現場取材|ゼロカーボンエネルギーのリーディングカンパニー
かんでん Update
2021.4.30

現場取材|ゼロカーボンエネルギーのリーディングカンパニー

再エネに関するソリューションサービスの展開

パリ協定の本格始動、政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」もあって、ゼロカーボン化に向けた電力業界への期待は大きいが、今のところ再エネ開発計画は着実に進んでいる、と森は胸を張る。

とはいえ、今後の主力と目される洋上風力にしろ、日本が世界屈指のポテンシャルを持つ地熱にしろ、関西エリアはほとんど適地に恵まれていない。このため関西電力は、北海道から九州まで国内各地で適地を探し、各地の開発事業に幅広く参画。社員が現地に出向し、立ち上げを主導する例も少なくない。

持続可能な未来社会の実現を支える事業者として、再エネ電源の維持・拡大に貢献していくために、電源開発だけでなく、周辺ビジネスにも積極的に取り組んでいく。発電事業で培ったノウハウを生かして運転管理・保守点検のサービスなどに加え、分散型の再エネ電源を需給調整するアグリゲーションサービス、再エネ電源を使いたいというお客さま向けのPPA(電力販売契約)など、多様なソリューションサービスが考えられるという。

ゼロカーボン化を追い風にした電化の進展や、お客さまの再エネニーズが高まるなか、「この機を捉えて新しいソリューションサービスを展開し、社会のゼロカーボン化を推進。SDGsの観点から関西電力グループの価値を高めるとともに、企業としての収益確保──その両立を目指したい」。森はチャレンジを楽しむような笑顔を見せた。

九州でバイオマス、かんだ発電所

福岡県北東部、周防灘に面した苅田町の臨海工業地帯の一画で、バイオマス発電所の建設工事が進んでいる。関西電力が100%出資したバイオパワー苅田合同会社の「かんだ発電所(出力約7.5万kW)」だ。

木材など生物資源を燃料にするバイオマス発電は、安定的に電気が得られる半面、国内では燃料確保が難しい。そこで関西電力は、海外で豊富に流通している木屑を圧縮成形した木質ペレットを使うバイオマス発電を計画。全国で適地を探し、福岡県苅田町に白羽の矢を立てた。

「港湾設備、工業用水などのインフラが整っており、地元自治体や商工会議所の温かいサポートが得られたことが決め手だった。建設工事も順調で、今年10月に試運転開始、22年2月には営業運転を開始する予定だ」

説明してくれたのは、現在は発電所長を務める定森一郎。関西電力からは定森以下、燃料担当、経理担当の3人が現地に常駐。慣れない土地だが、所員のモチベーションは非常に高い。

「1997年のCOP3以降、環境/再エネ業務に携わってきた。再エネの重要性が高まるなか、次世代に貢献できる業務に日々やりがいを感じながら、地元との信頼構築に努めている」

建設工事では、関西電力の火力事業本部と土木建築室が建設管理を請け負っており、既設発電所の建設で培ったノウハウを活用。

「ゼロカーボン化は関西電力グループにとって重要な社会的使命。SDGsのS(Sustainable)を実現するためにも、単発の事業で終わらせてはいけない。苅田を拠点にグループ各社が経験を積み上げ、再エネ事業発展の礎を築きたい」。遠く九州の地で、定森は日に焼けた表情を引き締めた。

木質ペレット

かんだ発電所(完成予想図) 22年の営業運転開始を目指し工事が進む

右 かんだ発電所(完成予想図)
左下 22年の営業運転開始を目指し工事が進む
右下 かんだ発電所長 定森一郎(中)

お客さまにゼロカーボン化を提案

脱炭素ソリューショングループ 小林健一(左)

「デマンドサイドのゼロカーボン化」への取組みも進む。ビジョン発表に先立つ2021年1月末、関西電力は法人のお客さまにゼロカーボン経営のコンサルティングなどを行う「脱炭素ソリューショングループ」を新設した。

新組織は、環境、火力、原子力、燃料、営業、企画などの出身者14人からなり、政策動向などの情報収集、企業のゼロカーボンロードマップの策定、ソリューション提案などが任務だ。02年の入社以来、火力発電所の現場から企画部門まで多様な経験を重ねてきた小林健一もその一員。現在はコンサルティングチームの中心メンバーとして、国内企業へのコンサルティングやソリューション開発を行っている。

「ESGの取組みはグローバルルールのもとで運用、評価されることも多い。例えば日本の法令との違いなど、お客さまの関心やご理解状況に応じてご説明を行い、『よくわかった。ありがとう!』と言っていただけると嬉しい」

そう笑う小林だが、グループ発足前から同様の業務に携わり約5年、ゼロカーボン化のニーズは確実に高まってきたと実感しているという。

「現状で、いくらでも投資するというお客さまは多くないが、電気のデマンドサイドの目線で、数年で100%再エネにしたいとか、自分で電源を持って価格変動リスクを抑えたいというお客さまも。小売業のお客さまがイメージ戦略・差別化戦略として取り組むケースや、サプライチェーン全体でゼロカーボン化を目指すケースも増えてきた」

エネルギー使用量の多い製造業となると、ゼロカーボン化もひと筋縄ではいかない。最終的には電化と水素利用を目指すにしろ、技術的にもコスト面でもまだまだ課題は多い。

「だからこそ我々コンサルの出番。お客さまのニーズを捉え、最適なソリューションでお応えしていくのが、『ゼロカーボンエネルギーのリーディングカンパニー』を目指す関西電力におけるデマンドサイドでの我々の役割だ」。的を射た提案でお客さまから絶大な信頼を得ている(上司談)という小林は、席の温まる暇もなく次のコンサル先に向かった。

カーボンニュートラルの広がり
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