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神田 啓治・エネルギー政策研究所所長;京都大学名誉教授

2006.01.15
「温暖化防止に向けた、世界のエネルギー事情」

神田 啓治・エネルギー政策研究所所長;京都大学名誉教授

かんだ けいじ エネルギー政策研究所所長;京都大学名誉教授
        (エネルギー政策学;核物質管理学)
1938年山口県生まれ。国際基督教大学教養学部卒、東京工業大学大学院工学研究科原子核工学専攻博士課程修了。京都大学原子炉実験所助教授、USAアルゴンヌ国立研究所在外研究員を経て、94年京都大学原子炉実験所教授、96年京都大学大学院エネルギー科学研究科教授(エネルギー社会・環境科学専攻エネルギー政策学担当)。2002年退官。エネルギー政策研究所創設。総合エネルギー調査会専門委員など公職多数。著書「知の構築法」「聖書・バッハ・原子力」など。



2005年2月に京都議定書が発効し、温暖化対策にみんな本気になり始めた。
2008年から12年までの第1ピリオド・5年間平均の温暖化ガス排出量を1990年比で削減することはもちろん、2013年以降の第2ピリオドをどうするか。先般のモントリオール会議でも、それが議論された。1つは、議定書参加国の次の目標。1990年比削減は現実的でなく、2%程度の増加で抑えてはどうかということが議論された。2つ目は、中国など非参加国をいかに参加させるか。3つ目は達成できなかった国に罰金を払わせるかどうか。結論は出なかったが、罰金を払ってでも地球環境を守るべきではないかと議論され、議定書発効以降、温室効果ガス問題が世界の関心事になってきたことは確かだ。

そういうなかで諸外国の動きを見ると、まずアメリカでは、2005年8月、4年余りの審議を経て、包括エネルギー法が成立した。これは3つ大きな目標があり、1つは自国の石油輸入量が増大するなかでのエネルギーセキュリティ。2つ目は電力自由化によって電力会社は設備投資をしなくなり、カリフォルニア大停電や北米大停電など、安定供給が損なわれたが、調達段階でのエネルギーセキュリティも弱いし、調達後も国内の電力網と石油精練施設が弱いので、その対策が必要だということ。3つ目は、地球環境対策が必要だということ。

実は包括エネルギー法の成立後、ハリケーンのカトリーナとリタが来て、リタにより石油精練施設が徹底的にやられ、石油の値段が急騰、予算配分が大きく変わった。原子力関係予算は要求額の2割アップと、腰を抜かすような増額があったが、それはエネルギーで一番安定していて環境に良いのは原子力だから、原子力を強めない限りエネルギー・環境問題は解決しないということ。

エネルギー確保と環境保全は対立しがちだが、例えば石油と天然ガスの宝庫アラスカの森林を保護するか資源開発かが議論され、開発は少し遅らせようということになった。環境派と呼ばれる民主党議員も、原子力にあまり反対しないから、環境を守ってほしいと。今、原子力発電所は103基動いているが、老朽化のことを考えると早急に50基新設すべきだと、今回の原子力予算増につながった。

アメリカは京都議定書を批准していないが、環境を考えていないわけではない。アメリカには、京都議定書はヨーロッパ環境派イデオロギーの騙し討ちに遭ったという意識を持っている人が多い。まず1990年を基準にしたのが気に入らない。1990年はソ連の崩壊直前で、東側諸国の環境は非常に悪かった。ドイツなどは、もともとCO2排出量の非常に多い環境後進国である東ドイツを吸収しただけで削減目標値を簡単に達成できる。実際、今、CO2排出権取引で一番利益を上げているのは旧ソ連系。2番目に、環境対策で重要なのは原子力なのに、ヨーロッパの反原子力派が京都議定書の主流になっていて、クリーン開発メカニズムに原子力を含めないことを決めた。本当に環境を守るなら原子力を入れるべきなのに、それを入れない議定書になぜ日本が賛成するのか。中国やアメリカを議定書に参加させたいなら、反原子力をやめるべき。「原子力による炭酸ガス削減はカウントしない」というヨーロッパイデオロギーが主流の京都議定書はぶっ潰せというのが、アメリカの主張だ。

アメリカで環境対策の切り札として原子力が急速に支持を得たのは、元グリーンピースの共同設立者の一人パトリック・ムーアや、「ガイア理論」を提唱するイギリスの科学者ラブロックなど、今まで原子力に反対していた人たちが、「それ以外にない」と言い始めたことも大きい。彼らが原子力賛成に回ったのは影響力がある。真面目に環境を守りたいなら原子力をやる以外ないということで、フランスでも原子力に賛成する環境派が増えている。

