原子力発電について
美浜発電所3号機事故について

2013年5月31日


第4回 原子力安全検証委員会

 当社は、美浜発電所3号機事故を踏まえた再発防止策について、社外の有識者を主体とした独立的な立場からその有効性を検証し、継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすることを目的として、平成17年4月に「原子力保全改革検証委員会」を設置しました。
 さらに平成24年4月に社長が決意表明した「原子力発電の自主的・継続的な安全への取り組み」についても、同委員会として、確認・助言していくことから、同年7月に「原子力保全改革検証委員会」から「原子力安全検証委員会」へ名称変更いたしました。
 前回の第3回原子力安全検証委員会では、原子力発電の自主的・継続的な安全への取組み状況について審議して頂き、「大飯3,4号機における更なる安全性・信頼性向上のための対策については、検証委員が大飯発電所3,4号機を視察するなどし、着実に取り組まれてきている様を確認した。」、「福島第一原子力発電所事故の各種調査報告書から安全性向上対策のチェック・レビューはもとより、意識、企業風土などの安全文化にかかる指摘事項を抽出・議論し、安全文化評価の枠組みへの反映を進めていた。」旨の評価を頂きました。
 第4回検証委員会では、「美浜発電所3号機事故の再発防止策の実施状況」、「原子力発電の自主的・継続的な安全への取組み状況」、「安全文化醸成活動の実施状況」について審議が行われ、その結果をお知らせいたします。


1.日 時 平成25年4月26日(金) 13時15分~16時15分
2.場 所 関西電力株式会社 本店
3.出席者(敬称略)
委員長  【社 外】 佐藤 信昭 (弁護士)
副委員長  【社 外】 邦夫 (京都大学名誉教授)
委員  【社 外】 加賀 有津子 (大阪大学教授)
   【社 外】 小松原 明哲 (早稲田大学教授)
   【社 外】  田中 健次 (電気通信大学教授)
   【社 外】 増田 仁視 (公認会計士)
   取締役副社長  井狩 雅文  
   取締役副社長 生駒 昌夫  
 

4.冒頭挨拶等
    佐藤委員長挨拶骨子
     
新しい「原子力発電の自主的・継続的な安全への取組み」を委員会の目的に加え、原子力安全検証委員会に名称変更して再スタートを切って、まもなく1年となる。
平成24年度は、特に四半期毎に委員会を開催し、委員の皆様方には精力的に検証をいただいた。
本年には、原子力発電所にかかる国の規制基準の抜本的見直しがあり、これまで着実に進めてきている安全対策をベースに、しっかりと対応いただきたい。
もとより、福島第一原子力発電所事故を踏まえた個別の安全性向上対策の技術的妥当性の評価については、この委員会のミッションではないが、美浜発電所3号機事故再発防止対策や、これを元に作り込まれた安全文化醸成活動の評価の仕組みが、どのように新しい取組みを捉えていくのかについても、関心を持って、自主的・継続的な安全性向上のための施策の取組み状況、関西電力の取組み姿勢等について見てきた。
しかしながら、関西電力の原子力発電所がその安全性について社会から受容され、社会的に必要不可欠な存在であるというように広く認知されるにいたるまで、まだまだやらねばならないことも多いと思う。
本日は、年度の締めの委員会であるので、美浜発電所3号機事故再発防止対策、安全文化醸成活動、原子力発電の自主的・継続的な安全への取組みの3つについて報告を受け、審議したい。各委員からは、専門的あるいは総合的な観点から忌憚のないご意見を頂き、活発な議論をしたい。
     
5.議事概要
    5-1.第3回検証委員会で頂いた意見に対する対応状況について
   第3回検証委員会で委員の方から頂いた意見に対する対応状況について、原子力安全推進委員会事務局から報告し、審議・了承。
<報告内容等>
   
5-2. 美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況および監査結果について
        美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況および監査結果について、原子力安全推進委員会事務局、経営監査室から報告し、審議。
<報告内容等>
 
