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花田 眞理子・大阪産業大学大学院人間環境学研究科助教授

2006.09.15
「お得で楽しく美しく──エコ・コンシャスな暮らしと社会をつくる」

花田 眞理子・大阪産業大学大学院人間環境学研究科助教授

花田 眞理子  はなだ まりこ
大阪産業大学大学院人間環境学研究科助教授
(環境経済・経営;環境コミュニケーション)
東京大学経済学部卒、カリフォルニア州立大学大学院修士課程修了。銀行調査部勤務を経て、アメリカの大学院で心理学・行動科学を修める。環境問題は、経済社会の発達の過程でつながりが見えなくなってきたことから生じてきたとの問題意識から、そのつながりを復活し、地域の力にしていくために、経済学で「しくみ」を考え、行動科学で「しかけ」ながら、『お得で、楽しく、美しい』エコ・コンシャスな社会の実現を模索している。


http://www.due.osaka-sandai.ac.jp/staff/hanada.html

環境意識は高いが、行動に移さない日本人──。
環境大国といわれるドイツで実感したのが、取り組みやすい「しくみ」づくりの大切さ。例えばドイツでは、ゾーン制を採っている都市も多く、都心部へは路面電車と緊急車輌以外、車の乗り入れは禁止。その代わり、バスや地下鉄に自転車やペットを乗せることができるし、公共交通機関が乗り放題になる環境チケットもあったりして、自動車を使う気にならない。

街角の至るところに、カラフルで洒落たデザインのボトル回収ボックスが設置されているし、お店では電池からワインのコルク栓まで回収ボックスが並ぶ。買い物へは、マイバッグに空き瓶や空のペットボトルを入れていき、スーパーマーケットの入り口の自動回収機に放り込めば、レシートが出てきてバッグは空に。買い物レジでこのレシートを出せばお金が戻ってくるしくみ。これなら簡単で、習慣になる。

包装紙や容器についている「緑の点」というリサイクルマークはメーカーがその処理費を払いますというしるし。だからメーカーはなるべく包装材を少なくしてコストダウンの努力をするようになり、包装ゴミが減っていくというしくみ。このマーク、スティックシュガーやガムの包装紙にまで、ありとあらゆるものについていて、ここまでやるか!?という感じ。

私のバックグラウンドは経済学と行動科学。経済学ではしくみや制度を通じて環境配慮が報われるような社会システムを考える一方、行動科学ではどうやっていろいろな立場の人や主体を動機づけしていくか考えている。行動科学で言えば、人は、自分の中の欲求や動機「動因:motive」と外からの刺激や魅力「誘因:incentive」が一緒になったとき、行動するもの。やりたい気持ちと、やると良いことがある(やらないと良くないことになる)という誘い。お腹がすいているという動因があり、いい匂いという誘因があれば、料理店のドアを開けて入っていくだろう。環境意識が行動に結びついていないなら、上手な動機づけが必要になる。

ただ、同じ情報をインプットしても人それぞれ認知パターンが異なるので、アウトプットの行動は千差万別に。真正面から「環境」を言うと引いてしまう層がいて、熱心な環境派との溝は開くばかり。どうすれば多様な層を動機づけられるか。温暖化を止めるには、私たちの日常のライフスタイルを変えることが必要だけど、もう一押しの動機づけがないと変えられない。

だから、動機づけのキーワードは、「お得で楽しく美しく」──。多くの人は何かを買うとき価格と機能やデザインで判断するわけで、価格は大きな誘因になる。これが「お得」。そして同じやるなら「楽しく」やりたいし、楽しいことなら続けられる。もともと地球に優しい行動は気高く「美しい」。だから自分も気持ちいいし、それで周りも変えていければますます心地いい。

環境に配慮すれば「お得」になるシステムをつくればいいのに、現状は、環境配慮商品は高くて、配慮しない商品やサービスが安い。そんな商品は生産・消費・消費後を通じて、空気を汚したりゴミになったりという社会的コスト、つまり社会に対するマイナスがあっても、それが価格づけされていない点が問題。だけど、「見えないコスト」は将来にツケを残す大変な借金。だから社会的コストを「見える化」して、環境配慮が報われる社会システムにしていくことが必要だ。

地球環境問題は、私たちの日常に関わることなのに、見えていないから、すごく遠い印象。とりわけ環境問題の諸悪の根元は、「つながり」が見えないこと。今はつながり自体希薄になり、失われている。村の中の地産地消で、隣の太郎くんが食べると思えば、農薬使用を控えるだろうし、農作物が台風被害にあったことを知っていれば、少々高くても形が悪くても買う気になるはずなのに。

