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石井 淳蔵・神戸大学大学院経営学研究科教授

2007.03.15
「2007年、団塊世代へのマーケティング」

石井 淳蔵・神戸大学大学院経営学研究科教授

石井 淳蔵  いしい じゅんぞう
神戸大学大学院経営学研究科教授(流通;マーケティング)
1947年大阪市生まれ。神戸大学経営学部卒、同大学院経営学研究科博士課程修了。商学博士。同志社大学助教授、教授を経て、神戸大学教授。ブランド論、インターネットマーケティングなど研究。著書「仮想経験のデザイン―インターネット・マーケティングの新地平」「マーケティングの神話」「1からのマーケティング」「ブランド―価値の創造」「インターネット社会のマーケティング―ネット・コミュニティのデザイン」「日本企業のマーケティング行動」「流通におけるパワーと対立」「商人家族と市場社会」、共著「街づくりのマーケティング」、訳書「マーケティング・リサーチ」など。


http://www.ishiimarketing.com/

大きい変化を生きる団塊の世代

団塊の世代。生まれた時の生活と死んでいく時の生活がこれほど極端に違っている世代は、人類史をひもといてもないのではないだろうか。

団塊世代の先頭が生を受けたのが、1947(昭和22)年。戦争が終わってまもなく、戦争の傷跡も生々しい時だ。小学校は、満足な教室も校舎もなく、朝行きと昼行きの二部制。一クラスは55人。机は教室を隙間なく埋めた。世代人口が多い、これだけの理由で、ハード面でその後の大きい問題を引き起こすことになるのだが、小学校のキャパ問題はハード面での最初の問題だ。

文化面では、団塊世代はそれまでになかった文化を創り出す。それまでの鬱憤をすべて吐き出したような大学紛争の後、社会の最前線に企業戦士として登場する。そして、「郊外のマンション」に住み、キッチンとリビングが一緒になった「3LDK」の間取りの中に、夫婦と子どもだけという小さい家族を営む。わが国に、「核家族」という家族形態が初めて誕生した。

彼らは、「自家用車」を競って購入した。週末には、「ショッピングセンター」に買い物に行き、家族揃っての楽しい食事を「ファミリーレストラン」でとった。少し時間の余裕のある週末には「ドライブ」に、夏休みはTDLや海外旅行に出かけた。順調そのものの生活が続いた。戦争は起こらなかったし、給料が遅配することもなかった。世紀が変わる前後に少し暗い時代を迎えたが、バブルでいい目を味わったツケだと思えば納得もいく。何より、彼らが退職し始めたときから景気は上向き、株価が急角度で上昇したのも幸運といえば幸運。7600円にまで落ちた日経平均が倍以上に跳ね上がった。勤めていた会社の株などを持っていた団塊世代人は苦労もなく、潤沢な老後の資金を得た。

食べ物・着る物にも事欠いた時代から、「欲しいものが欲しい」という豊かな時代へ。革命の戦士から企業戦士へ。本当に変化の極端から極端を動いてきたのがこの世代だ。新しい変化を吸収する力があったというべきか、変化慣れして好奇心が強いというべきか、進取の精神があるというべきか、先の世代との違いの一つはそこにある。

これからの団塊世代

さて、団塊の最初の世代が、今年で60歳を迎える。多くは会社をリタイアする。どのような生活が待っているのだろうか。一つはっきりしているのは、都心回帰。郊外に家を構えた団塊の世代は、子どもが自立した今、不便な郊外に住む理由はない。しかし、それは消極的な理由だ。理由は他にある。消費生活を最大限享受したいのだ。都心は豊かな消費生活の拠点。新しいモノやコトが絶え間なく生まれ、退屈させることはない。こうして、消費意欲満々の団塊世代を中心に、これまで見られなかったような消費生活・スタイルが誕生するはずだ。

彼らの生活スタイルは、老後と呼ばれる静かな生活ではないはずだ。年をとっても身体をフルに動かそうとするだろう。ゴルフやテニスを夫婦で楽しみ、時間を作ってはジムで汗を流す。知的な刺激も欠かさない。映画や演劇や音楽会やスポーツ観戦に積極的に出かけ、美味しいと噂のレストランに出没する。マンションは留守にしても大丈夫なので、夫婦や友人たちと長期の海外旅行にも行く。どちらかというとお節介人間が多いこの世代、仲間づくりにも励む。ボランティア仲間を募り、友人を招いてパーティを開く。起業したいという人も少なくないだろう。ネットは、そのための欠かすことのできないツールになる。新しい消費スタイルを求めるとともに、レトロ消費も花盛り。彼らの子どもの頃の思い出が消費の核になる。自分を育んだ日本の伝統への憧れが強まる。商店街や縁日が復活し、古い都での伝統行事に駆けつける。

考えてみると、団塊の世代が若い頃に夢見た、能力に応じて働き、必要に応じて受け取る社会が、すでに実現しているようにも見える。汗を流したい人はスポーツをし、人のために役に立ちたい人はボランティアをし、音楽に生きたい人はバンドをつくり、仕事が一番という人は起業し、友人と議論をしていたいと思う人は研究会をつくる……。

これから少なくとも十年を超える期間は団塊の世代の黄金期。それに引きずられるようにわが国消費文化の花が開く。それまでの中国の影響下を脱し、豊かさと世界に誇る日本消費文化をつくり上げた室町時代の再来だ(これはちょっと言い過ぎか?)。

団塊の世代の気持ちを捉えることはできるのか

当然ながら、新消費時代を迎える団塊の世代の周囲には大きなビジネスチャンスが転がっている。同世代が社会の中核として登場した1980年代。それまでになかった消費生活を出迎えてくれたのは、「ニューライフ・ナウ」を謳ったシャープ、「おいしい生活」を提案した西武グループ、あるいはTDL、ファミレスの各社であった。さぁ、これからは、どのような企業がこの新しい消費文化の指針を与えることになるのだろうか。

しかし、そこでちょっとした困難に遭遇する。自分の道を好きに歩いて行きたいというこの世代、当世代をターゲットとした商品開発・マーケティングにはもうひとつのれない。

一つは、彼ら自身、それにどう対応していいかわからないから。若い世代は仕掛けられているのをうまく消化して、したたかな消費者になっている。しかし、彼らはシャイでナイーブ。アンケート慣れして自分を表現するリテラシーを持った若い世代とは異なり、自己表現が下手。「言わなくてもわかるはず」という、昔ながらの日本人の最後の世代でもあるうえに、しかも屈託がある。だから、彼らのニーズを探り出すのは大変。

そして何より、「私たちは仕掛けてきた側なのに……」という思いがある。消費を誘導する仕掛けを山ほど考えてきた世代だけに、「自分たちに向けた仕掛けは堪忍してくれよ」となる。どこの誰が、この壁を破るのか。

最後に、団塊の世代が残す負の遺産にも少し触れておこう。団塊の世代のために拡張されたハードは、小学校の教室や校舎をはじめ、その後、社会のお荷物になった。1970年代以降、団塊の世代が郊外に住むにつれ、都心の商店街は見る影もなく衰退した。今回も、都心回帰とともに、郊外のショッピングセンターは廃れていきそうだ。その意味では、団塊世代にあまりにフィットしすぎるマーケティングは後の処理が大変だ。後続世代にも目配りし、少しのコストで次の世代や用途に転換できるような柔軟なマーケティングの考え方が必要ではないだろうか。 ■


関連資料

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