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郡嶌 孝・同志社大学経済学部教授

2005.09.01
「京都発、Stop the 温暖化と日本人の心」

郡嶌 孝・同志社大学経済学部教授

ぐんじま たかし
同志社大学経済学部教授(公共経済学;環境経済学)
1947年福岡県生まれ。同志社大学大学院経済学研究科博士課程修了。同志社大学助教授を経て、84年教授。94〜96年経済学部長。この間、米国メリーランド大学客員研究員なども務めた。循環経済におけるインダストリアル・メタボリズム、持続可能な発展へのライフスタイル・アプローチなど研究。著書「文明と環境」「ポイ捨て文化への挑戦」「次代を拓く経済政策」「リサイクル時代のごみ行政」など。「京都府環境審議会企画部会温暖化対策条例検討専門委員会」委員長、「京都府地球温暖化防止活動推進センター」理事長(特定非営利活動法人京都地球温暖化防止府民会議代表)、「環境省NGO/NPO・企業環境政策提言推進委員会」委員も務める。


京都府地球温暖化防止活動推進センター>>

「環境にやさしい」──環境問題を考えるときによく使われる言葉だが、「やさしい」は、昔の大和言葉で「やせる」。もともと日本人のやさしさは、積極的に何かをするというより、むしろ他人に迷惑をかけない。鴨長明も吉田兼好も、苫屋、つまり粗末な小屋に仮住まいをして自然に溶け込んだ。人や自然に気遣い、自覚的な断念、自制をする。そういうことばかりしていると「やせる」。それが日本人の心の根本にある、本来のやさしさではないか。

戦後、日本人は西洋化したと言われるが、西洋人みたいに自発的かというと、これまた日本人特有のものがある。ある人は、日本人が環境問題に取り組むとき、3つの特徴があると言う。1つは、日本社会では出る杭は打たれる。だから自分一人ではやらず、周りを気にしながら行動する。2つ目に、緊急時には日本人は一生懸命で熱心だが、温暖化という日常的なものには、うまく取り組めない。3番目は、自分の行動を社会的に評価してもらえないとやらない。つまり環境問題について、「一人の人間(個人)として何をしたらいいかわからない」「日常的に効果を実感できない」「評価してもらえない」という、3つのナイがあり、なかなか自主的な取り組みにならない。

私は環境意識は4段階に分けられると思う。1つは環境に全く無関心な人たち。2つ目は頭でっかち派。環境問題の重要さは理解しているし知識もあるが、行動に結びつかない。3番目が家計簿優先派。環境に取り組むことが「得」だという実利派だ。4つ目が、エコライフ派。お金ではなく、将来の子供や孫のことを考えて、できることからやっていくという、非常に自覚的な、本来の日本人的なやさしさを持った人たち。今の日本人は、無関心派は減ってきたが、頭でっかち派と実利派が中核をなしているのではないか。

得をすればやるのは動機が不純で、「ダーティグリーン」と呼ばれたりする。だけど、結果的には環境を守るから、結果オーライ。多くの人が、純粋なエコライフ派「ハードグリーン」にはなり得ない。ハードグリーンは、ドイツでは国民の10〜15%。日本は5%程度。あとの95%をどう引き上げるかが非常に重要だ。そのために、環境行動の意味を実利に結びつく形で評価してもいい。どんな形でも、行動を起こさせる方向に持っていかないといけない。

実利派と言えば関西人を思い浮かべるが、関西人は意外とエコ派だと私は思っている。というのは、もともと関西人の商売には3つの特徴がある。1つは「才覚」。環境を制約条件と考えるか、ビジネスチャンスと捉える才覚を持つかどうか。2番目は「算用」。きっちり儲けを出すように行動する。3つ目が「始末」。その言葉どおり、あとのこと、末のことを始めに考える。関西人は始末するところは始末する。ええかっこしいで、ムダなお金を使うこともない。淀屋さんは淀屋橋をつくったし、道頓は道頓堀を掘ったし、使うところには使う社会貢献マインドを持った人が多い。しかも「後始末せぇ」とは言ってない。廃棄物が出てから何とかするのではなく、出ないようにする。「始末」は、ムダなものを発生させない、未然防止の知恵だ。

関西には、いい言葉がたくさん残っている。近江商人の、売り手よし、買い手よし、世間よしという「三方よし」に、地球よし、孫によしを加え、「五方よし」にすれば、今のCSR経営とか環境経営の基本になる。江戸時代から関西には環境を守る風土的な土壌があったのに、戦後の東京志向で、その心を忘れてきた。関西商人が関西へ戻り、改めて、なにわの商人(あきんど)の道を見直せばいい。環境対策と大上段に構えるより、始末の心を徹底する方が、わかりやすいし、動きやすい。