<審議結果>
美浜発電所3号機事故再発防止対策については、各対策項目毎に達成目標が定められ、社内標準等に基づき日常業務として継続的に改善され、取組み姿勢に風化の兆しはみられなかった。
美浜発電所3号機事故後に入社した社員が増えつつある中で、第一線の社員は、再発防止対策の目的や経緯を理解し、取組みを進めていた。
再発防止対策の取組みが風化せず、継続して実施されているか、本委員会は引き続き確認していく。
<意見等>
(プラントウォークダウン)
プラントウォークダウン(現場の巡視、点検)からの気付き事項を更に生かす(水平展開する)ためには、その中で重要なものはどれか、繰り返し起こりそうなものはどれか、というような視点で解析・評価を進めてほしい。(田中委員)
プラントウォークダウン(現場の巡視、点検)による気付き事項を分析評価した結果については、データベースで共有するだけでなく、ミーティング等の情報共有の機会をもつと一層効果的である。(加賀委員)
関西電力の管理者が現場を確認することは、現場の状況把握・指導力など現場管理能力の向上にも資すると考えられる。プラントウォークダウン(現場の巡視、点検)においても実際に行った人の感想や気付き等を関係者で報告・共有しあうことが望ましく、それにより現場での問題点等に対する感受性や、それらを自ら改善する意欲などの管理者の資質の向上につながると思う。(小松原委員)
(再発防止対策の理解、風化防止)
再発防止対策の理解の確認は、今後さらに重要になってくると思う。このようなチェックは見落としがちなところであり、監査の中で実務者クラスにヒアリングして確認しているのは、非常に良い取組みである。一人一人が再発防止対策について身を持って捉えているかが課題である。今後は、協力会社も含め裾野を広げて確認していくことが必要だと思うので、サンプリングでもよいと思うが、確認のための良い方法を社内で検討いただきたい。(田中委員)
事故を知らない人が増えてくる中で風化防止のツールを作成されていると思うが、臨場感をいかに伝えるかが非常に重要であり、また、若い者が理解しやすいように写真や動画等も取り入れることを考えるとよい。また、どのように活用してもらえるのか検討しておくことも必要である。(田中委員)
   
5-3. 原子力発電の自主的・継続的な安全への取組み状況および監査結果について
       原子力発電所における自主的・継続的な安全への取組みについて、原子力事業本部から、また、同監査結果について経営監査室から報告し、審議。
<報告内容等>
     
<審議結果>
「安全性・信頼性向上のための対策」は、大飯発電所を始め、美浜、高浜発電所においても、計画通り実施されていた。また、設置された設備・資機材の点検、メンテナンスを適切に行うとともに、過酷な条件を想定した教育・訓練等により評価・改善するなど安全対策の実効性を高める活動が継続的に実施されていた。
最新知見を反映する仕組みを構築し、独自に海外調査を行うとともに、原子力安全推進協会(JANSI)やWANO(世界原子力発電事業者協会)からの提言について、検討の上、取り入れていくこととしている。
規制の枠組みにとどまらない原子力発電の安全への取組みが、自主的・継続的に実施されているか、特にシビアアクシデント対策についても、本委員会は引き続き確認していく。
<意見等>
(レジリアンス力の強化)
ヒューマンファクターの分野では、「緊急事態では適切な臨機応変により行動することが大切で、訓練を通じ、上手く立ち回る能力、いわゆるレジリアンス力の強化が必要」ということが言われている。関西電力では、訓練を強化しているので非常に心強く思うが、ヒューマンファクター面による深層防護についても関心を持ってほしい。(小松原委員)
(安全対策の多種多様な訓練)
安全対策の実効性を高めるためには、過酷な条件を色々と想定した多種多様な訓練が重要である。関西電力は過酷な条件を設定して訓練を行っているが、これまで対象にしていなかった外的事象にも対応していくためには、今後は、過酷な条件が次々に重なったときでも、現状の安全対策はうまく機能するのか、どういう設備がどう使えるのか、また、全体を統括する指揮者の下で一人一人が自発的に行動できるのかといった訓練が、次のステップとして大事である。(田中委員)
    5-4.安全文化醸成活動の実施状況および監査結果について
       安全文化評価結果および重点施策の実施結果について、原子力事業本部から、また、同監査結果について経営監査室から報告し、審議。
<報告内容等>
     
