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秋山 咲恵・サキコーポレーション代表取締役社長

2007.09.01
「ベンチャー──壁の越え方・失敗の生かし方」

秋山 咲恵・サキコーポレーション代表取締役社長

秋山 咲恵  あきやま さきえ
サキコーポレーション代表取締役社長
1962年大阪府生まれ。京都大学法学部卒。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)を経て、94年、夫の吉宏氏と技術系ベンチャー「サキコーポレーション」を起業。創業以来10年間で平均売上成長率200%を実現、業界後発ながら電子機器のプリント基板検査装置で世界第2位のシェアを獲得。政府税制調査会委員、経済産業省中小企業政策審議会委員、経済産業省「経済社会の持続的発展のための企業税制改革に関する研究会」委員、日本新事業支援機関協議会フェロー、中小企業大学校講師などを務める。またインキュベーション関連機関での講演多数。2005年日刊工業新聞社『優秀経営者顕彰』最優秀経営者賞受賞、東京商工会議所『勇気ある経営大賞』大賞受賞、日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2006」受賞。


http://www.sakicorp.com/

社会に出て20年、技術系ベンチャー企業を興して十数年。
振り返ると、10年、20年前の常識が見事にひっくり返っていることが多い。今、「再チャレンジ」という言葉は敗者復活、失敗した人が再挑戦するニュアンスで使われることが多いが、特に失敗しなくても、時代は変わり環境は変わる。となると、誰もが自ら積極的に「新しい扉を開く」ことにチャレンジしないと、時代に適合できないし、生き残ることができず、幸せにはなれない。

時代は変わる。私は男女雇用機会均等法施行の1期生として、1987年に社会に出たが、当時日本企業は、まだ女性への門戸開放はおそるおそるの状況だったから、私自身は外資系コンサルティングファームからキャリアを積んだ。女性が働くこと1つを見ても、20年あれば世の中は変わる。もう1つ、私たちが起業したのは94年だが、これも、もし起業が10年早ければ立ち上がりは全く違っていたと思わざるを得ない。

94年というのは、Japan as No.1を誇った80年代を経て、バブル崩壊後の景気がどん底の時期。そしてやっと自分たちの製品開発に成功し商売を始めた96年当時のキーワードは「国内空洞化」。日本の製造業が人件費の安い海外へと流出し、時代のムードは悲観的だった。

なぜそんな時期に、とも思うだろうが、どんな時代でもその人にとってチャレンジせざるを得ない事情があれば、挑戦は必要であり、私たちの場合は、そんな厳しい時代だったからこそきっかけを掴めた面もある。

私たちの会社の製品は、パソコンや携帯電話など電子機器のプリント基板の検査装置。一般消費者ではなく工場がお客さまになる。空洞化が叫ばれるなかで、国内の生産ラインの現場は文字どおり生き残りを賭けて戦っており、そのお客さまのニーズにマッチするものを私たちが提供できた。私たちが目的を持ち必然性を見出し必死の思いで何とかやろうとしていたことと、お客さま自身も生き残りを賭けていたという、本気度合いのマッチングがあった。互いの強い「目的意識」「必然性」「志」から始まっているものが響きあえば、目の前にある「現実の壁」は乗り越えられる。

もちろん「現実の壁」は高かった。
知名度も実績もない、創業者2人とアルバイトという零細企業だったから、最初は取引の土俵にすら上がれない。試作機をつくらないと始まらないのに、信用がないので代引きでないと部品1つ買えないし、加工を引き受けてくれる会社もない。やっと試作機ができても、買っていただくためのハードルがさらに高い。

いくらこちらに熱意があっても、お客さまに買う理由がないと、買ってはいただけない。でも売れないと会社が成り立たないわけで、とにかくできることは何でもやった。まず、最初から「買ってくれ」と言うのではなく、お客さまの話を聴き、困っていることに対して、「私たちはこういうことができる」と提案する。興味を示してくれたお客さまに対し、自らの負担で試作機をつくり「形にしたので見てくれ」と。そして「お金はいらないから、とにかく使って意見をいただきたい」と工場に持ち込み、片隅に置いてもらってお客さまからのアドバイスをもとにその場で改良を重ねる。半年近く、半ば社員のように毎日お客さまの工場に出社してそれを繰り返したことで、お客さまは自分たちの創意工夫が形になったものという意識を、私たちの1号機に持ってくれた。

