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水野 稔・大阪大学大学院工学研究科教授

2006.10.15
「水と緑と風の流れる都市へ──Stop theヒートアイランド大阪」

水野 稔・大阪大学大学院工学研究科教授

水野 稔  みずの みのる
大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻教授
(環境エネルギーシステム;環境熱工学)
1943年生まれ。大阪大学工学部機械工学科卒、同大学院工学研究科機械工学専攻修士課程修了、同博士課程単位修得退学。工学博士(大阪大学)。大阪大学助手、講師、助教授を経て、1989年大阪大学教授。環境共生省エネルギー都市、エネルギー環境情報システム、未利用エネルギー活用システムなどをテーマに、都市のエネルギーシステムに関する研究、都市熱環境の保全に関する研究(ヒートアイランド、都市、廃熱)、空調システムの省エネルギー化に関する研究などを行う。主な著書『環境保全』『都市と環境』『コージェネレーションシステム計画・設計と評価』(分担執筆)など。大阪ヒートアイランド対策技術コンソーシアム理事長。


http://www.eng.osaka-u.ac.jp/env/es/envesweb/frame.html
http://www.eco-design.net/chc_index.html

大阪の暑さは日本一。
地球温暖化に都市の温暖化・ヒートアイランド現象が重なり、暑さに拍車をかけている。例えばIPCCのデータでは過去50年間で地球の平均気温は0.6℃上昇しているが、大阪府のデータでは日本全体で0.7℃、大阪府は1.5℃も上昇している。単純に言えば、大阪における気温上昇は、原因の2/5が地球温暖化、残り3/5がヒートアイランド現象ということになる。

ヒートアイランド現象は、日本だけでなく、ヨーロッパや米国の都市でも進行している。但しそれが問題になるのは、主に温帯〜亜熱帯の地域。つまり、もともと夏が暑い都市でヒートアイランド化が進むから問題になるわけで、比較的寒い地域に位置する欧米の都市では、あまり問題視されていない。従ってヒートアイランド対策は、諸外国の先例に学ぶというより、日本が率先して世界に手本を示すべき問題だ。

そして日本の中でも大阪が特に暑いのは、もともと温暖な瀬戸内気候帯に位置し、緑が少なく、エネルギー消費も旺盛な大都市、という条件が重なったから。ヒートアイランド現象は地域特性に立脚した問題であり、どこかの誰かが対策を打ってくれるのを待つのでなく、我々自身が考えていかないといけない。

地球温暖化やヒートアイランドは、それ以前の環境問題とはかなり性格が異なる。日本で高度経済成長期に現れた大気汚染、水質汚濁などの環境問題は、エンドオブパイプ型。都市や工場から出た汚染物質を、専門の処理技術者に任せて片づける型だ。一方、温暖化問題は、事後処理でなく発生抑制──CO2や熱の排出が原因だから、我々の生活システム自体を、CO2を出さない、熱を捨てないよう変えていかないと解決しない。

これは環境問題、環境技術のパラダイムシフト。他人任せでは対処できず、システム設計の段階から考え、すべての人々が認識して取り組まないといけない。住宅やオフィスビルでそれぞれガイドラインをつくって守っていくと同時に、重点的に効果のある施策に投資をして、環境に優しいシステムの普及を進めていくことが大事になる。

とりわけヒートアイランドは古くて新しい問題だ。都市のヒートアイランド現象は、100年以上前から「理学」的な研究が行われてきたが、2004年に国で「ヒートアイランド対策大綱」が定められ、ようやく「工学」的に対処すべき環境問題と位置づけられた。理学と工学の違いは、理学はシステム理解が基本だが、工学はシステムを良い方向に向けないといけない。

日本人が既に経験したように、暑いからと一旦エアコンを入れてしまうと、生活はエアコン漬けになり、建物の構造から文化にまで影響を及ぼすようになる。言い換えれば、ヒートアイランドがエネルギー多消費への引き金を引くきっかけになる。今はエアコンなしで暮らしている東南アジアの都市にまでエアコンのある暮らしが広がれば、エネルギー消費は爆発的に増大し、大変なことになる。だからこそ今のうちに、日本が、そして大阪が、問題解決の糸口を掴まなければならない。我々は非常に重大な貢献ができる立場にいるのだ。