<審議結果>
平成24年度安全文化評価については、各所において福島第一原子力発電所事故の教訓を反映して、進められていた。特にプラント長期停止や原子力を取り巻く環境の変化を受け、懸念される技術力やモチベーションの維持・向上に関する取組みも導き出されていた。
各重点施策は、年度計画どおり進められていた。また、事故の教訓から、大災害時に的確な統率能力を発揮できる人材の育成などが必要であるという認識のもと、新たな取組みがなされていくことが確認された。
関西電力の安全文化醸成活動は、原子力を取り巻く厳しい環境を踏まえた取組みが継続的に実施されている。このような環境変化の中でこれらの活動がどのように進められていくか、今後とも、その状況を本委員会は確認していく。
<意見等>
(安全文化評価の指標見直し)
社会の信頼の評価は、コンプライアンス違反件数を指標として用いているが、法の遵守だけでは社会の信頼は得られない。法の遵守は勿論のこと、規制の枠組みにとどまらない安全への取組みを自主的・継続的に取組んでいくことが、社会の信頼につながると思うので、社会の信頼を評価する指標について改めて検討していただきたい。(東副委員長)
美浜3号機事故の再発防止対策を踏まえた現状の安全文化評価の仕組みは、劣化の兆候を検知する指標が多いが、シビアアクシデント(過酷事故)が起こった後の対応も対象にすると、劣化防止ではなくて、より一層強固な安全文化を構築していくという視点で考えなければいけないと思う。これを踏まえて、安全文化評価の仕組みが、今のままで良いかどうかを議論することが必要だと思う。(小松原委員)
「安全文化評価の視点、あるべき姿」を作成した当初は、今の状態(プラント長期停止や新規制等)を想定していなかったことから、視点やあるべき姿などで拾えていないものがないかや発電所毎に違った評価をするものはないかなど、見直しの必要性の有無も含めて考えていってほしい。(小松原委員)
根本にある安全文化がしっかりしておれば、対処すべき事態が変わってもきっちりと対応できるはずなので、その観点から安全文化の定着状況で見ていくことが重要である。今の仕組みを「変える必要があるのか」、「従来のままでよいのか」については、安全文化が適切なものか否かを判断する大事なチェックポイントである。(田中委員)
(安全文化醸成活動の自主性)
関西電力の安全文化の活動は、自主性をうまく引き出している。各発電所を同じようにするのではなく、発電所自らに考えさせて、お互いの情報を横目に見ながら活動しているところは、強みと思う。(田中委員)
(停止中プラントの研修への活用)
今は、動いているプラントに人を派遣して研修しているが、逆に止まっているプラントだからこそ、普段見たり、触れたりできないところを見たり、触れたりできるところもあるので、研修の場として利用する方法もあるのではないか。(田中委員)
(監査結果の報告)
安全文化醸成活動を対象とした監査結果に指摘事項や改善要望事項が一つもないが、監査のやり方に劣化や風化がないか、よく考えてほしい。(東副委員長)
実施側の報告と監査側の報告が重複している印象を受ける場合がある。監査については、現場活動がPDCAとしてまわっていることや、活動目標の達成状態、また活動それ自体に対する課題や実施側の悩みなど、活動体制・活動状況について、社内の第三者の視点から評価することが必要だと思う。今後、監査のあり方について検討してほしい。(小松原委員)
監査結果については、不十分な事項や良くできていた事項など、重要なことに絞って報告してもらえればよいと思う。(増田委員)
    5-5.次回検証委員会の検証テーマおよび今後の進め方について
      5-1次回検証委員会の検証テーマおよび視点について経営監査室から提案し、審議。
     
