インタビュー|走りながら充電、「走行中給電システム」技術開発の今
ACTIVE KANSAI
2022.2.28

インタビュー|走りながら充電、「走行中給電システム」技術開発の今

EVの電池切れを気にせず走り続けられる近い将来に向け、「走行中給電」の技術開発が進んでいる。開発の現在地について、ダイヘンの鶴田 義範氏に聞いた。

走行中給電とは?

ダイヘン 充電システム事業部 事業部長 鶴田 義範
ダイヘン 充電システム事業部
事業部長 鶴田 義範

文字通り、車の走行中に充電できる技術です。ワイヤレス給電の実用化で、わざわざ車から降りてプラグを差し込まずとも、駐車場に止めておくだけで充電できるようになりました。この技術を発展させ、地面に送電装置を敷き、走りながら充電できるシステムが、走行中給電システムです。実証実験では、走行中給電システムを埋め込んだ道路をバッテリーのないEVが走行し、走行中給電のみでEVを走らせることに成功。また、ある企業での生産工場では既に実用化しています。

実用化するとどう変わる?

将来的には、交差点やドライブスルーなど車が徐行する場所に走行中給電システムを埋め込んだり、高速道路に充電車線を設けることで、充電しながら走行できるといったことが構想されています。

実用化すれば、大容量の蓄電池を積まなくても長距離走行が可能になり、EV普及を後押しできます。また、走行中に給電できれば、充電渋滞を引き起こす長時間の充電から解放されます。

走行中給電インフラが整えば、バッテリーなしでEVが走れるようになる?

全ての道路に敷設されるわけではないので、最低20km程度は走れるぐらいのバッテリーは必要です。ただ、車載バッテリーを小型化でき、車自体が軽くなるので、省エネルギーで走行できます。

東京大学藤本研究室による試算では、信号機手前30m範囲に走行中給電システムを敷設すれば、充電量をほとんど減らさず走り続けられることがわかっています。

実用化の課題は?

道路には既に送配電線やガス管など多くの設備が埋められており、それらの機能を損なわない敷設が必要です。第1ステップとして、空港内で人や荷物を運ぶバスにワイヤレス給電を使うことを検討しています。

車以外の活用法は?

電気推進船向け 大容量ワイヤレス充放電実証実験
電気推進船向け
大容量ワイヤレス充放電実証実験

走行中充電のベースとなっている、ワイヤレス給電システムを電動船の充電に活用することも考えています。電動船は船着き場での大容量充電が必要ですが、波やうねりの揺れでプラグイン作業が難しい、塩害でコネクタの金属部分が錆びる等の課題があります。電動船のワイヤレス給電が実用化すれば、重いケーブルとコネクタを接続する作業が不要となり、作業員の負担を軽減するほか、コネクタの塩害を防ぎ、漏電リスクも低減できます。

2022年1月に大阪市の八軒家浜で実証実験を行い、波などで船体が揺れても、問題なく充電できることが確認できました。

今後の展望は?

走行中給電は、技術開発、道路、エネルギーなどのパートナーと一緒に行う一大プロジェクト。関係者と連携しながらプロジェクトを前進させ、本格的なEVモビリティ大量導入の社会に備えていきたいです。

鶴田 義範
鶴田 義範
ダイヘン 充電システム事業部 事業部長
https://www.daihen.co.jp/
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