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沼田 宏文・同志社大学バスケットボール部監督

2007.08.01
「チームは『鎖の輪』──1人ひとりの『好き』をつないで輪の強化に挑む」

沼田 宏文・同志社大学バスケットボール部監督

沼田 宏文  ぬまた ひろふみ
同志社大学バスケットボール部監督
1952年兵庫県生まれ。同志社大学卒。加古川東高校でバスケットボールを始め、同志社大学進学後、日本代表入り。204センチの長身センター「ジャンボ沼田」として注目される。1970年インカレ準優勝、1972年ミュンヘン五輪出場。卒業後、松下電器入社。選手として日本リーグ7回、全日本選手権4回の優勝に貢献。1976年モントリオール五輪代表。選手引退後は同社バスケットボール部部長を務める。2002年から2年間、日本バスケットボール協会男子指導部長。2007年、母校である同志社大学バスケットボール部監督に就任。関西学生連盟理事も兼任。


同志社大学>> http://www.doshisha.ac.jp/japanese/

バスケットボールは面白い。もっとバスケットをメジャーにしたい、楽しんでもらいたい。ずっとそう思い続けてきた私に、この春、新しいチャンスが巡ってきた。母校・同志社大学バスケットボール部の監督就任要請だ。母校はかつて全日本学生選手権(インカレ)準優勝をはじめ、関西屈指の強豪だったが、近年は2部リーグへの転落など、低迷が続いている。

チーム再建。日本のバスケットを活性化させるには、もう一度原点に戻り、学生スポーツ界の活性化から始めたいという思いがあり、監督を引き受けた。

最初は不安もあった。まず、今の若い人たちの気持ちをつかめるのかという点。私自身、全日本などを経験し、鍛え方のイメージは持っている。しかし、スパルタ式の練習は昔の話だ。今はある程度、自主性を生かさないと選手はついてこない。

今の子供たちは、好きなことならとことんやる。4時間の練習が終わったあともすぐに帰らず、シュート練習をしたりしている。遊び感覚かもしれないが、そうやってずっとボールに触っているのは、やはり「好き」だから。私たちは彼らの「好き」という気持ちを尊重し、楽しく思い切り取り組める環境をつくり、方向づけをするだけだ。

ただ、これがなかなか難しい。自分は経験を積んでいる分、どうしても彼らの未熟さが目につく。しかし注意ばかりでは彼らも面白くない。好きなはずのバスケットなのに、ああしろこうしろと言われ、やらされてる感じを抱くと楽しくない。だから本当は「もっとしっかりやらんかい!」と叱りたいところを、10のうち8、9は我慢して、1つ良い点を見つけて「今のグッドや!」と褒める。すると彼らの目が輝き出す。

最初からガーンと行きたいところを、まずはバスケットが好きという気持ちを自覚させ、「でも、それだけでは勝てないね」と気づかせる。そうやって時機を見て、「褒める」「叱る」のバランスを徐々に変えていく。技術的には、無意識のうちに良い動きができるよう、練習を繰り返し、身体で覚えさせることが大切だ。

そしてチームづくり。バスケットはチームスポーツだ。私はゲームに出ない子にも、全員に声をかけるようにしている。「自分は頑張ってもゲームに出られないから適当にやればいい」という子がいれば、チームのレベルはその子のレベルで留まってしまう。

私は全日本時代にそういう経験をした。日本人初の身長2メートル選手として全日本の強化練習に参加していたが、有名選手ばかりのハイレベルの練習に身体がついていかないし、注意されてもよく理解できない状況。とりあえず頑張ろうと思う反面、どんなに頑張ってもできないなら仕方ない、どうせ最終選手には選ばれないという気持ちがあった。そんなとき、日本に指導に来ていたアメリカのピート・ニューエルというバスケット界の重鎮の言葉に衝撃を受けた。

「チームは鎖の輪だ。引っ張れば一番弱いところが切れる。鎖の輪の強さは、一番弱いところで決まる。チーム力も同じ。強いところでなく、一番弱いところがそのチームの実力なのだ」。目からウロコが落ちた。自分がチームの足を引っ張っている、自分が頑張らなければチームの力は上がらない、と自覚した。

ゲームに出る出ないにかかわらず、「チームの一員として重要な役割を担っている」ことをどう自覚させるか。それを自覚すれば、チームのためにどう動けばいいか、自ら考えるようになる。私は彼らがそれに気づくよう、一人ひとりに声をかけている。

4月に就任して4カ月。もちろん勝つためのチームづくりをしているわけだが、実力もないのに勝ってしまうのも問題だ。5月、同志社大学は関西学生選手権で強豪を破り3位になった。これは、たまたま勝ったという感じだが、どこかで慢心してしまったのか、その後の練習では、それまでのがむしゃらさが消えてしまった。幸い(?)、1カ月後の西日本学生選手権で敗退、また新たな良いスタートを切ったところだ。勝ったことによる無意識のうちの気の弛み。そこは、ビシッと締めないといけないが、言われてわからないなら、結局は自分で痛い目に遭って気づく。挫折を糧に再挑戦を繰り返すしかない。

ゲームの世界では新星のように現れたチームが優勝をさらっていくこともある。しかし、たとえ1位になっても、それを維持するのは大変なことだ。先輩後輩など上下関係も厳しかった昔は、常に気を抜けない緊張感があったが、今は違う。個人の自主性を尊重し一人ひとりの自覚を待つから、チーム全体で緊張感を持続させるのは並大抵のことではないし、何をするにも時間がかかる。しかし、結果を急ぎすぎては、真の実力はつかない。充分時間をかけ、基礎からしっかり積み上げていけば、確実に良くなっていく。その意味で、今は土台づくり。急がば回れで、意識づけや体力・筋力づくりという基礎固めに取り組んでいるところだ。

新生・同志社、目標はもちろん学生チャンピオンだが、まず1年目の今年は1部リーグ復帰、来年度は関西ベスト4に入り、インカレ出場権を獲得。そして3年目で、インカレ・ベスト8以上に入るチームづくり──と、一段一段、着実に階段を登りたい。

かつてインカレ常連だった同志社も、2000年を最後に出場権を得ていない。そしてインカレでは関西勢全体の低迷が続いている。理由は、有望な学生、特に長身で優秀な選手が関東に流出してしまうから。なんとか関西学生バスケット界を活性化したい。そう思い、現在、活性化のためのしくみづくりを始めている。例えば、選手たちの活躍をもっと身近に見られるよう、公共の体育館だけでなく、ホームアンドアウェイ式に各大学で試合を行うとか、海外大学とのスポーツ交流を深め、スポーツでの交換留学など、一過性でないしくみづくりに取り組んでいる。

チームづくりも活性化も、我々がやるのは、しくみづくりであり環境づくり。こちらから関与すればするほど選手の自主性は損なわれてしまう。もっと自主的に自らの責任できちんと行動できる選手を育てたい。「鎖の輪」の中で自分がどこにいるのか、どういう役割を担うのか──自ら気づき、自覚して動く。それはバスケットだけでなく、生きていくうえでも、とても大事なこと。最終的には卒業時、常識をわきまえ、周りに感謝できる、きちんとした人間として社会に送り出す。それが私たちの使命だと思っている。 ■


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