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仁連 孝昭・滋賀県立大学環境科学部教授;エコ村ネットワーキング理事長

2006.11.15
「持続可能なコミュニティ、琵琶湖畔に『エコ村』をつくる」

仁連 孝昭・滋賀県立大学環境科学部教授;エコ村ネットワーキング理事長

仁連 孝昭  にれん たかあき
滋賀県立大学環境科学部教授;エコ村ネットワーキング理事長(環境経済学)
1948年大阪府生まれ。京都大学大学院経済学研究科経済政策専攻博士課程単位取得退学。広島大学総合科学部助手、日本福祉大学経済学部助教授、教授を経て、1995年滋賀県立大学環境科学部教授。この間、国連地域開発センター研究員も務めた。エコロジカル経済学を専門とし、経済、環境、ライフスタイルを視野にいれた人間行動について研究。NPO法人エコ村ネットワーキング理事長。人間が人間らしく生きる、自然と共存し生かされている、私たちのライフスタイルを「むら」という新しい地平でつくり出していくことに21世紀の光を見出したいという。著書『水文・水資源ハンドブック』『持続可能な水環境政策』(共著)など。


http://www.ses.usp.ac.jp/ses/kyouin/shakei/niren.html
http://www.eco-mura.net/index.html

もはや従来の延長線上では考えられない──先頃の政府発表によると、日本の2005年度の温室効果ガス排出量は1990年度比で8%も増加。京都議定書目標達成の約束期限まで、残された時間はわずかなのに、今の延長線上で暮らしや都市構造や産業を考えていたのでは、いくら絞っても絞りきれない。本気で温室効果ガスを減らそうと思うなら、ドラスティックな変革が必要だ。

加えて日本社会は、かつてのような右肩上がりの経済ではなくなったし、世界に先駆けて人口減少社会に転じた。介護や年金など社会保障制度を、このまま維持できるかどうかも極めて心許ない。だから、やり方や構造を変えていく必要がある。

今の暮らしを振り返ると、ものすごく大きなシステムを動かさないと生活できなくなっている。例えば、スーパーは安くて豊富な品揃えで、いつでもサービスできるよう、世界中から商品を仕入れてくる。地元の小さな農家や農協は、そういう巨大な供給システムについていけず、地元スーパーには中国産など輸入野菜が並び、地元の食材は姿を消してしまう。これも人間がつくりだしたシステム。これにより、地元のモノを地元で消費する「地産地消」のしくみが壊れてきた。

そうなると、人間関係も希薄になる。昔は近くの商店街で買い物をしていたから、互いに顔見知りの間柄。店側は、あの客はこれが好きだから仕入れようとするし、客は調理の仕方を店の人に聞いた。今はスーパーに行けば、いつでも何でも手に入るが、「人と人」との結びつきは希薄になった。

同時に「人と自然」の結びつきも見えなくなった。自然界ではすべての有機物が循環する形で生態系が成り立っており、私たち人間もその一部。人間と他の生物は相互依存の関係にある。ところが、その関係が見えないから、他の生物は単なる食材で、残ったものはゴミでしかない。だけど生ゴミはコンポストにして畑に持っていけば、野菜が育つ。

もちろん人間同士も相互依存関係にある。幼い子供を保育所へ預けるのではなく、年上の子供やおじいちゃんおばあちゃんがいるコミュニティの中で面倒をみてもらうとか……。昔は助け合うしくみがあった。

今はそうした関係が失われ、あらゆることにお金がかかる巨大システムになってしまった。確かに便利にはなったが、これを支えていくには膨大なコストがかかる。福祉など社会的間接コスト、会社でいえばオーバーヘッドコストが増えている。例えば企業にとっての人件費は、雇用者が受け取る給与だけでなく、社会保険などの負担も含まれるから、一人雇うと莫大なコストがかかる。オーバーヘッドコストを減らすことは、持続可能な社会づくりの大きな条件だ。

