プレスリリース

2005年4月26日
関西電力株式会社

400℃に耐える高耐熱絶縁樹脂「ナノテクレジンKA-100」の開発について ~ SiCインバータ大容量化の道を開く ~

 関西電力株式会社と旭電化工業株式会社は共同で、次世代パワー半導体(※1)であるSiC(シリコンカーバイド)半導体素子の被覆保護材に適した、400℃の高温に耐える、柔らかいゴム状の高耐熱絶縁樹脂「ナノテクレジンKA-100」を開発しました。このような高耐熱絶縁樹脂の開発は、半導体用途においては世界で初めてでありますとともに、産業分野全般への広範な活用が期待できます。 

 今回開発した高耐熱絶縁樹脂「ナノテクレジンKA-100」は、広い温度領域において電気の絶縁性に優れているため、この樹脂をSiCインバータ(※2)に活用することにより、5kV以上の高い耐電圧においても、1素子で従来の6倍以上の電流(100A程度)を高速制御することができるようになりました。これにより、これまで実現していた12kVAのSiCインバータの出力を100kVA程度に大容量化する道を開いたものと言えます。

 また将来、この高耐熱絶縁樹脂で被覆したSiC半導体技術が実用化されれば、電力変換装置の電力損失および容積も1/2以下に低減することができるため、発電プラントなどの電力系統設備はもとより、燃料電池などの分散型電源、新幹線、船舶、自動車などの輸送機器など、あらゆる分野での電力効率の向上と省資源・省スペース化を図ることができます。

 今回の成果は、化学品素材メーカーと電力会社との異業種の共同研究によって、ナノテクノロジー(※3)に基づく新化学材料開発技術とSiC半導体素子開発技術が結びついた結果、初めて達成されたものであります。今回開発した高耐熱絶縁樹脂の製造から、それを用いた電子部材の製造まで展開することは、「材料・部材製造の新産業創生」と「電気機器製造産業の世界的優位性」を確立していくことに寄与するものと期待されます。

 両社は今後も、数百kVA級のSiCインバータの実用化に向けて、高耐熱絶縁樹脂の更なる高耐熱化を目指した共同研究を継続してまいります。

 なお、今回開発した技術に関しましては、5月に米国サンタバーバラ市で開催される国際パワー半導体シンポジウム(ISPSD)の席上において発表いたします。

(※1) パワー半導体
・ 電流のオン・オフや電流の方向等を制御する半導体の中でも、耐電圧12V以上で電流容量が0.1A以上のもの。パワーが大きいことから、電力制御機器等に使用されている。
 
(※2) インバータ
・ 電気の交流・直流を変換したり、周波数の変換を行う機器で、エアコンや各種モーターの制御に広く用いられているほか、燃料電池や太陽電池を電力線に連系接続するためにも欠かせない装置。
 
(※3) ナノテクノロジー
・ ナノテクノロジーとは、ナノ(十億分の一)レベルの大きさのものを取り扱う技術の総称であり、原子の集合体や分子の大きさの領域までを対象とした超微細な加工、評価、制御技術を言う。

 

以 上

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