Insight時代を解くキーワード Presented by 関西電力
| HOME | このサイトについて | メルマガサンプル | 談話室 | 配信申込・解除 | お問い合わせ・ご意見 |
関西電力HPへ
Main Column Break Close up エナジー News Clip 関西電力 講堂(イベント/セミナー)
 

Main Column
 

斎藤 顕一・フォアサイト・アンド・カンパニー代表取締役

2008.01.15
「成長エンジン搭載へ――変革を担う人材とは」

斎藤 顕一・フォアサイト・アンド・カンパニー代表取締役

斎藤 顕一  さいとう けんいち
フォアサイト・アンド・カンパニー代表取締役
1949年大阪府生まれ。国際基督教大学教養学部卒。マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。同パートナー、大阪支社副支社長を経て、96年フォアサイト・アンド・カンパニー設立。コンサルティングにおいては、単に業績向上に不可欠と思われる施策を立案するだけでなく、クライアント企業がそれら施策を実現できるよう、仕組みや仕掛け作りや、問題解決のできる「変革の担い手」を育成。また、全活動時間の30%程度を限度に、大手企業の選抜メンバーが問題解決思考を身につけ、「企業業績向上に取り組む変革の騎士」となれるよう研修を実施。大前研一氏が創立したインターネットによる経営大学院(ビジネスブレークスルー大学院大学)の教授でもあり、大学院生のみならず問題解決思考を学びたい社会人5000名に考え方を伝え続け、人の意識の部分にまで発展したコンサルティングを実践。著書「問題解決の実学」「営業の問題解決スキル」、共著「実戦! 問題解決法」など。


http://forsaito.co.jp/

企業変革を担う人材を育てる。
少子化が進むなか、産業構造が今のままであれば、日本経済は2015年あたりからマイナス成長に突入するのは避けられない。国内マーケットだけで戦っている企業にとって、売上を増大させ続けることはかなり困難になる。少々シェアを伸ばしても、市場全体が縮小すれば売上は増えない。業績を伸ばすには、これまでどおりの運営体制ではだめで、やり方を変える──企業変革が求められる。そのためには、変革を担う人材の育成が急務になる。

私は本業である経営コンサルティングと並行して、企業変革を担う人材の育成にも携わっている。経営コンサルティングの仕事は会社の業績をあげることであり、人を変えない限り成果はあがらないからだ。変革を担う人の育成には、自分自身を成長させようという意思を持ち、業績を上げるために戦う姿勢を取っている人を選んで育てることが肝要だ。全体的な底上げも重要だが、核となる精鋭を育て、その人たちが牽引力となって企業を変えていくほうが、変革のスピードは速い。

変革を担う人材に必要な能力・資質は大きく3つ。まず第1に、「問題解決のスキル」。第2に、周囲から「信頼」される人間かどうか。第3に、会社や社会を良くしようという「情熱」があるか。

第1の「問題解決スキル」とは、顧客の言葉に耳をかたむけ、収集した情報や事実を客観的に理解することで問題の本質を見抜き、インパクトのある解決策を考え、仲間を説得して、みんなで取り組み成果を出す、という一連の取り組みができる力を指す。多くの企業では、「会社を変えよう」と言いながら、具体策も出ず、なかなか変革が進まないが、それは問題解決スキルが組織に欠けているためだ。最も端的に現れたのが、バブル崩壊の時。過去の成功体験に基づくやり方が通用しなくなったとき、ほかにどうすればいいか、その方法を見出せず、多くの企業が沈んでいった。そして、いまだ上場企業の40%近くがここ5年間の年率成長率がマイナスで、リストラによって収益性を改善したものの、新たな成長がないためジリ貧にならざるを得ない状況になっている。

自社の事業領域を自ら限定し、既存の枠内でしかものを考えられない企業は、変われない。例えば、即席麺メーカーが市場データを徹底的に集めて、よりおいしい中華麺をつくろうと改良する。それはもちろん大事なことではあるが、お客さまが“ある生活場面で”お腹がすいた時に食べたいのは日本そばやスパゲティかもしれないし、おにぎりやパンかもしれない。顧客のニーズは多様なのに、中華麺だけの市場調査をしても、新しい戦い方はできない。かといって“こんなもんはどうだろう”と奇をてらうのは単なる当てもので、続かない。そうではなく、思い込みを捨て、事実ベースでターゲットとする顧客に何が起きているかを客観的に観察し、競合相手の取り組みや自分たちの強み弱みから、解決策を論理的に導き出す。

