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太田 肇・同志社大学政策学部教授

2007.03.01
「少子高齢時代──生きがい・やりがいを生む組織・社会」

太田 肇・同志社大学政策学部教授

太田 肇  おおた はじめ
同志社大学政策学部教授(組織論)
1954年兵庫県生まれ。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。経済学博士(京都大学)。三重大学人文学部社会科学科講師、助教授を経て、滋賀大学経済学部助教授、96年教授。2004年同志社大学教授。「個人」をキーワードに企業、役所、学校、地域など日本の組織や社会を問い直す。著書「プロフェッショナルと組織─組織と個人の『間接的統合』」「個人尊重の組織論」「日本企業と個人」「囲い込み症候群」「ベンチャー企業の『仕事』」「仕事人の時代」「仕事人と組織」「『個力』を活かせる組織」「囲い込み症候群」「選別主義を超えて─『個の時代』への組織革命」「ホンネで動かす組織論」「認められたい」「お金より名誉のモチベーション論」など。


http://www.h7.dion.ne.jp/~ohta/

少子高齢社会は成熟社会だ。世の中全体が経済的に豊かになり、「金より名誉」──私の言葉で言うと、存在感や個性を「認められたい」時代になっている。2007年は団塊世代の大量退職が始まるが、退職後の長い20年という期間、どこに生きがいを見出すか。そこにも承認や名誉が関わってくる。また成熟というのは「量から質」という見方もできる。昔のように若い労働力が多く人海戦術的に仕事を展開できる時代ではなく、特に知識社会では労働の質や生活の質が問われる。

望ましい少子高齢社会像をキーワードで言えば「多元化と選択」。これまで日本は、会社なり職場を中心に、家庭も地域も同心円の中に位置づけられていたが、これからは一元的な構造ではダメだろう。本来、家庭、会社、地域といった組織や集団は、それぞれ独立したものであり、会社でも地域でもいろいろな集団・組織がある。その中から、自律的、自発的に選んで参加し、そこで個性を発揮して認められるというのが望ましい。

もちろん生き方も多元化する。高齢者も、もっと仕事をバリバリやりたい人もいるだろうし、一人で勉強したい人もいる。高齢者だからリタイア後はみんな地域へ、というのは望むところではない。

そういうなかで少子高齢時代の企業組織を考えると、ピラミッド型からフラットへと変わる。中高年が多く若い人が少ないので、ピラミッドが成り立たない。また一旦退職した人が再雇用されたり、非正規社員も増えてくると、ピラミッドは崩れ、若い人や中高年、あるいは職種や身分を超えて多様な人が一緒に仕事をするフラットな組織に変わってくる。

実際、中高年の雇用を考えたとき、従来の「年功制」がネックになってくることが少なくない。企業社会、特に創造的な仕事でよく言われるのが「35歳定年説」。しかし欧米の研究所など70代80代でも第一線で働いている。別に日本人と欧米人で能力に差があるわけではなく、年功制によるものだと思う。人間の能力は、年をとっても伸び続けるが、年功賃金ほどは上がらない。賃金が伸びる割には能力が伸びていないから、相対的に見ると落ちているように見える。となると中高年社員は、周囲からの厳しい目、つまり負の承認を受けるわけで、年功制は中高年に優しい制度とは言い難い。だから中高年の雇用機会を拡げようとすると、年功制は逆に制約になってくる。

その点、定年後の高齢者の再雇用は、若い人とのそれまでの上下関係を一旦リセットすることになり、相互のコミュニケーションを促進する。2007年問題で指摘されている技術伝承も、再雇用して親子くらい年齢差がある若い人とのペアで働くというのが、うまくいく一つのポイントではないかと考えている。

フラットな組織で高齢者と若者が協働するのは、企業だけでなく地域も同様。少子高齢化が一足先に進んでいる地方──私も地方出身だが──では、祭や行事、多様な場面で、高齢者の出番が増えている。高齢者が地域の主役として存在感を増し、若い人に尊敬されながら一緒に活動する形が始まっている。