<審議結果>
次回(第5回)検証委員会の検証テーマと検証の視点については、以下のとおりとすることで了承。
検証テーマ 検証の視点
自主的・継続的な安全への取組み状況
規制の枠組みにとどまらず、更なる安全への取組みが、自主的かつ継続的に進められているか。
安全文化醸成活動の実施状況
中間状況確認が、適切に実施されているか。
5-2 今後の進め方
 今後の進め方について、以下の意見等を委員からいただいた。
<意見等>
(規制当局とのコミュニケーション)
リスクの許容度が非常に小さい時代になってきているので、独立した立場の規制当局にご理解いただけるように、事業者側が真摯に進めている安全対策について、コミュニケーションをとるよう努めていただきたい。(佐藤委員長)
(原子力の安全文化)
美浜3号機事故再発防止対策を踏まえた安全文化醸成活動は、劣化の兆候を検知するという、いわゆる平常時の安全文化醸成活動を厚くするという視点であったが、福島第一原子力発電所の事故以降、かなり安全の活動が幅広くなってきていると思う。一方、ヒューマンファクターを含めた安全文化の研究動向もかなり変わってきており、特に脅威に対して粘り強い組織作りというレジリアンスの考え方等も浸透してきている。これらのことを踏まえながら、関西電力が一つのモデルになるよう、原子力安全に関する新しい取組みを自信を持って進めていってほしい。(小松原委員)
関西電力の安全文化評価において、定量的な評価はすごくできているが、今後は、もう一段階進めて、質の解析、定性的な解析をして頂きたい。トラブルの件数も一桁になると、数値の問題ではなくて、一つ一つの質の問題になる。例えば、現場の重要なコメントを引用してきているが、もっと引っ張り出して、その背景を調べて対応していくなど、定性的な解析をすることにより、ごく小さく見えた問題が、大きな問題を未然防止するきっかけになる可能性がある。(田中委員)
シビアアクシデントといった新たな観点をみていくための安全文化評価の指標、フレームワークをじっくりと考えていってほしい。(加賀委員)
どこまでやれば安全と言えるか、ということについては、社会の人たちの感じる安心との関連で決まってくると思う。安全と安心にどういう関連性があるかは、まだ、研究しないといけない分野なのだが、おそらく目指す最終ゴールは安心だと思う。関西電力がこの新しい分野のリーディングカンパニーとして、自分達の安全の考え方を打ち出し、それを実現し続けることを期待している。(田中委員)
(JANSIの取組み)
公認会計士の業界では国の規制だけに頼らないで自主規制のレベルを高め、自ら相互牽制することで社会的な役割を果たそうと努力してきた歴史がある。我々の取組みとは異なるが、原子力においても、今回、原子力安全推進協会(JANSI)という組織がスタートを切ったことはすばらしい。これから色々な課題があると思うが、関係者間で情報交換しながら、この取組みを進めていってほしい。(増田委員)
(検証委員会の運営等)
今後も、検証委員会自体が形骸化・風化しないように留意し、関西電力の安全のレベルが更に高まるような実のある形でこの委員会を進めていただきたい。(小松原委員)
普通の感覚では停止すれば事故は収束するが、原子力発電所の場合はシステム全体が停止したら大事故になるので、かなりレベルの高い安全対策が必要だと思う。今後とも、安全対策等を強化していくとともに、その取組み状況については本検証委員会でも確認していってほしい。(増田委員)
(安全な原子力発電の重要性)
福井県には、たくさんの原子力発電所があり、日本の原子力発電を支えている。エネルギーミックスといった視点等から、安全な原子力発電の継続は絶対必要であり、今後も福井県と共に重要な原子力を支えてほしい。(増田委員)
原子力安全検証委員会の様子 佐藤委員長(左)と東副委員長
原子力安全検証委員会の様子
佐藤委員長(左)と東副委員長
<参考資料>

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用語解説

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