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加藤 晃規・関西学院大学総合政策学部教授

2007.12.15
「新陳代謝する都市へ――再生するニュータウンの未来」

加藤 晃規・関西学院大学総合政策学部教授

加藤 晃規  かとう あきのり
関西学院大学総合政策学部教授・学部長
1946年生まれ。京都大学工学部建築学科卒、同大学院博士課程中退。工学博士。フィレンツェ大学、ミラノG・デカルロ事務所、黒川紀章建築都市設計事務所を経て、大阪大学環境工学科助手、講師、助教授。1999年より現職。建築・都市デザインを専門とし、「新西宮ヨットハーバー地区アーバンデザイン」「宝塚創遊都市構想」「新淀川ウォーターフロント構想案」「中之島リ ・インカーネーション案」などに携わる。建築家としての作品に「御堂筋ギャラリー・ポケットパーク」など。北梅田開発フォーラムアドバイザー、千里ニュータウン情報化未来都市研究会委員長、千里ニュータウン再生のあり方検討委員会委員長も務める。主な著書「南欧の広場」「日本的広場のある街―ミドリ ・ミズ・ツチ」、共著「都心居住 都市再生への魅力づくり」「都市・集まって住む形」、訳書「ボローニャの試み―新しい都市の文化」など。


ニュータウンはいつまでニュータウンたり得るか──まちびらきから45年を経た「千里ニュータウン」が、いま再生に向けて動き出している。

千里ニュータウンは、高度経済成長真っ只中の1962年、日本初の本格的ニュータウンとして誕生した。人口15万人規模をめざして短期間に開発が進み、大阪万博が開催された70年には、早くも10万人を突破。しかしその後は75年の12万人をピークに減少を続け、万博から20年後の90年には再び10万人台となり、現在では9万人を切るまでに落ち込んだ。また住民の高齢化も深刻で、高齢化率は2005年には26%を超え、全国平均や大阪府平均と比べ、はるかに高いペースで上昇している。

千里ニュータウン衰退の要因は、まず人口構成のいびつさにある。同じような世代の住民ばかりだから、高齢化はまち全体で一気に進み、まちは活力を失う。さらにもうひとつの理由に、ニュータウン周縁部の発展がある。千里ニュータウンの誕生によって、鉄道、道路、公園、大学、病院といった都市インフラが整備されたことで、豊中、吹田、箕面、茨木などのニュータウン周縁部──いわば「郊外の郊外」が自然発生的に発展し、北大阪一帯が「グレーター千里」と呼ばれる一大商圏となった。しかしその結果、大規模商業施設やマンションも「郊外の郊外」に次々と立地されるようになり、ニュータウン中心部は相対的に競争力を落としていった。

もちろん千里ニュータウンの中にも商業施設はある。千里中央を「中央センター」、3カ所の主要駅を「地区センター」とし、さらに13の住区ごとに「近隣センター」を設け、3層のヒエラルキー構造で地区ごとに商業の核をつくった。本来はそれぞれが自立した生活圏となるはずが、千里の場合、同時に大阪都心に直結させるインフラも整備したことによって、結果的に各住区の自立性は弱まり、特に近隣センターの衰退を招いた。

この点、同じニュータウンでも、イギリスで多く見られる田園都市はかなり性格が異なる。イギリスのニュータウンは「職住セット」が基本で、ニュータウンの外縁部に工場や農場、商業施設も整備し、ニュータウン内で仕事も生活も完結できる。またイギリスでは環境政策上、ニュータウンの人口規模も概ね3万人という制限が設けられ、それ以上の拡張はしない。

イギリス型田園都市と異なり、千里ニュータウンはあくまで大阪都心に依存した住宅地、ベッドタウンに過ぎなかったため、次第に活力を失ってしまった。とはいえ日本のニュータウンの先駆けとして一定の役割を果たし、周辺地域の発展にも大きく寄与してきたことは間違いない。そしてそこには、都心へのアクセスのよさ、緑の多い環境など多くの資産が残されている。これまでの歩みをファーストステージとすれば、今後のセカンドステージでは、今までに形づくってきたものをいかにマネジメントしていくかが問われている。