あるいは、企業は、いくら環境に配慮したモノをつくっても、消費者が買ってくれないと言い、消費者は買いたいのに売っていないと。これもやはり「つながり」が切れているから。コミュニケーション不足だから。消費者が肉や野菜の生産履歴を見ながら商品を選び、生産者がそんな消費者の声を聞いて応えていくというように、うまくつなぐことで、多様な立場の人の参画が促される。

「一緒にいいことをする」というしかけとしくみが、「共同体意識」を生むことにもなる。

その点で、期待の一つは2007年問題。経験と知識を持った団塊の世代が地域に帰ってくる。行政側も、財政問題と地方分権の流れから、意識の高い市民たちにぜひ共同体づくりに参画してほしいと思っている。そういう人々に活躍の場を提供するとともに、積極的な参画を促すため、シチズンシップ教育や環境教育が大事になる。

私の授業のひとつ「フィールドスタジオワーク」では、大東市のさまざまな層に環境教育を実践してきたが、学生たちは、自分で学んだことを整理して、市民に伝えるのが楽しくてたまらなくなる。中国の古い諺に「聞いたことは忘れる、見たことは思い出す、行動したことは理解できる、発見したことは使える」というのがあるそうだが、彼らを見ていると、もう一歩進んで「自分で工夫したことは人に伝える」を加えたくなった。環境コミュニケーションの輪を拡げていくことで、コミュニティとしての「つながり」が少しずつ出てきたと実感しているから。

環境教育は、コミュニティの力をつけるのにぴったりの取り組みだと思う。そこでは全国共通のマニュアルなどあまり意味はなく、「地域の環境特性」を生かすことが大事になる。大東市なら水害の歴史があり、生駒山系という豊富な緑があり、経済的には東大阪と似て中小規模の事業者が多く、環境関連分野の事業者も多い。そんな環境特性を確認しながら、地域課題を抽出するとともに、地域資源の活用を考えることで、その地域に合った独自の取り組みができる。

そして「実践」の持つパワー。実践機会の場面では、行政・事業者・市民の連携や協働が必要になってくる。さらに「継続」。一度だけなら「しかけ」でいいが、継続するには「しくみ」が必要。誰かがものすごく頑張って厚意でやるのは長続きしない。行うことがみんなにプラスになるしくみでないといけない。

それにはまず「見えるしくみづくり」。ゴミも、自治体が税金で処理しているから、コストが見えにくい。もし独立の会計で処理して、ゴミを減らしてコストダウンできた分だけ住民税を下げるようにすれば、それがゴミ削減の動機づけになるのではないか。

そして行動を促すためには「費用対効果」も重要。すごく苦労してもほんのちょっとしか効果がないとやる気がなくなる、つまり「無力感」に陥る。自分がやったことが効果があると思える、つまり「効力感」を持たせるには、結果を見せることが大切。やったことが、社会の役に立っている、と実感することはすごく大切で、それが行動化の力になっていく。

そこで必要なのが二つの「そうぞうりょく」。一つは「創造力:creativity」、従来と全く異なる発想で物事にあたる。何事も別の土俵に移るときは早い者勝ち。ビジネス分野でも、先駆的なエコ商品を発表して大成功する例がたくさん出てきた。率先して新しいことをやればプラスになる。もう一つが「想像力:imagination」、自分以外のことをどれだけ感じられるか。それが「エコ・コンシャス」。今の自分がよければいいさ、と、将来世代のことを考えないとしたら、すごく想像力が欠けている。自分以外の人、自分の国以外の人、将来の世代、人ではない生物種、生き物ではない環境に対し、どれだけコンシャスになれるか、感じることができるか? それは品性かもしれないし、感性かもしれないし、知性かもしれない。「エコ・コンシャス」であることがかっこいいと思う社会こそ望ましい。

環境の取り組みで大切なのは「バック・キャスティング」。今ある状態を前提にしてどうしようと考えるのではなく、こうありたいという将来像がまず最初にあって、それに向けて何をしなければいけないかを考える。何ができるかではなく、何をすべきか。地球環境対策は今やらないと、もう手遅れだろう。後世の子供たちにあの時代の人たちは何をやっていたんだと思われないためにも、今の私たちの行動に「効力感」を持つことがすごく大切。やっても仕方がないとか自分と関係ないと思いがちだけど、そうではない。それをできるだけ大勢の人にわかってもらえるようにと考えて、学生とともに楽しく環境コミュニケーションに取り組んでいる。■


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