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槇村 久子・京都女子大学現代社会学部教授

2006.08.01
「地球環境時代のライフデザインとエネルギー」

槇村 久子・京都女子大学現代社会学部教授

槇村 久子  まきむら ひさこ
京都女子大学現代社会学部教授;農学博士(環境計画)
1947年大阪市生まれ。千葉大学園芸学部卒、京都大学大学院農学研究科博士課程修了。研究所勤務、奈良新聞社記者、奈良県女性センター専門職員、奈良文化女子短期大学助教授、奈良県立商科大学教授を経て、2000年京都女子大学教授。地域とライフスタイルの変化の視点から、人間のライフデザインと環境デザインを表裏一体のものとして研究。著書「仕事と家庭―長寿社会を支えるライフデザインと環境デザイン」「グリーン・ネットワークシティ」「観光開発論」「21世紀へ環境学の試み」「お墓と家族」「持続可能社会構築のフロンティア」など。地球環境関西フォーラム・地球環境100人委員会委員、国土審議会近畿圏部会委員、京都府環境保全審議会委員、大阪市環境審議会委員、NPO法人「淀川さくら街道ネットワーク」理事長なども務める。


http://www.kyoto-wu.ac.jp/daigaku/kenkyu/staff/makimura.html

一人一人の生活者が温暖化防止をどう進めるか──今、チームマイナス6%の活動も見られるが、それは企業ぐるみの活動がほとんど。普通の生活者に一体どこまで浸透しているか。例えば、冷房の温度設定を28℃にするとか、できるだけ車でなく公共交通機関を利用するとか、できることからやって、習慣化すればいいが、どうも根づいているとは言い難い。

学生に環境問題における関心の所在を尋ねると、ゴミ問題と温暖化問題、2つ大きなテーマが出てくる。

ゴミ問題は実際、目の前にある。分別回収は日常生活の中にしくみとして組み込まれており、街のあちこちに分別回収容器があって、否応なく目につくし、意識せざるを得ない。一方、温暖化問題はマスメディアに出ない日はないくらいだから、大変な問題だという意識はある。しかしCO2は目に見えないため、それが実際に自分の問題にはなっていない。

公害の時代なら、息を吸ったとき空気の汚れに気づくことがあるが、CO2はわからない。だから、目に見えないまま進む温暖化問題と、自分の生活や行動がどうつながっているかを見えるようにしていかないと、危機を実感することは難しい。

自分の行動がどの程度温暖化に影響があるか、目に見える形になっていないので、少しくらいとか自分1人ならいいだろうとなりがち。これを飲むとすぐにお腹が痛くなると言われると誰も飲まないが、タバコを吸うと数十年後に健康に悪影響が出ると言われても、今日1本くらいはいいだろうと思ってしまう。だけど、長くかかって影響が出るものほど、本当は早く行動を起こさないといけない。

温暖化については諸説あり、気候の長期的変動の中での気温上昇という説もある。しかし、それなら化石燃料をどんどん使っていいかというと、そうではない。資源が有限であることに変わりはない。そして日本は既に世界で一、二を争う金持ち国。そこを日本人は実感していない。豊かになった日本人は、これまでと違うライフスタイル、ライフデザインを実施する時期に来ている。

人の生き方には、「タイム・ミニマイザー」的な生き方と「エネルギー・マキシマイザー」的な生き方がある。タイム・ミニマイザーというのは、働く時間は極力少なくし、あとは人と喋ったり楽しんだり、あくせくしないでゆったり過ごすこと。一方、エネルギー・マキシマイザーは、エネルギーを最大限使って生産性を上げる。今、タクシーを飛ばして飛行機に乗り、新幹線に乗って──と動けば、1日24時間で、かなりの仕事ができる。エネルギーと金を使えば、かなりのことができるわけだ。

私自身、ちょっと後ろめたいのは、「のぞみ」がでたとき、さほど「ひかり」と変わらないと思ったのに、一度「のぞみ」に乗ると味をしめてしまい、東京─京都間なんて、たかだか20分しか違わないのに、乗ってしまう。ビジネスの世界は、それで動いている面もあるが、それをオフタイムにまで持ち込む必要はない。仕事をしたあとは家族や友達とゆっくり過ごす。違うリズムを生活に取り入れることが大事だ。