一方、ドイツには反原発の集団が多く、環境先進国と言われるが、エネルギー政策には疑問が多い。シュレーダー元首相が石炭組合出身だから、ドイツの発電量の50%以上は石炭。しかも瀝青炭だけではなく、環境に悪い褐炭の方を余計焚いている。加えてシュレーダーの失敗は、風力発電の補助金の出し方を間違えたこと。風車をつくると発電の有無に拘らず風車手当が出るので、ドイツの農民は働かなくなった。そしてあちこちに1基ずつの風車ができ、その電気を電力会社に買わせたので、ドイツの電気代は日本に比べて高くなってしまった。先頃、首相がメルケルに代わったので、脱原子力政策の見直しは時間の問題だろう。

ドイツに加え、今苦悩しているのはイギリスだ。北海油田が急速に生産量を落としていて、あと2年くらいで売る石油はなくなる。イギリスはかつて、エネルギー問題を懸念して原子力に熱心だったが、北海油田が見つかってエネルギーの問題がなくなると勤労意欲を失った。その油田が尽きかけているのに、働かない習慣がついてしまい、イギリスは今苦悩している。

そして世界のエネルギー・環境問題の焦点は中国だ。三峡ダムを見てきたが、発電量は1820万kW。揚子江からの水量が豊富なので、福井県と新潟県の全原子力発電所の発電量を1つの水力発電所で賄っており、さらに増量も決めた。それでも焼け石に水。中国は大量の電力を必要としている。最近、中国は環境に目覚め、三峡ダム規模の水力発電所をあと2つ、原子力発電所も2030年までに50基つくるといっているが、まだ電気が足りない。中国で精密機器がつくれないのは停電があるから。発電量が足りないうえ、送電線の建設も追いつかない。

もう1つ注目はインド。インドのエネルギーは今は石炭だが、今後、原子力に力を入れようとしている。インドはもうすぐ人口で中国を抜き、世界人口の20%以上、5人に1人はインド人になる。京都議定書の第2ピリオドの焦点は環境問題に目覚めた中国だが、第3ピリオドはインドが焦点。インドはまだ環境を考えてないが、世界一の大国となり、エネルギー消費も急増する国が環境問題にいつ目覚めるか。インドがどう動くかは世界の環境問題を左右する。

環境問題はアメリカ、ドイツ、イギリス、中国、インドが鍵を握っている。日本のマスコミはデンマークの風力を称賛したりしているが、国の規模や地勢が違いすぎるデンマークの例は世界に応用できない。

では日本はどうするか。日本は2002年にエネルギー政策基本法ができ、この中で3つのことを言った。1つは「安定供給の確保」、2番目は「環境への適合」、環境に優しいエネルギーを使う。その2つが満たされた上での「市場原理の活用」であるのに、「三大原則」と誤解されている。自由化で新しく加わった電力会社は、化石燃料を使って環境を悪くしている。これはエネルギー政策基本法の精神に反している。

しかし、2003年のエネルギー基本計画では基幹電源は原子力と明記された。2005年に閣議決定された原子力政策大綱では、「2030年以降も原子力を基幹電源とし総発電電力量の30─40%以上をめざす」、「核燃料サイクルを維持し第2再処理工場は2015年をめざして考える」、「2050年を目途に高速炉の商業化を行う」、という3つが決まった。従来の原子力長計と原子力政策大綱との大きな違いは、大綱は「閣議決定」となったこと。これで原子力基本計画と同じ位置づけになった。

もう1つ、停電が起きないことはありがたいという認識を人々が持ち始めた。中国は停電がひどく、産業がガタガタになっている。アメリカは年間120分程度止まるが、日本は約8分。停電が起きないことでは日本は世界一。それが評価されるようになり、電力会社の位置づけは、国民とともに存在し国を繁栄させる基幹産業であるという認識が深まってきた。

もちろん環境に対しても電力会社の責任は大きい。原子力の特徴は、環境に優しいことと石油価格に左右されないこと。原子力をやっている限り燃料調達は比較的安定しており、原子力は環境と価格安定という2つの理由で重要性を増している。だからこそ電力会社はあくまでも安全を基本に、積極的に国民と接点を持ち、国民に身近な基幹産業として邁進していただきたい。■


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