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窪山 哲雄・(株)ザ・ウィンザー・ホテルズ インターナショナル社長窪山 哲雄・(株)ザ・ウィンザー・ホテルズ インターナショナル社長

2004.12.01
「サービス哲学──顧客満足とホスピタリティ精神」


くぼやま てつお
(株)ザ・ウィンザー・ホテルズ インターナショナル社長
1948年福岡市生まれ。慶応義塾大学法学部卒、ロンドン大学経済学部大学院修了、コーネル大学ホテル経営学部卒。帝国ホテル、ウォルドルフ・アストリア(ニューヨーク)、ホテルニューオータニ、東京ベイヒルトンなどを経て、長崎・ハウステンボス内のホテルを総括・運営する(株)NHVホテルズインターナショナル(現・ハウステンボスホテル事業部)代表取締役社長。97年(株)ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル代表取締役社長。98年北海道拓殖銀行の破綻により閉鎖された「ザ・ウィンザーホテル洞爺」の再生に取り組み、2002年再開。テレビドラマ化された石ノ森章太郎の漫画「HOTEL」に登場する東堂マネジャーのモデル。著書に「サービス哲学」「ヒューマンウェアのホテル学」「プロジェクト・ホテル」「ホテルほど素敵な商売はない」など。

ザ・ウィンザーホテル洞爺ホームページ>> http://www.windsor-hotels.co.jp

ホテルには3つの付加価値がある。設備の充実や部屋の広さなどのハードウエア、サービス内容や質といったソフトウエア──どちらも大事だが、お客さまにとって一番思い出に残るのは、「あの時あの人がこうしてくれた」という人と人のふれあい、「ヒューマンウエア」だ。

長年ホテル業に携わってきて実感するのは、最近この精神的な付加価値を求める人が増えてきているということだ。特にリゾートホテルでは、単に型どおりのサービスにとどまらず、従業員から声をかけられることへの期待感は大きい。その背景にはコンピュータ化の進展があるように思う。一時「アリガトウゴザイマシタ」と喋る自動販売機が登場したが、ほどなく消えていったように、時計もデジタルからアナログへの回帰が進んでいるように、また、会話が電話やインターネットで行われるバーチャルリアリティの世界が広がる中で、人はデジタルの味気なさを体験し、もう一度"ナマ"のふれあいを求めるようになったのではないかと思うのである。

ふれあい──それは我々の仕事でいえば、今まで「サービス」という言葉で一括りにされてきたものだが、今新たに「ホスピタリティ」という言葉に概念化されてきているものである。

いわば「サービス」は、普遍的に誰にでも提供されるものを指し、ファストフード店やファミリーレストランなどでの画一化されたサービスに象徴されるように、提供する側にとって都合がいい。一方「ホスピタリティ」は、逆にサービスする側が相手に合わせる。子供たちには目線を下げて話しかける。お年寄りなら身体を気遣い、さり気なく手を貸す。相手が何を求めているかを考え、一人ひとりのニーズに受け応えしていくのが「ホスピタリティ」である。

ウィンザーでは、「ホスピタリティ」の部分を重視している。新人教育もマニュアルからは入らない。サービスの手順をあれこれ教えるより、まず「自分ならどうしてあげたいか」ということを考えさせる。それこそが即戦力化につなげる秘訣。マニュアル教育は覚えるのに時間がかかるうえ、下手をすると型にはまってしまい、自分の意志を入れられなくなるという怖さがある。

世阿弥の『花伝書』にある「守・破・離」──最初は規範となる基本の型を身につけ(守)、それを崩し(破)、新しい自分のスタイルを築く(離)わけだが、最初に守るべきものはマニュアルではない。"相手の立場に立つ優しさ"こそが原点だと私は思う。それを認識させたうえで、その優しさを発揮するにはどうすればいいかを各自に考えさせる。そうすれば自然に目線も相手に合わせるようになる。

私のサービス哲学は、相手がどうして欲しいのかを考え、それに合わせるところから始まる。精神を重視しさえすれば、それをどう表現するかは各自が考えればいい。人によって表現の「形」が違っても「心」が伝わればいい。例えばこれまで一流とされるホテルでは方言はタブーだったけれど、お客さまにとってそれは最大の癒しとなり得るポイント。喜ばれるなら方言で対応すればいい。サービスも画一化の時代から、ホスピタリティ精神に基づいた個性の表現の時代へと移りつつある。

その際、一番大事なものは「プロ意識」だ。相手に合わせた対応をすると、限りなくアマチュアに見られてしまう恐れがあるが、相手に合わせるという対応の原点にはプロ意識が必要なのだ。「心技体」という言葉があるが、「心」のサービスには、それを支える「技」がないといけない。技術のないところに優しさなんて生まれない。だから技術は徹底的に叩き込む。心はあくまで穏やかに、母性の優しさを持って接しながら、技術は決して手を抜かない。さらにプロとしては、「体」──体裁を考える。ホテルの空気(アンビエンス)を上質に保ち、優雅に振る舞うことがウィンザー・ウェイ。

サービスの技術には、皿の出し方、下げ方から、相手に恥をかかせない技術、客に応じて最適な心配りをする技術などいろいろある。サービスに臨む際に「心技体」は一体化するのが理想だが、間違っていけないのはその優先順位だ。「心」つまり哲学が無いままに技術が先行すると慇懃無礼になってしまう。「ホスピタリティ」を感じられなくなるとお客さまは離れてしまうわけで、全てのサービス、人間のふれあいに関わることには哲学がないと成り立たない。

一方、人間のふれあいを希求する気持ちは、苦情の暴走も生んでいる。「あのとき挨拶がなかった」と、一年も前のことを突然抗議されたり、とにかく容赦がない。「お客さまは神さま」という言葉もあったが、金を払えば何をしてもいいとは思わない。「お客さまも人間、我々も人間」という毅然とした勇気は持ちたいと思う。しかしサービス業は常にサンドペーパーをかけられてないと伸びないという側面もある。夜郎自大になってはいけないのだ。

サービス業は、人間が人間にサービスをする。だから従業員には、その心、哲学を伝えていくことが大事だ。CS(Customer Satisfaction=顧客満足)とES(Employee Satisfaction=従業員満足)はイコールで結ばれる。従業員がトップと同じ志を持ってお客さまに接するには、「企業が従業員を愛する」ことが必要だ。愛された従業員は必ずお客さまを愛するようになる。企業は、お客さまと直に接する従業員の満足を考えることが非常に重要である。従業員の満足度をいかに高めるかという課題は、サービス業にとって死活問題ともなり得るのである。

名前を覚えるとか、声をかけるとか、大切なことは相手の存在を認識するということだ。マリー・ローランサンは「死んだ女より悲しい存在は、忘れられた女だ」と言ったが、そのとおりだと思う。「忘れられた従業員」をつくらないことが大事だ。表にいる者は裏方の苦労を知る。上の者は下の存在を認識し、下の者は上の要望を理解する。互いにスクランブルドエッグ状態にすることで、共に働く土台ができてくる。細かい仕組みは後でいい。まず耕してからでないと、水はしみ込んでいかない。

「ホテル」―――それはお客さまにとって非日常空間であり、公共空間である。公共の場である以上、他人との関わりは避けて通れない。だからリゾートでは視野を思い切り広げて空間を楽しみ、人をウォッチして全てを受け入れる。のんびりと自由に、他人を意識しながら物事を好意的に見ることが、ホテルの楽しみ方の醍醐味だ。■


関連資料

「ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ」に見るサービス 関連図書 「ホスピタリティ」を読み解く13冊


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