マネジメントし維持していくには、「価値創造」が必要だ。例えばニュータウンと同じ頃に誕生した新幹線は、40年以上経た今も、常に先進技術を採り入れ、その時代のニーズに応えて進化し続けている。だから新幹線は今でも「新」幹線と呼ぶにふさわしい。同様にニュータウンも「ニュー」タウンであり続けるためには、先進性を生み出していかなければいけない。

都市が持続していくために重要なのは、その中に多様な価値観、幅広い層の人々を内包し、かつ、常に少しずつその中身が入れ替わっていることだ。そのためには、ハード面よりソフト面での先進性が重要になる。

いびつな人口構成を是正し、幅広い層に住んでもらうためには、子育て支援も、高齢者福祉も地域で担っていける仕組みが必要だ。千里ニュータウンは複数の行政区にまたがっているが、資産を将来に受け継いでいくためには、その垣根を越えたエリアマネジメントが求められる。社会サービスも、商業資本に任せて一律に提供するのではなく、居住者の自発的な取り組みから生まれるソーシャルキャピタルを活力とし、資金はコミュニティファンドで調達することなども考えたい。住民が主役となって街の元気を取り戻す「リバイタリゼーション」こそが、ニュータウン再生のカギになる。

もちろんハード面の「リニューアル」も欠かせない。例えば衰退した近隣センターの商業施設を、社会サービスの先端施設──シニアハウスなり、子育て支援の場として位置づければ、最も身近にある拠点として上手く機能するのではないか。加えて大事なのは、文化施設。書店やライブハウス、ギャラリーなど、文化に触れられる施設がもっと必要だ。団塊世代の大量退職が始まり、これまでは都心に働きに出ていた人たちが居住区に戻ってくる。このように「会社人間」から「居住地人間」となった人たちが、豊かな時間を過ごせること。それも今後のニュータウンに求められる要素だ。

老朽化した住宅に関しては、すでにリニューアルが進められている。もともと千里ニュータウンの公的住宅のほとんどが、容積率200%の土地に100%以下で建てられており、かなりの余裕がある。その余裕分を民間に分譲し、得た資金で公的住宅の建て替えを行う事業モデルも実施されている。住宅の容積率が増えると環境が劣化すると懸念する声もあるが、千里ニュータウンの公共用地比率は、公園緑地が25%、道路が22%。つまり公園と道路で約50%が確保されており、建て替えが活発化しても、この比率には影響ない。むしろこれだけの緑が確保された住環境は、貴重な地域資源と考えるべき。住みたいと憧れる人もたくさんいるのだから、可能な範囲で住宅を供給し、たくさんの新住民を迎え入れた方がよい。

さらにニュータウン再生にあたっては、情報技術の利用も必要だ。高度医療の拠点が集積している千里ニュータウンの場合、特に医療分野での情報技術活用が期待できる。公的住宅を建て替える際の規制緩和で、建物内にパソコンルーム、メディアセンターのような施設を置くことも認められるようになった。これらの要素を組み合わせれば、自宅で健康チェックや予防医療を受けるなど、新しい地域医療サービスが生まれる可能性もある。

都市にとって重要なのは、商業、文化など多様な機能が備わり、自立できていること。さらに、その内部でゆっくりと少しずつ、人の入れ替わりが起きていることが大切だ。その新陳代謝が、都市の活力の源泉になる。魅力的な立地、充実した都市インフラと緑の多い環境など、千里ニュータウンのもつ資産は大きい。それを生かし、幅広い世代や多様なライフスタイルをもつ人々が、豊かに暮らせる場所を提供すること。それによって、自然な新陳代謝の起きる、ゆるやかに持続発展するニュータウンへと生まれ変わることが可能だと考えている。 ■


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