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越前若狭探訪

青葉の笛

源義朝の長男、義平が妻子に遺した形見の笛

笛資料館1
笛資料館2
▲笛資料館(大野市朝日)は、源義平と「青葉の笛」に関する資料、全国の珍しい笛などを展示。笛作り教室も開催(要予約)。資料館前には、おみつに「青葉の笛」を渡し、別れを告げる義平の像が建てられています。

青葉の笛」の現在の状態を忠実に複製したレプリカ(下)と、当初の姿を再現した笛(上)
▲朝日家が38代、850年余りにわたって守り継いできた「青葉の笛」の現在の状態を忠実に複製したレプリカ(下)と、当初の姿を再現した笛(上)〔笛資料館に展示〕

庄ヶ原(しょうがはら)の御所ヶ平(ごしょがだいら)
▲源義平がおみつとともに隠れ住んだ館があったとされる庄ヶ原(しょうがはら)の御所ヶ平(ごしょがだいら)

 大野市朝日(旧和泉(いずみ)村)には、平安末期の武将、源義平(みなもとのよしひら)(1141〜60)にまつわる伝承と、義平の「青葉(あおば)の笛」が残されています。義平は、平治(へいじ)の乱(平治元年、1159)で平清盛(たいらのきよもり)と戦って敗れた源義朝(よしとも)の長男で、頼朝(よりとも)や義経(よしつね)の異母兄にあたります。
 義平は10代半ばのころ、父義朝の命で叔父の源義賢(よしかた)を討(う)ち、以後、「悪源太(あくげんた)」と呼ばれました。今と違って、「悪」は強さをたたえる言葉で「勇猛果敢(ゆうもうかかんな)な源氏(げんじ)の長男」という意味です。平治の乱でも、武芸に秀(ひい)でた義平は、獅子奮迅(ししふんじん)の活躍を見せました。
 郷土史家の故中山正治氏は、「美濃(みの)や飛騨(ひだ)、越前は元来(がんらい)、源氏の勢力の強い所で、義平は平治の乱以前からこの地を訪れていたとみられる」といいます。大野市朝日は、古くから美濃と越前を結ぶ重要な道であった「美濃街道」沿いにあり、旧家の朝日家当主は、義平から数えて38代目の子孫といわれています。
 同家に伝わる『家系姓歴代之記』には、「平治の乱の後、義平はこの地の村長(むらおさ)朝日助左衛門の元に身を隠した。山あいの館で、若き源氏の武将の世話をした村長の娘おみつは、義平の子を宿したが、間もなく、父義朝が討たれたとの知らせが入り、義平は父の敵(かたき)清盛を倒すため、討ち死にを覚悟し、京に上ることになった。別れに際して笛や旗、太刀(たち)などをおみつに与え、『生まれてくる子が男なら、成長ののち武運(ぶうん)を開くように。女子ならば、これらを子孫に伝えるように』と言い遺(のこ)した」と記されています。さらに、「生まれた子は男で病弱だった」とも、また「一説に女子で、おみつは尼(あま)となって夫の菩提(ぼだい)を弔(とむら)った」とも書かれています。
 旗や太刀は、戦国時代に盗難に遭(あ)いあましたが、笛だけは、現在まで850年余りにわたって朝日家が守り継いできました。笛箱に使われていた板には、「朝日の先祖 悪源太義平の御笛 末代の子孫において うちの神たるべし」「平治二年正月二十一日より これを代々うちの神と ゆはひたてまつるべし」と墨書(ぼくしょ)されています。その日が、義平とおみつの別れの日だったようです。20歳の若武者が形見(かたみ)を遺し、妻子への思いを断ち切っての出立(しゅったつ)でしたが、武運つたなく京の六条河原で処刑されました。
 朝日家の神としてまつられてきた笛は、古式の横笛の特徴を持つとともに、放射性炭素による年代測定で、約1千年前の竹と確認されています。さらに竹の繊維を電子顕微鏡で調べた結果、「青葉の笛」(現在の鹿児島県霧島市国分(こくぶ)に明治維新まで存在した古刹(こさつ)「台明寺(だいみょうじ)」の青葉の竹林で、平安時代ころから、笛材用に育てられた竹で作られた笛の名器。平敦盛(あつもり)の笛などが有名)とほぼ一致することも明らかになりました。
 この「青葉の笛」は、虫食いなどで傷みが激しく、先端部は欠けています。これを後世に残すため、現在の状態を忠実に複製したレプリカと、当初の姿を再現した笛とが作られ、平成6年、朝日のJR九頭竜湖駅近くに開館した「笛資料館」に展示されています。資料館前の義平とおみつの像とともに、源平(げんぺい)争乱の世(よ)の悲恋を今に伝えています。

地図

  • 【笛資料館】
  • 〒912-0205
  • 大野市朝日24-9
  • 0779-78-2041
  • 開館時間/9〜16時
  • 休館日/月曜(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日、12月〜3月
  • 入館料/大人300円(和泉郷土資料館、穴馬民俗館と共通券)
【取材協力】 大野市博物館、笛資料館、大野市産業経済部観光振興課
【参考文献】 『フォーラム・青葉の笛』(美濃晋平編、和泉村教育委員会・平成4年発行)、『源義平』(柳町庄泉編著、和泉村教育委員会・平成5年発行)
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