コラム|日本酒、この奥深い世界へ【友田晶子】
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2021.12.27

コラム|日本酒、この奥深い世界へ【友田晶子】

日本酒ならではの魅力は、冷酒、常温、燗酒とさまざまな温度で楽しめること。燗酒にもぬる燗と熱燗があり、それぞれに適した日本酒の種類がある。米の旨味が強い純米酒はぬる燗で、キリッと辛口の本醸造酒は熱燗がおすすめ。一方、華やかでフルーティな吟醸酒は冷酒のほうが香りを楽しみやすい。

秋から冬は「ひやおろし」が美味しい季節。ひやおろしとは、春先に火入れして、涼しい蔵の中でひと夏寝かせた後、2度目の火入れをせず9月頃に「ひや(常温)」のまま「卸す(出荷する)」お酒のこと。「ひや」と付くから冷酒で飲むものと思いがちだが、実はぬる燗のほうが旨味を堪能できる。

ひやおろしは秋に旨味が増すことから、別名「秋あがり」とも呼ばれ、灘五郷が発祥。ミネラル分の多い硬水で造る灘の酒は、骨太のしっかりした味わいだが、春先の新酒は味が硬いため、ひと夏寝かせて熟成させたとか。逆にミネラル分の少ない軟水で造る伏見の酒は優しく甘い味わい。同じ関西でも対照的だ。

日本酒の味を左右するのは水や米だけではない。精米の仕方、麹の割合、酵母の種類、発酵温度、濾過方法…。挙げればキリがないほど、さまざまな要素で味わいが変わる。造り手の工夫で甘くも辛くも、軽くも重くもできる。それこそが日本酒の魅力。

ひとつひとつの酒蔵に歴史があり、造り手の思いが詰まった日本酒──いろいろ試して好みの銘柄を見つけてほしい。そう願いつつ、乾杯。

友田晶子
友田晶子 トータル飲料コンサルタント/ソムリエ
米処酒処の福井県生まれ。日本の酒と食によるおもてなし力を高め、地域の活性化や日本の伝統食文化の継承につなげる「日本のSAKEとWINEを愛する女性の会」代表理事として活躍。著書に『ビジネスエリートが知っている教養としての日本酒』など。
https://omotenashi-sakejo.com/
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