今、地域では、従来の行政区画に基づく自治会や町内会でなく、自生的なNPOなどを基礎にコミュニティを再構築する動きがある。ゴミ回収など行政単位で行うことは従来の自治会でするにしても、もっと積極的な地域活動──子供の安全を守るとか、子育て支援、祭など地域文化の継承や運動会なども、自治会でなくNPOが行う。従来の自治会が半強制的なものであるのに対し、自発的に参加できるNPOなどのコミュニティが、地域を超え、重層的かつ多元的に存在するなかで、若い人も高齢者も、それぞれが選択して加入するスタイルに、日本も徐々になりつつある。

よく退職後の生き方として、会社での地位や肩書を捨ててコミュニティにとけ込め、と言われるが、私の考えは少し違う。地位や肩書をどんどん持っていけばいい。といっても会社での地位と同じ扱いを期待するのではなく、自分の経験や得意分野を表に出すということ。ヨーロッパなどのコミュニティは、現役時代のことを表に出して認め合い、それぞれの得意なことを生かして地域をつくっていく。顔が見えないと他の人もどう接していいかわからない。地位や肩書が本物かどうか、真贋は地域で評価され、淘汰されていくのでいいのではないか。

今までの地位や肩書を隠す必要はないが、かといってそれに依存していてはダメだ。若い働き盛りの頃に専門性を磨き、キャリアを切り拓いておくべきで、若い頃、社内の地位だけに依存していた人たちは、定年後、何もできない。30代40代の頃から専門を極め、お客さんに支持された人が、定年後に会社を興したり独立したりするなどで成功している。いわば「外向きサラリーマン」のすすめ。二足のわらじが日本でも少しずつ認められるようになってきたなか、意識して自分の市場価値をつくる。その意味で、「定年後」というのは、若い人にももう始まっている。

今は交通・通信の発達で、田舎に住んでも仕事はできるし、平日は都会で働き、週末は地域に帰って農作業をしたり区長まで務める人もいる。

ホワイトカラーの仕事の3分の2くらいは会社に行かなくてもできる。携帯電話とパソコンがあれば、家でも旅行先でもどこでもできる。だから仕事のやり方を見直さないといけない。特にホワイトカラーの仕事は情報の伝達と加工がほとんどなので、会社に出ないといけないのは、最低限のミーティングくらい。時間的にも空間的にも、これまでの既成概念を捨てて柔軟な働き方、暮らし方を取り入れていくべきだろう。

最近、労働時間規制の適用除外「ホワイトカラー・イグゼンプション」が注目されているが、私はむしろこれを推進すればいいと思っている。日本人の残業時間の長さは世界で群を抜いており、有休取得率も47%。こんな状態で放っておいていいのか。この背景には長時間労働で忠誠心をアピールしたい社員の心理が働いている面もある。しかしイグゼンプションは、時間でなく仕事の成果で報いる制度。いわばインディペンデントコントラクター(独立業務請負人・個人事業主)に近い。評価尺度となる成果の中身や仕事の権限・分担の明確化など、条件の整理は必要だが、趣旨どおりきちんと運用すればムダなパフォーマンス残業は減ると考えている。

あるいはオフィスレイアウト。周囲の目が気になる大部屋方式から、机を間仕切りで区切るだけでも、働き方は変わるのではないか。人間は独りになりたいときもあれば、一緒に仕事をしたいときもある。席を決めないフリーアドレス制なら、じっくり考えたい日は部屋の隅、話したい日はその人のそば、と変えることができ、いろいろな人を見る機会があるし、いろいろな人から評価、承認もされる。もっとこれを拡げていけばいい。個室や間仕切りで個人の自律性を重視するアメリカなど、逆にミーティングの場を意識してたくさん設けている。仕事の会議だけでなく、パーティやイベントなどみんな集まることに積極的。独りでいれば逆に機会をつくって自分からコミュニケートしようという意欲が働くようで、やはりバランスが大切だ。

その意味で、どうも日本の組織は管理過剰で、自律性を阻害している気がする。マニュアルどおり行うことを徹底し過ぎ、気が利かない。チームプレイも、ふだんから雑談を交わす関係があれば、何かあったとき、あうんの呼吸で臨機応変に協働できる。何でもちゃんとという日本のやり方は、ものづくりには適していたが、サービスや創造的な仕事では逆に非効率かもしれない。

日本では最近また規律が厳しく言われるようになってきたが、むしろ「個人を生かす」発想が大切。少子高齢時代、若者から高齢者まで、多様な個性を持つ人が、多様な場で、多様な評価軸で認め合う──そんな活力ある社会を望みたい。 ■


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