持続可能──サスティナブルという言葉は環境問題に関連して使われることが多い。しかし、環境だけが持続可能であればいいわけではなく、人々が将来に希望を持ち生き生き暮らせる社会であることは不可欠だし、経済もきちんと回していかないと、幸せとは言えない。つまり環境・社会・経済、ともに持続可能でないといけない。

人間と自然の本来あるべき関係を取り戻し、「人と人」「人と自然」の関係性を自覚できる暮らし方──そのモデルをつくろうと着手したのが、滋賀県近江八幡市での「小舟木エコ村」づくりだ。

琵琶湖岸から2km、近江八幡の市街地と郊外の田園地帯との境界上、琵琶湖に流れ込む藤間川、白鳥川にも接する地に、約1000人が生活するコミュニティをつくり、4テーマ23の実験的なプロジェクトを動かしていくなかで、望ましい暮らし方をはじめ経済・産業、行政のしくみのあり方、将来の方向性を明らかにしたいと考えている。

実際、産業分野でも最近は、ディマテリアライゼーション──脱物質化が課題になっているように、私たちがさまざまな工業製品を使うのは、何らかの利便性を得るのが目的。モノを減らして同じ利便性を得られるなら、その製造などにかかるエネルギー消費も低減できる。例えばコンピュータの記憶媒体は今や小指ほどのフラッシュメモリ、ディスプレイは液晶になり、照明も発光ダイオードと、少ないエネルギーで同等の利便性を得られるようになった。こういう技術を開発していけば、物質やエネルギーへの依存が少ない社会に転換していける。同時に私たちの住む街も、少ないエネルギーで暮らせるコンパクトな街でありたい。

だからエコ村では、「環境負荷の少ないエネルギー利用」をテーマに、できるだけ化石燃料に頼らず、自然光や風を採り入れた住宅構造、里山のバイオマス利用、ソーラー電気自動車によるカーシェアリングなどの実験を行う。また「地域の健全な水循環」をテーマに、調整池をつくり雨水利用などを行ったり、周辺農家とも連携し地産地消のしくみを再生する「地域内での物質循環」の実験や、住民のコミュニケーションを促し、コミュニティビジネスの支援などを行う「健全なコミュニティづくり」に取り組んでいこうと考えている。

エコ村というと、一般社会とは一線を画したコミュニティを思い浮かべる人もいるが、私たちは完全な自給自足のコミュニティをつくろうとしているわけではない。エコ村の住民も、外に住んでいる人も、互いに支え合っていて、そこでの経済と外の経済がリンクしている。それが見えるしくみをつくろうということだ。

今のように、全体のシステムが大きすぎると、個人は単なる「受け手」でしかない。消費者という受け手、行政に対しても受益者として、面倒なことは税金でやれと要求する一方で、税金の取りすぎだと文句を言うだけ。しかし小さいコミュニティなら、みんなが助け合わないと物事は進まず、その経験を積みながら、段階的に大きなシステムと繋がっていけるのではないかと思う。

こうしたエコ村づくりの成否を握るのは、やっぱり「人」。担い手となる、意欲的な人をどう繋いでいくか。かつてのムラ社会は、みんなが同じ仕事、同じ価値観だったから、まとまりやすい半面、違うことをする人は押さえつけられた。だから有能な人は外に出てしまい、コミュニティは衰退した。今は職業も価値観もバラバラで、良い意味で「デコボコ」がある人たち。それをどう繋ぎ、互いの「デコボコ」を補い合っていけるかどうか。それができれば、コミュニティだけでなく、企業にとっても、適材適所で人材を生かすモデルになる。

小舟木エコ村──前例のない試みのため、予定よりも時間がかかっているが、間もなく居住が始まる。ただ、エコ村の全体環境が整うまでには、早くてもあと5〜6年はかかりそうだ。プロジェクトも最初は失敗も多いだろうが、躓きながら一歩ずつ前進し、いつの日か、持続可能なコミュニティのあり方──温暖化問題解決につながる新しい社会のしくみを、この琵琶湖畔から世界に発信できれば、と願っている。 ■


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