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小川 進・神戸大学大学院経営学研究科教授

2005.02.15
「ビジネスにおける信頼の構造――等身大からの関係づくり」

小川 進・神戸大学大学院経営学研究科教授


おがわ すすむ
神戸大学大学院経営学研究科教授(イノベーション管理;マーケティング) 1964年兵庫県生まれ。マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院博士課程修了。神戸大学助手、助教授、2003年より教授。イノベーション管理、マーケティング、流通システムなど研究。著書『稼ぐ仕組み』『ディマンド・チェーン経営』『ドクターオガワに会いに行こう─はじめてのマーケティング』など。

ホームページ>> http://www.b.kobe-u.ac.jp/ogawa2/

ビジネスの基本には「信頼」がある。
とりわけ日本の事業の仕組みは、まず従業員への信頼がベースになっている。アメリカでは、従業員は信用できない──能力が低いとか、嘘をつく、ごまかす、といった前提で業務が組み立てられている。

例えば、アメリカの小売店にPOS(Point Of Sales system)が導入された経緯は、1つはトレーニングが要らないこと。バーコードをスキャンするだけなので誰にでもできる。2つ目は嘘をつけない。友達だからと不当に安く売るようなことを防げる。一方、日本でPOSは、売れた商品を記録してマーケティングデータとして商品開発や店の在庫管理に役立てようという発想。日本人は、パートやアルバイトの人でもきちんと情報が提供されれば、正しい発注や在庫管理ができると考えているから、店頭でより緻密で高度な管理を実現している。

またコンビニには、加盟店を巡回し店舗運営を指導するフィールドカウンセラーがいるが、アメリカでのその役割はいわば警察官。ルールを破っていないか、マニュアルに則っているか、店員同士で喧嘩していないかなどの監視が役割だ。日本のセブン-イレブンがアメリカの店舗もサポートするようになってからは、アメリカでも店員の能力を伸ばすコーチやアドバイザーの役割に変え成果をあげているそうだが、そもそも従業員への考え方が、日米で全く違っていたのだ。

コンビニだけではない。社員を信頼し、その能力を発揮させる仕組みを持つ企業は、やっぱり強い。ユニクロを運営するファーストリテイリングは、入社2年目の社員をどんどん店長に登用している。2年目で何ができる? と思うかもしれないが、会長の柳井さんは「1年やってできないことは、ずっとできない」と断言。そうした社員への信頼が、ユニクロを再成長軌道に乗せている。

社員だけでなく取引先との関係も、基本は信頼だ。
相手が自分に不利なことをすると思えば、より多くの取引先を募って競わせ、最も安いところなり高機能なところを選ぶという方法をとる。あるいは取引量を分散させるのも手だが、納める方にすれば、少ない量になりコストアップにつながるかもしれない。複数社との取引はリスク分散のためであり、競わせるためではない。むしろ、互いにコストを削減して能力を高め、パートナーとして顧客に価値を提供しようとすれば、1社に絞る方がいいかもしれない。これも相手を信頼しているからできることだ。

セブン-イレブンの場合、菓子の卸は、北海道を除いて1社に絞っている。絞ったワケは、他の卸に比べ一番約束を守り嘘をつかないから。口約束であっても、やると言ったことはやる。一方、卸にとって創業当初のセブン-イレブンは店舗数もわずかで儲かる取引先ではなかったが、その卸会社は積極的に取引を望んだという。親会社がしっかりしているということもあったが、何より創業準備室へ行ったとき、新会社のビジョンや戦略について誰に訊いても同じ答えが返ってきた。質問に対する答えが社員によってバラバラでは、その企業への信頼は生まれない。同じ答え、同じ価値観なら大丈夫だと。つまり単にビジネスチャンスがあるからというのではなく、互いに信頼に足る相手なのかという判断が効いていた。

嘘をつかないとか、社員の誰もが企業理念や方針を共有していることは、当たり前のようでいて、難しい。大半の会社ができずにいるなかで、それをきちんと実行する。そんな会社が、多くの信頼を集め、平均以上の業績を上げたり、社会で存在感を示していると言えるだろう。

逆に信頼を失うのは、この会社ならそういう対応をしないだろうという前提が覆されたとき。企業にすれば期待を裏切らないことが重要になる。これはマーケティングでいう顧客満足の話。顧客満足度調査は、5段階評価で言えば、3が「普通」、5が「非常に満足」、1が「かなり不満」という形で、要は「3」だ。「3」が、前提としての企業への期待値を意味する。

人それぞれ期待値が違うなかで、企業として「3」の基準をいかに設定するか、は非常に重要な問題だ。あれもこれもしてもらえるとなれば、前提としての「3」のレベルが高くなりすぎ、少々のことで満足は得られなくなる。

大事なことは「等身大」の姿の開示。等身大を、企業としての「3」の基準に設定すべきだ。良いイメージで見られたいからと、不利な情報を隠したり、広告宣伝で背伸びをしたりすると、過大な期待を生むことになり、ひいては顧客を裏切ることになる。仮に顧客が抱く企業イメージが虚像なら、それに合うよう自らを成長させればいいし、できないなら改めて等身大の姿を開示すればいい。

そして、等身大でありながら、今日よりは明日、明後日と成長し続ける姿をいかに見せ続けられるか。成長し続ける姿を見せることで、認知され、理解され、満足されて、ファンになるというような、顧客満足の良循環が起きるようになる。信頼関係も同じ構造と考えていいだろう。

ただ、等身大は結構難しい。企業自身が考える等身大と顧客や取引先が考えるその企業に対する等身大は違うかもしれない。大事なことは、違うかもしれない、という認識のもとに、常に社会に開かれた存在で居続けること、対話を続けることだ。

日本には「塩梅(あんばい)」とか、「折り合いをつける」という発想がある。企業と顧客との間で、前提となる「等身大」の姿を摺り合わせていく──対話をしながら折り合いをつけていくことこそ、大事だと思っている。■


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