ではどう解決すればいいかだが、それを考える際に注意が必要なのは、都市の温暖化を招いている2つの原因──地球温暖化とヒートアイランドは、いずれも「温暖化問題」だが、質が全く違うということだ。つまり地球温暖化はCO2を「いつ、どこで」排出したかは関係なく、マクロな排出量だけが問題となる。その意味では因果関係が単純で、排出量を減らすことで解決できる。

一方、ヒートアイランドは、「いつ、どこで、どうやって」熱を捨てるかも非常に重要。例えば昼と夜では、夜の排熱の方が気温上昇に与える影響は大きい。都市排熱は、昼間は日射の熱とともに上空に拡散するが、夜は大気が安定しているため熱が地表付近にとどまりやすい。

また、「どこで」ということでは、都市の中での排熱が問題。その意味では、電力システムは都市の中では排熱が少ない点で、ヒートアイランドにとって好ましいシステムと言える。一方、「どうやって」ということでは、顕熱、熱のまま捨てることが問題になる。そうでなく、ビルの屋上にある蒸発式の冷却塔のように、潜熱、水に熱を乗せ、その水を蒸発させれば気温への影響は少なくなる。熱の捨て方を工夫することで随分違う。

「水」というのは重要で、ヒートアイランド問題の根本は、熱の流れと水の流れを断ち切った都市づくりをしてきたことにある。自然は巧くできていて、熱の代謝系と水の代謝系がリンクしている。例えば気温が下がると水が凍って氷が張る。そのとき凝固熱を出して、それ以上の気温低下を抑える。逆に気温が上昇すると氷を溶かしたり水が蒸発して熱を吸収する。地球は水の力を巧く使って体温調節を行っているというわけだ。

ところが人間がつくった都市は、この2つの流れが分断されている。
ヒートアイランドの原因にはエアコンなどの人工排熱とアスファルトで地面を覆うことによる太陽熱の吸収と蓄積、2つの問題がある。水は下水道を通って処理場に行くだけで、エアコンの排熱処理に水は使われていないし、地表はアスファルトで覆われているから、水が蒸発しないうえ、太陽熱が吸収されて大気を温めてしまう。もっと水を巧く使い、家庭で使った水がすぐに下水へ流れていくようなシステムでなく、風呂の水を庭に撒くことを奨励するしくみとか、保水性舗装を増やすなど、水と熱の代謝をリンクさせる都市づくりが必要だ。

水代謝といっても、単に水があればいいわけではない。堀や溜め池は、条件によっては昼間の熱を夜に持ち越してしまうから却って良くない可能性もある。むしろ川。川は海からの風の通り道。海は一日中あまり温度が変わらず、風は冷たい方から暖かい方に流れる(これも自然の巧みな体温調節機能である)から、昼間は冷たい空気が海から都市に流れ込み、夜は都市から海へ風が流れる。都市のヒートアイランド対策の一つは、風通しを良くすること。河川は水を蒸発させて涼しくするだけでなく、風を通す。そしてもう一つ理想的な水は、植物の水。熱容量を持たず蒸発だけを巧く行うから、都市に緑を増やすことがヒートアイランド対策としては有効だ。つまり水と緑と自然の風通し──それを生かし、さらに人工的に強化した都市づくりが望ましい。

電力会社は今、サプライサイドだけでなくデマンドサイドまで視野に入れるようになってきた。加えて近年は、電力会社などが開発した省エネ型給湯機「エコキュート」のように、夜間に大気から熱を吸収して昼間の給湯に利用するという、ヒートアイランド対策としては非常に優れた技術開発も行っている。今後はさらに水のことも考え、都市の熱代謝系と水代謝系がリンクするシステムづくりを、ともに考えてほしい。ヒートアイランド対策へ、大阪を起点に産・学・官・民の連携で取り組みたい。■


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