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河合 薫・気象予報士

2006.03.01
「異常気象と体調・気分──温暖化の影響を予報する」

河合 薫・気象予報士

河合 薫 かわい かおる  気象予報士
1965年千葉県生まれ。小学4年から中学1年までアメリカ合衆国アラバマ州で過ごす。千葉大学教育学部卒。全日空入社。国際線客室乗務員として4年間勤務、1994年第1回気象予報士試験に合格。以後、第一線の気象予報士としてANB「ニュースステーション」等で、天気予報のみならず、わかりやすく幅広い独自の気象情報を提供。東京大学大学院医学系研究科修士課程(健康社会学)修了後、2004年より同大学院博士課程に在学中。気象環境と身体との関係を学んできた経験を生かし、大学では人間のストレスを研究。人間関係と社会や家庭におけるストレス、組織の生産性とメンタルヘルスなど社会心理学的な視点からのアプローチを専門としている。最新刊「『なりたい自分』に変わる9:1の法則」が2006年3月発売。他の著書「上司の前で泣く女」「部長のハート」「ビューティ予報 春夏秋冬」「体調予報」など。


「続・気分はいつも雲の上」>> http://www.dd.iij4u.or.jp/~kaorun/

「おかしいんじゃないか?」──誰もがそう思うくらい、最近の天気はなんだかおかしい。ようやく、みんなの意識が地球環境問題に向いてきたようだけど、温暖化と言われているのに、今年の冬はとても寒かった。これって一体?……と思っている人もいるのでは?

温暖化の影響を考えるとき、地球自体をまずは長いモノサシで見ると、今は氷河期と氷河期の間の間氷期。でももう一つ、10年周期というのがあり、1990年代は20世紀最大の暖かい10年だったが、2000年代は寒気が流れやすい10年。今年の寒さもその周期の中にある。

そして、今騒がれているのが、人間が人工的に出すCO2による「温暖化」。地球の気候自体、周期があるのに、CO2を出すことでバランスを崩してしまう。バランスが崩れると両極端の現象が起きやすくなる。大雨、大雪、干魃、猛暑、酷寒──そういう異常気象が頻繁に起きるようになる。今年は八丈島でも60年ぶりに積雪があるなど、やっぱりいつもの冬とは違う。

天気の世界では、よく「バタフライ効果」が言われる。ブラジルで蝶が羽ばたくと、テキサスで竜巻が起きるというように、気象は非常に微妙でデリケート。つまり、今起きている気象現象は、今出しているものに反応しているワケじゃない。何十年もの間の小さな変化の蓄積が今の天気のバランスを崩している。オゾンホールにしても、発見されたのは1980年代。それは、過去からの蓄積でそうなった。原因物質としてフロンなどが挙げられているが、フロンが成層圏に達するまで数十年かかるわけで、フロン規制などで今出しているものを全てやめたとしても、効果は数十年後という計算になる。

そんな気の長い話だから、なかなか身近に感じられない。温暖化も自分に関係ないと思えば何もしない。私自身、キャビンアテンダント時代は、地上でどんなに雨が降っていても上空は晴れていたし、赤道付近を飛ぶときはよく飛行機が揺れたけど、それらを疑問に思ったこともなかった。気象予報士になって、地上から10km付近まで「対流圏」があり、その中でしか雲は発達しないので、飛行機が飛ぶ上空は晴、赤道付近は暑いので空気が膨張し対流圏が高くなり、それに飛行高度が追いつかないので揺れる、ということがわかった。自分である程度天気を予報できるようになると、あらかじめ雨が降ることがわかるのでおニューの靴を濡らさずに済むとか、些細なことだけど、天気を生活に取り入れて快適になった。天気を知ると元気に暮らせる。

気象予報は、世界中で1日2回定時に観測された気象データをもとに行う。世界気象機構に集められた気象データが気象庁のスーパーコンピュータに送られ、解析されたものが、テレビや新聞で見る「地上天気図」。予報士は地上だけでなく、1500m、3000mと、鉛直方向の天気図を見て、12時間後、24時間後と時系列で解析していく。気象庁発表のもので8割はわかるが、あとの2割は土地の経験。その土地を知っているかどうか。だから地元の漁師さんには敵わない。自分の生活が天気に左右されるので、常に風や雲の動きに敏感にならざるを得ない──そんな仕事の人には敵わない。私自身、予報するときは、外に出て空気の質感を感じておかないと、外す。雨が降る前はやっぱり空気が重い。