できることをやっただけと言えばそれまでだが、そこまでやる人が他にいなかったのも事実。私たちにそれができたのは、何としても私たちの製品に目を留めてほしい、お客さまにとって魅力あるものにしたい、使っていただくことで何とかこの壁を乗り越え突破口を見つけたい──その一心だった。

壁の前に立つと高さばかりが目につく。
私は先日、初めて富士山に登ったが、やっぱり日本一は凄い。見上げるとあまりに高くて気持ちが萎える。ただ、そこで諦めるのは簡単。人間が言い訳を考える能力はすばらしく、やらない理由はいくらでもつくれる。壁を越える理由を持たない人にとって、越えるのは難しい。どうしても目の前の壁を越えたいという強い「動機」を持つ人だけが、壁を越えられる。自分の「動機」があれば、あとは逃げずにできることをやるだけ。それ以上でも以下でもない。絶対無理だと思った富士山の高い頂きも、やめたり戻ったりしないで、とにかく上に向かって一歩一歩と続ければ頂上まで行くことができた。

だから、自分の「動機」をどれだけ強く持てるか。加えて、その動機や目的を共有する「仲間」がいること。仲間がいることで自分の気持ちが強くなれる。仲間への責任感、お客さまへの責任感、プロとしてのプライド──何か自分の気持ちの芯になるものが、壁を越えるときの強さになる。それがあれば、壁にぶつかったとき、腕を組んで悩む前に挑戦できる。壁を叩いてみる、飛びついてみる、登ってみる。そういうことが突破口になっていく。

そうしたチャレンジの結果、うまくいかないこともある。失敗を生かせるかどうかは、壁に対してどれだけとことん立ち向かったか。ベストは尽くしたが、何らかの理由で結果は出なかったというところまでいければ、次に生かせる。越えない理由を自分でつくってしまうと、次もダメだと簡単に諦め、負け癖がついてしまう。

結局は自分との闘いだ。とりわけ自分がリーダーであれば、怯んでいる仲間をモチベートしないと壁は越えられない。チームで壁を越える。そのときに、リーダー自身が目的意識を強く持って努力することはもちろんだが、一方でリーダーは担がれる存在。いくら名刺に肩書が入っていても、メンバーに信頼されていないとリーダーは務まらない。リーダーの判断を尊重し指示に従うというメンバーの信頼があってこそ、リーダー自身も怯まずに進める。それが私自身が起業して経験してきたことだ。

起業して十数年。私たちのような小さい会社でも、世界に出れば、日本企業なら「品質」や「技術」がいいはずだと見てもらえる。それは諸先輩方が築いてこられた財産。しかし今、BRICsなどの追い上げにより、その財産が揺らいでいる。一方、日本国内に目を向けると、戦後うまくいっていたシステムが「制度疲労」を起こしている。親の世代の「幸せの方程式」が通用しなくなり、どうしていいかわからず「閉塞感」が漂っている。

こうしたなかで、私自身の最近のキーワードは「温故知新」。江戸時代、日本のロボットのルーツとも言える、からくり儀右衛門の茶運び人形は、シンプルな制御理論で高度な動きを実現していたし、茶道で用いる器などもかつての最先端技術でありデザインだった。そういう日本が本来持っていた文化に根ざした強みが何だったのか。「故きを温ね」れば、誇りを持って世界にアピールできるものがあるはずだ。そして「新しきを知る」ということでは、今までどうしても国内で完結しがちだった視点・視野をグローバルにして見つめなおす。

「温故知新」をキーワードにチャレンジを繰り返し、時代が変わってもそのときどきのお客さまに喜んで買っていただける製品やサービスを創り続ける。基本は働く人もお客さまも幸せになること。そんな思いで会社を成長発展させ、300年続く会社に育てることに挑戦したい。 ■


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