だから今一度、なにわの商人道なり、商家の家訓を見直してはどうか。家訓は、自分たちの顧客を大事にするよう教えている。「一見さんお断り」も悪くない。料亭では、下がってきたお膳で、何が残され何が食べられたかを見て、顧客情報としてインプットする。日々それを繰り返すことで、結果的に顧客管理ができ、サービスの質を上げていける。客の好みがわかるから、嫌いなものを残され、廃棄するというムダを避けられる。そういう合理的なシステムが、けっこう商売の中に組み込まれていた。家訓を現代的に見直すことが、身近な環境対策につながる。

京都議定書が発効して半年、徐々にではあるが、国や自治体の動きは活発化してきた。国は、都道府県ごとに地球温暖化防止活動推進センターや推進員制度を設けるのに加え、今春から「チーム・マイナス6%」という国民運動をスタート。個別に孤立した形で取り組んでいた人々の連携も始まった。仲間が見えてきたので、互いに励まし合い、情報交換しながらの取り組みが始まっている。

また京都府では今、私も関わり、地球温暖化対策条例の制定を進めている。国主導の、産業、運輸、民生という部門別の取り組みに加え、地域に熱心な人がいるなら、その人たちを中心に地域特性にあった形の取り組みを進めようと、部門別の対策を縦糸に、横糸として地域特性を生かしたフレームをつくっている。そして各部門の事業者と府民の連携。家庭から出るCO2は自動車や家電製品などが多いが、京都府では、府民が自動車や家電製品を買い換える際に、店頭でアドバイスをする、エコカーマイスターや省エネマイスターを設置するなど、より積極的な温暖化対策につながる仕組みをつくろうとしている。

そして温暖化防止にあたっては、企業の中でも電力会社の役割は大きい。関西電力は全国に比べCO2の排出係数が小さいことは非常に評価できる。ところがいくら関西電力が頑張っても、ユーザー企業が排出係数の高い電力会社から電気を買うと何もならない。安い電力であれば排出係数が高くても買うという形で自由化が進んでは困る。関西電力には引き続き、環境とコストの両面から電源のベストミックスを考えてほしい。自然エネルギーに対しても関西グリーン電力基金の形で、市民の活動を支援しているのは評価できるが、何と言っても原子力。原子力への風当たりは依然強いが、諸外国を見ても、フィンランドやアメリカが原子力を見直し始めた。CO2を出さない原子力抜きにベストミックスは考えられないので、どう国民的な理解を進めていくかは非常に重要だ。ドイツでは9月に選挙が行われるが、政権交代の可能性が高い。CDUのメルケル党首は、早くも現状の脱原子力政策の見直しを公約している。

日本では環境先進国はドイツという認識が強いが、実はトップランナーは北欧諸国。とりわけデンマーク、スウェーデン、オランダで、ドイツはその次のランク。日本にすれば、国の規模で見れば、参考にするのはドイツとなる。しかし、そのドイツは脱原子力を選択したとは言えフランスから買電し、また、風力発電は増えているが、風の吹かない地域に補助金目当てで建てられて、発電量は増えてない。リサイクルも盛んだが、日本人のように自分できちんと分別することは、ほとんどない。それが本当に環境意識の高い国なのか。日本からの環境視察団は多いが、ドイツは「環境」が「観光」になっている。もっと我々は、スイスやデンマークなど優れた環境政策を行っている国に目を向けてはどうか。国としては規模が違うにしても、地域としては適切な事例にもなり得る。

自然との共生はなかなか難しく、いかに豊かさと環境を調和させるか。
今までは、くたばれGNPみたいに「効率」が悪者にされてきたが、実はそうじゃない。「ムダ」「ムリ」「ムラ」を省いて、効率を高めていく方が、環境にやさしく、合理的。ムダを省かないとゴミが増えるし、ムリをすると安全性を欠き、ムラがあると品質は保証できない。品質と安全と環境を調和させるには、その3Mをどうベストミックスするか。最後に加えれば「ムサク」、何もしない、無策もダメ。振り返れば関西には、地球環境と共生する、優れた知恵も心もある。例えば京都なら、仏教の「足るを知る」という教えを生かし、心の満足を提案するとか、大阪は、なにわ商人の商売道なり家訓の中から、現代に生きるビジネス倫理を導き出せばいい。京都そして関西から、議定書誕生の地にふさわしい先導的な動きを起こしたい。■


関連資料

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