毎日毎日空を見て、天気図を見て、予想しているわけだけど、最近、天気図を見ていて、梅雨明けを判断する偏西風の域が教科書どおりに行かなくなったり、年末なのに南の海上で台風が発達していたり、爆弾低気圧が猛烈に発達したりしているのを見ると、バランスが崩れているのは確かだと思う。

温暖化の影響として、例えば日本でマラリアが発生すると言われているが、もっと身近なところでは集中豪雨の頻発。普通は1時間くらいで上がるのに、断続的に集中豪雨が起きるようになったのは、積乱雲が発達しやすくなったから。子供の頃に住んでいたアラバマはトルネードが3日に1度やってくるところで、日本でも最近、竜巻やダウンバースト、強烈な突風が起きている。いずれも原因は積乱雲。積乱雲が大雨や大雪を降らし、雷を鳴らし、竜巻や突風も引き起こす。それがすごく発達しやすくなった。鍋を火にかけて強火にするとグツグツ沸騰するように、温暖化で地上の温度が上がって強火状態になり、積乱雲が発達しやすくなっている。

温暖化って、要するに春や秋が短くなる。暑くて暑くて暑くて、急に冬になる。冬がずっと長くて急に夏になるという、両極端の現象が増えるわけで、日本の良さである「四季」の移り変わりがなくなってしまう。趣深い奥ゆかしさが失われ、すごく暑いすごく寒いという、気性が荒いだけで、アンニュイな現象、はかなさを感じる季節がどこかにいってしまうのだ。

また、夏にしても、例えば私たちが子供の頃は30℃を超えると暑いと感じていたのに、今は35℃以上でないと暑いと感じない。温暖化が進み、35℃を超える日が続くと冷房を入れる生活が続く。すると人間の身体は汗をかかなくなる。能動汗腺が退化してしまい、暑さに弱くなって、熱中症を起こしやすくなる。気候の変化でライフスタイルが変化して、身体の機能が弱まることがある。

もともと人間の体調や気分は、気象の影響を受ける。誰だって雨上がりの翌日は気持ちがいい。だけど逆に気持ちがイライラする天気もある。アルプス山脈でフェーン風が吹くと、ドイツで交通事故が増えたり、精神不安定で自殺や犯罪が増えるという研究報告もある。日本でも昔から台風が来ると喘息患者が増えるとか、寒くなると関節が痛む、雨が降ると古傷が痛むと言われ、「気象病」は結構身近にある。

それが異常気象となるとどうなるか。人間にとって一番のストレスは、予想もしない、経験もないことが起きること。地球がバランスを崩し、予想もつかない異常気象の連続はかなりストレスになる。自分の体調・気分だけではない。例えば、北国では昔、暖房費に回せるよう「寒さ手当」が支給されていたのに、暖冬続きで廃止されたかもしれない。それが今年みたいな厳冬が急に来ると困ってしまう。気候が変わると社会制度まで変わるわけで、温暖化で両極端の現象が増えるとどうなるかを想像すれば、少しずつ気をつけることはできるはず。

だから、一人ひとりが自分のできることをする。生活のなかで車を使わず自転車にしようとか、スーパーの買い物袋をもらわずマイバッグを持っていくとか、冷蔵庫の開閉を気遣うだけでもいい。それを自分のライフスタイルに取り込んで、何でもいいから環境にやさしいと言われることを、1つでいいから続ける。自給自足で昔の生活なんて、ほとんどの人はできないんだから、今のライフスタイルのなかで、自分にできることを自分の楽しみとして取り入れ、毎日続けることが一番大切。私は待機電力だけはきちんと消すようにしている。

温暖化は自分の身に降りかからないと気づきにくいし、地球への配慮はライフスタイルに取り入れないと根づかない。だけど、例えば桜、いつも4月初めに楽しむ花見が3月初めになったり、紅葉が年末の慌ただしい時期に重なったりすると、つまらない。子供の入学式は満開の桜の下で、と思えば、エコライフももっと自然に、もっと楽しくできるのではないかしら? ■


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