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伴 金美・大阪大学大学院経済学研究科教授

2004.12.20
「原油高騰は日本経済にどのような影響を与えるか」

伴 金美・大阪大学大学院経済学研究科教授


ばん かねみ
大阪大学大学院経済学研究科教授(計量経済学)
1949年愛知県生まれ。名古屋大学経済学部卒、同大学院修士課程修了。経済学博士(大阪大学)。京都大学助手、広島大学講師、筑波大学社会工学系講師を経て、82年大阪大学経済学部助教授。のち教授。共著「TSPによる経済データの分析」「講座ミクロ統計分析:ミクロ統計の集計解析と技法」、分担執筆「環境政策の基礎」「日本経済の構造変化と経済予測」など。(財)関西社会経済研究所客員主任研究員、内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官なども務める。

ホームページ>> http://ban.econ.osaka-u.ac.jp/kban/

世界的な原油価格の高騰が続き、産業経済や社会生活への影響が懸念されているが、日本に関して言えば大きな影響はないと考えている。

我が国の原油輸入価格の動きを見ると、1990年代は1バレル15〜20ドルで推移したが、1999年暮れから上昇に転じ、2000年には30ドルを突破した。その後ITバブル崩壊で一時20ドル前半に戻したものの再び上がり、今年9月には40ドルを超えている。従来25〜30ドルとされてきたOPEC基準バスケットの価格目標も、最近では35ドル前後がベースとなっていると思われる。

ただ、もともと原油価格は、十数年周期で高低を繰り返している。歴史的に見れば、1973年の第1次オイルショックを機に、80年代前半まで高い時代が続いたが、1985年の暴落から1999年までは低価格で推移している。それに対して、2000年以降は高い時代に入ったわけで、この傾向は2010年頃まで続くだろう。

こうした価格変動の波が起きるのは、世界の景気循環と原油価格が密接に関係しているからだ。言い換えれば、現在の原油価格の高騰は、世界的に景気がいいからこそ起きたもの。中国をはじめ途上国の経済が伸び、原油需要の増大が価格を押し上げた。逆に言えば、原油価格が下がり始めたら景気後退が始まったと見ていい。「景気は上向き、原油は安く」というのは虫が良すぎる話だ。

それでもこれだけ高くなると、各国経済に影響が出てくる。アメリカではガソリン価格が2倍以上に急騰。完全な車社会で、代替できる公共交通が少ないため、大きな影響を受けている。イギリスでも2000年に、かつての日本のトイレットペーパー騒動のように、パン屋からパンがなくなる騒動が起きた。

ところが日本では、今のところ、そうした兆しはあまりない。市民生活への影響を見ても、確かに灯油はかなり値上がりしていて、石油ストーブを使っている人はこの冬、大変そうだが、ガソリンはさほどでもない。これは一つには税金の違い。灯油には課税がないのに対し、ガソリン代はもともと半分くらいが税金なので、原油高騰の影響が出にくい。しかも消費税が内税表示に変わっているから、少し高く見えるけど、実質的には1年前と大差ない。アメリカのガソリン高騰は、税金がほんの10%くらいだから原油高騰がモロに響いた形だ。

一方、原材料費等の高騰が懸念される産業界だが、こちらも日本ではさほど影響は見られない。強いて厳しい分野を挙げれば、輸送業。競争が激化するなかで原油高騰のあおりを受けているから、このコスト高をどう乗り切るか、頭の痛い問題だろう。ただ輸送業は、膨大なエネルギーを消費し、CO2排出が多い分野。環境保全の観点から考えれば、今回の原油高は輸送のモーダルシフトを進めるチャンスとも言える。

また厳しいと思われがちな鉄鋼業は、世界的な好景気で日本でも中国でも鉄がどんどん売れ、逆に業績を伸ばしている。日本製の鉄は品質がいいから、高騰分を価格に転嫁しても売れるのだ。さらにその鉄を買っている自動車メーカーも、ガソリン高騰で燃費の良い日本車への買い換え需要が進むアメリカ市場などで販売シェアを伸ばし、原材料費上昇を吸収。これまた業績を伸ばしている。ただ、今月、新日鐵は原料炭価格交渉において一気に倍の1トン120ドルで妥結したが、来年度そのコスト増をユーザー側に求めていく場面では鉄鋼業界は苦労するのではないか。

もう一つ、日本が比較的平然としていられる要因は、「代替できるもの」を持っているからだ。仮にガソリンが高くなっても、車をやめ、電車やバスに代えればいい。代替できるものがあれば、「高ければ買わない、使わない」という選択肢をとれるから、少々のことではビクともしない。

70年代はそうではなかった。当時は「石油を絶たれたら終わり」と思ってパニックが起きた。でもあの時に学習し、原油が値上がりしたからといってモノがなくなるわけではないし、「上がったものはいつか下がる」とわかり、危機的な状況をやり過ごす術を身につけた。なによりエネルギー源として、原子力を中心に代替エネルギー開発を進めた結果である。

代替エネルギーは原油高の抑止力としても働く。
今回も、このまま原油価格が天井知らずに上がり続けることはあり得ない。そんなことになれば、必ず次の石油代替エネルギーが現れ、OPECは自分で自分の首を絞めることになる。彼ら自身もそれは認識しているから「代替エネルギーが生きない程度」に上限を押さえ込むはずで、しばらくは35ドルくらいで推移する。となれば、今の日本経済は十分対応できるだけの余力を持っていて、エネルギー価格が経済成長率を抑えることにはならないと思う。

従って日本は決して慌てる必要はないが、今後も「代わり得るもの」を持つ努力は続ける必要があり、引き続きエネルギー源の多様化は不可欠だ。とりわけ国際情勢にあまり左右されないものを持つべきで、その意味で原子力は、準国産エネルギー源として貴重な資源と言えよう。

先頃、原子力は再処理路線の継続が決まったが、少し前まではコスト高を理由に再処理をやめようという話が出ていた。しかしやめてしまうと、資源のない日本はエネルギー問題で諸外国に首根っこを押さえられてしまう。

原子力に限らず今、日本に必要なのは、エネルギー確保で交渉力を持つことであり、それが少々高くついても、結局は自分の身を守ることにもなると認識すること。特にエネルギー政策のような長期的視野で考えるべきものを、短期的な損得勘定で決めると、取り返しのつかない過ちを犯すことになる。

パニックは忘れた頃にやってくる──今回の原油高では、30余年前のオイルショックを日本人がまだ記憶しているから、大きな影響を受けずに済んでいる。しかし世代交代が行われたときにどうなるか。世代を超えて、学習効果を持続させていくのは難しい。エネルギー問題をはじめ、非常に長期のコミットメントが必要なものに対し、どう合意形成を行い、守り続けていくか。それは、国にとっても企業にとっても極めて重要なテーマであることは間違いない。■


関連資料

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