、これからの社会に貢献できるよう頑張っていきたいと思っています。

YOU'S TOPへ戻る