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徳永 勝人・高槻社会保険健康管理センター センター長

2007.10.01
「メタボ・リスクを超えて――健康な身体と心を取り戻そう」

徳永 勝人・高槻社会保険健康管理センター センター長

徳永 勝人  とくなが かつと
高槻社会保険健康管理センター センター長;医師
1949年広島県生まれ。大阪大学医学部卒。医学博士。大阪大学第2内科、南カリファルニア大学研究員、大阪大学第2内科講師、市立伊丹病院内科部長(大阪大学医学部臨床助教授、兵庫医科大学実習教授併任)を経て、2005年より現職。内臓脂肪型肥満(メタボリックシンドローム)の発見者の1人。「標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22」の考案者としても知られる。日本肥満学会肥満症診断基準検討委員会委員、肥満症治療ガイドライン作成委員会委員、日本糖尿病学会評議員、日本動脈硬化学会評議員。NHK「きょうの健康」講師も務める。著書「肥満Q&A」など。


http://www.geocities.jp/himanmetabo/index.html
http://www10.ocn.ne.jp/~ts-kkc/index.html

世界で肥満が増えている――。
1900年代までは栄養不良や痩せが問題だったが、2000年以降は太りすぎが大きな問題となっている。肥満の人は今、世界中で約10億人。インドや中国など、途上国も含めて世界的に増えており、年齢層も低下し子供の肥満も増えている。

原因は、過食と運動不足だ。肥満に伴う病気も増加しており、世界的に見て、死因の1位は心筋梗塞や脳卒中などの心血管障害。これは癌の2倍以上になる。

心筋梗塞や糖尿病などの生活習慣病と深く関わっているのが「メタボリックシンドローム」だ。これは過栄養と運動不足によって、お腹の中に内臓脂肪がたまり、さらに糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病が重なった状態のこと。具体的な基準は、ウエストが女性90cm・男性85cm以上で、高脂血症、高血圧、糖尿病のうち2つ以上にあてはまる人を指す。また、この中の1つに該当する人は予備軍だ。日本では今、40歳〜74歳の男性の2人に1人、女性で5人に1人が、メタボリックシンドロームとその予備軍と言われている。

メタボリックシンドロームはなぜこわいのか。ポイントは、「内臓脂肪」にある。内臓脂肪とは、胃や腸のまわりにつく脂肪のこと。以前は脂肪と言えば「皮下脂肪」だったが、肥満の研究をしていた私は、このようなお腹の内部につく脂肪を確認し、1980年に「内臓脂肪」と名づけた。

脂肪の量を計測するのは難しい。当時私は肥満と病気の関係を研究するなかで、体内の脂肪を計量する方法をいろいろと試していた。たまたまある肥満の患者さんの腹部CT写真を見ると、皮下脂肪がきれいに写っているのに加え、お腹の内部の脂肪もはっきり見えた。また別の女性で、体重は80kgもあるのに皮下脂肪がほとんどなく、不思議に思いCTを撮ると、お腹の中に脂肪がたまっていることがわかった。これらのことから、「皮下脂肪」とはまったく別の「内臓脂肪」の存在を確認。肥満を「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」に大別し、「内臓脂肪型肥満」の危険性に注目してきた。メタボリックシンドロームで問題になるのも、このタイプの肥満だ。

下半身に脂肪がつき、洋ナシ型の体型が特徴の「皮下脂肪型肥満」は女性に多い。一方「内臓脂肪型肥満」はお腹がぽっこりとしたリンゴ型の体型で、男性に多い。内臓脂肪は、皮下脂肪とはつく場所も性質も異なる。主に腸と肝臓の間にある腸間膜につき、血液は全部肝臓へと入る。そのため内臓脂肪が分解されるときに生じる遊離脂肪酸が直接肝臓へ流れ込んで高脂血症の原因になる。また、内臓脂肪が増えると、動脈硬化や糖尿病を防ぐ作用のある善玉アディポサイトカイン(生理活性物質)のアディポネクチンが減り、悪玉アディポサイトカインが過剰に分泌され健康に害を及ぼす。内臓脂肪型肥満の人には、糖尿病や高脂血症が多く、内臓脂肪面積が100cm2を超えるとさまざまな合併症も起きやすい。

内臓脂肪は男性の方がつきやすく、加齢とともに増加する傾向にある。男女を問わず内臓脂肪がたまりやすい人の生活習慣上の特徴としては、食事を満足するまで食べ、夜食や間食が多いことや、緑黄色野菜が嫌い、車をよく利用するなどの点が挙げられる。ストレスもよくない。軽いストレスは食欲を増すし、ストレスを感じると脳下垂体から副腎皮質ホルモンが出て内臓脂肪を増やす。

国もメタボリックシンドロームの予防に力を入れており、2008年からは40歳〜74歳の人を対象に特定検診・保健指導が始まる。その背景には、年々かさむ医療費の問題もある。糖尿病や脳血管障害など、メタボリックシンドローム関連の医療費は7.8兆円で、癌の3倍。糖尿病などここ30年で30倍に増えており、透析にかかる費用は莫大だ。メタボリック関連の疾患は、すぐには死亡に至らなくても、寝たきりになるなど治療を要する年数が長く、死亡率に対して医療費が増える要因となっている。

では、メタボリックシンドロームを防ぎ、健康な身体を取り戻すにはどうすればいいか。実は内臓脂肪は、つきやすいが減りやすい。食事や運動による効果が期待でき、体重を2〜3kg減らせば内臓脂肪はかなり減る。ただ、基本となる食事と運動は、簡単そうに見えて実行が難しいのも事実。とくにお酒の付き合いの多い人や、夜遅くまで働いている人は不規則な生活になりがちで、基本的な生活習慣の見直しもなかなか難しい。

まず、楽しんで取り組むことが大切だ。何事も、苦行になっては続かない。リラックスしてゆっくりと、おいしいものを少なく食べる。散歩をしたり、休日に自然のなかへ出かけたりして、楽しみながら運動量を増やしていく。また、老人ホームなどで寝たきりになる人が多いのは、座ったり、横になっている時間が増えることが大きな要因。日常生活のなかで「立つ」ことを意識し、立ちながら何かをしたり、こまめに動くだけでも効果はある。

さらに、食事や運動が自然と健康的なものになる環境づくりも重要だ。消費者が健康によいものを選ぶようになったこともあり、カロリーオフやコレステロールを下げる機能のある食品も増えてきた。画面にかじりついてやるテレビゲームは運動量を減らすが、身体を動かしてできるゲームなどはどんどん開発されるとよい。車社会では安心して散歩できる道も少ないので、遊歩道の整備なども期待される。

長寿県として注目されてきた沖縄県では、いち早くアメリカ型の食生活が入ってきたことから、他の地域より早く肥満や心筋梗塞が増加。女性の平均寿命は全国1位だが、男性はなんと26位。沖縄の姿は、10年後の日本の姿かもしれない。

ただ、寿命の長さよりも大切なのは、ずっと健康で元気に過ごせること。日本人の平均寿命は男性79歳、女性86歳。しかしそのうち、病気などで自立できない年数が平均6〜7年もある。重要なのは平均寿命よりも、元気で過ごせる「健康寿命」。メタボリックシンドロームを予防して、健康な身体と心で人生を楽しむ。それは日本人、いや世界共通の課題だ。 ■


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