昨年、東北へ旅行した。まず飛行機、次に車で高速道路を走り、街に着いてから歩いた。飛行機は速いが景色は見えない。高速道路も景色は面白くない。だけど街の中を歩くと、1軒1軒の家々、人々の顔や姿が見え、街が積み重ねてきた歴史を感じることができる。

それはスピードの違い。スピードの違いによって、得られるものや楽しさが違う。それはまたエネルギー消費量の違いでもある。飛行機や車と異なり、散策は自分のカロリーを消費するだけ。20世紀社会はスピードを求め続けたが、21世紀は時間経過そのものに価値を置く社会に変わらないといけない。

豊かさがある程度充足され、次はモノでなく、良い環境、良い景色、良い時間──もっと自分らしくゆったりできる時間や空間を、人々は求め始めている。車に乗らず、自分のエネルギーで歩く。歩くスピードで時間・空間を楽しむ。せっかちな日本人も、江戸時代まではそういう生活をしていた。それを再発見する時代に来ている。

エネルギー・マキシマイザーでもタイム・ミニマイザーでもなく、2つの間のどの辺で自分の生き方を設計するか。エネルギー消費は抑えつつも、自分が楽しめる生活。例えば自宅の近くで季節を感じ、歴史を感じ、美しいもの、お洒落なものを発見することが豊かだというライフデザイン、環境デザインをしていく。それが地球時代のライフデザインであり環境デザインだ。

だから、CO2排出を抑えようなんて言わなくても、綺麗な街、ゆっくりできるカフェをつくればいい。人々の意識もゆとりを求め始めている。オープンカフェが流行りだしたのも、そうした底流の変化を受けたもの。パッと飲んで慌ただしく出ていくのではなく、道行く人、街の風景を眺めながら、ゆっくりと街を楽しむ。そういう街につくりかえ、都心居住、職住近接を進める。遠い郊外に住み、毎日4時間も通勤に使い、家族と接する時間も少なくなるというのではなく、都市をもっと人間が住みやすい街に変えていく。

水都大阪の水辺を甦らせ、緑豊かな遊歩道をつくり、周辺にオープンカフェをつくる。ボストンは、都心部を走っていた高架高速道路を地下化して、上を公園や緑地にした。高速道路は産業発展に必要なインフラであり、みんな一度は高度成長的な街づくりをしたが、地下化することで人々が街も自然も楽しめるよう、つくりかえることが始まっている。

地球環境に優しい、究極の省エネルギー生活は、何もしないで家でじっと寝ていることかもしれないが、それはできない。であれば、もっと身近で楽しめるようにすることが必要だし、ついでに言えば、どんなに省エネ生活をしていても、人間は最期に多大なエネルギーを使ってしまう。

私はお墓の研究もしているが、お墓も近頃は自然志向。実は火葬はかなりのエネルギーを使う。近年、イギリスで始まったのが、「ナチュラル・デス」──遺体を土葬にし、上に墓石の代わりに樹を植え、緑の環境を創る。文明国に現れたこの動きが、どのような価値観の変化によるものか、近々調べに行くつもりだ。

地球環境時代の新しい生活を設計する──エネルギー消費を減らすにしても、我慢するだけでは続かない。快適な生活にエネルギーは不可欠だけど、目に見えないから、ついついムダに使ったりする。例えば自分の寄附金を太陽光発電や風力発電の建設費用に充てる「グリーン電力基金」は非常に良い取り組みだけど、もっと自分の行為と結果のつながりが見えるようにすれば、さらに賛同者が増えるのではないか。要は、自分の行為と電気・エネルギーや地球環境のつながり──それが目に見えて、また楽しいと思える仕掛けをつくることが大事。大上段にCO2削減を訴えるより、エネルギーを上手に使い、住むことを楽しめる街をつくりたい。■


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