こうした問題解決スキル獲得には、論理的な考え方が不可欠となるが、日常のさまざまな場面で、繰り返し使い、慣れることで身につく。例えば誰かがスピーチしているとき、「この人の言いたいことを3つにまとめよう」という姿勢で聞くと、聞きながら頭の中で大きく整理してみようという力が働く。これを帰納的考え方という。漫然と聞いて、「なんか良かったけど、何を言ってたんだっけ」となるのとは大きな違いだ。ほかにも、「細かいことの羅列ではなく必ず結論から話そう」「事実だけに注目しよう」「なぜ、という問いかけを大事にしよう」といった方法を、自分で意識的に使うことで身についていく。

ただ、問題解決スキルさえ磨けばいいかと言うと、そうではない。いくら論理的に考え抜かれた施策も、実行されなければ絵に描いた餅。実行するには、周囲の人間を説得し、巻き込まなければならない。そこで必要になるのが、2つ目の「信頼」だ。その人が信頼されていれば、「あいつの言うことならしゃあない、やろか」となる。自分のことしか考えない人はまず信頼されない。逆に自分が忙しくても他人の面倒を見る。好かれようとか甘やかすのではなく、他人を大事にし人の成長を助けることで、業績向上をみんなで目指そうと考える人は信頼される。そうした人間力が必要だ。

そして最後に必要なのが、自分の会社、ひいては自分の属する社会をより良くしたいという「情熱」だ。基本的に大部分の人は変わることに抵抗があり、変革を求められるのはつらいと感じる。表立って反対しなくても、協力しない人々は大きな抵抗勢力になる。変革を推進するには、「会社を変えることで業績があがり、その結果個人の収入が増え、皆が幸せになる」という強い信念が必要だ。

方法論だけ学んでもダメ。問題解決スキルは繰り返し使うことで身につくとはいえ、会社の中でうまく流れに乗ることだけを考え、自分自身を成長させようという気のない人や、「所詮ムリ」「やっても仕方ない」と思っている人は、いくら教えても身につかない。肩書きに関わらず、自分がおかれたポジションからだけ考えるのではなく、全社の立場に立ってこの会社でこういうことをやりたい、こういう貢献をしたいと考える人は、少しのきっかけで、格段に成長する。良い教育とはこの“きっかけ”を作ってあげることなのだ。自分を徹底的に磨くことに妥協しない人間は、その“きっかけ”に大きな可能性を見出し、自分の考え方や行動の仕方を変え、結果的に大きく成長するのだ。

だからまず「自分はなぜこの会社で働くのか」「お客さまにとって大事なことは何か」を、とことん考える。単に「生活のために働く」というのでは、上司に“ごま”をすったり、無駄に残業をして残業代を稼いだりと、おかしな方向へ行ってしまう。そうではなく、会社の理念や経営者の夢に共感し、自分もその夢の実現に加わりたいとなれば、自分が成長しないと会社に貢献なんてできない。そう思えれば、自分自身を鍛えることが自然にできる。そしてお客さまに対しては「顧客の利益を自社の利益より優先する」のが基本。顧客を大事にする、人を大事にすることこそ、信頼の原点であり、この軸足を誤ると、企業の成長も人の成長もない。「徳」ということが忘れられて久しいが、それが企業変革の根底にないと間違った方向に行ってしまう。

会社が成長するということは、個人が成長するということだ。成長し続けることを選ぶ人が多いほど、会社は成長を続ける。客観的にクールに問題解決をしていくスキルと、信頼感と情熱。3つを併せ持つ人はほんの一握りしかいないとしても、彼らがコアとなって意欲の高い人を巻き込み、変革推進の仲間をつくり、次の担い手を増やしていけば、会社を変える大きなエンジンになっていくことは、間違いない。 ■


関連資料

「企業と人材」の周辺

関連図書

「人材と企業変革」を読み解く13冊



Columnカテゴリ検索
政治・外交
経済・経営
社会・生活
文化・文明
科学・技術
電力・エネルギー
関西
サイト内全文検索
最近のMain Column


Insight時代を解くキーワード
Copyright (C) 2002-2008 KEPCO THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.