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奥出 直人・慶應義塾大学教授

2004.11.01
「もう一つの幸せ──自由化時代の生活ユーティリティサービス」

奥出 直人・慶應義塾大学教授


おくで なおひと
慶応義塾大学環境情報学部教授(文化人類学;メディア環境・文化史)
1954年兵庫県生まれ。慶応義塾大学文学部社会学科卒、ジョージ・ワシントン大学アメリカ研究科博士課程修了。Ph.D.。ジョージ・ワシントン大学助手、筑波大学非常勤講師、日本女子大学専任講師などを経て、1990年慶応義塾大学助教授、のち教授。株式会社オプティマ代表も務める。関西電力「情報住宅プロジェクト」を推進。著書「アメリカンホームの文化史」「物書きがコンピュータに出会うとき」「思考のエンジン」「トランスナショナルアメリカ」など。

研究室>> http://www.ok.sfc.keio.ac.jp/2004spring/index.html
株式会社オプティマ>> http://www.optima21.com/

3年後、僕らの暮らしは大きく変わることになる。
「情報住宅」が登場するからだ。僕は今、関西電力と情報住宅プロジェクトを進めている。

なぜ、電力会社なのか? 根幹にあるのは「光ファイバー」だ。
光ファイバーがサービスとして提供されたときの日本社会はすごいことになる。10年ほど前、光ファイバービジネスについて集中的に考えた時期があった。大きな可能性を秘めた光ファィバーの敷設を電力会社が積極的に進めていることを知り、通信インフラとしての光ファイバーでなく、「生活・社会インフラ」としての光ファイバーを考えられないかと思っていた。送電線と同様に光ファイバーを考えるのは、何とも言えないリアリティがある。これが1つ目のコンセプト。

2つ目のコンセプトは「プラットフォーム」という発想だ。NTTドコモや任天堂が成功した理由はまさしく「プラットフォーム」だ。つまり何にでも使えるプラットフォームが普及すれば、そこに載るものはWin-Winの関係になる。最初のプラットフォームは任天堂のゲーム、次がNTTドコモの携帯電話。その次のプラットフォームについて自動車やテレビも言われたが、住宅がプラットフォームになるのが自然な流れだ。

当時、光ファイバーはエンタテイメントに使うという話ばかりだった。つまり通信としての光ファイバーは電話線と同様にリビングに入れるという発想だ。そうではなく、僕らは水回りや電気と同じように家のすみずみに生活インフラとして光ファイバーを入れる発想だ。そうやって家全体を見ると多様なニーズ・可能性がある。

電気と同じように生活のすみずみにまで入って情報サービスを行うのは、ビジネスとしても面白いし、社会的ニーズもある。家をプラットフォームに情報サービスを行うことは無理がない。そして、このサービスに適しているのは現在でも電気というユーティリティを提供している電力会社だ。

情報住宅も、コンピュータから発想すると自動制御のオートマティック、人間性を阻害するイメージがあるし、実際そうつくってしまう。しかし電気事業の延長線上、つまり電力会社が家庭に行ってきたサービスと同様に情報サービスを考えると、生活を楽しく豊かにするとか気持ちよくするイメージになる。

1985年に通信が自由化され、2000年には電力自由化も始まった。となると電力と情報の相乗作用として、エネルギーと情報による生活支援サービスが考えられる。そこでオール電化と同様に「情報住宅」というコンセプトをつくった。

情報住宅――それは情報家電の容れ物ではない。
冷蔵庫や洗濯機をつなぐだけなら住宅はただの容れ物だけど、配管、窓枠など家の建築部材にセンサーが入ってネットワークサービスが行われたときの付加価値はすごく大きい。家中で情報サービスを行う一部として、家電も入るという形。いわば「リビングinコンピュータ」、コンピュータの中に住む。

大事なことは機能・ファンクションでなく、ユーティリティという概念だ。新しいものが登場すると、みんな何ができるかと機能ばかり考えがちだけど、できるだけでは何もならない。いくら高機能な機器があっても、人間は自分ではなかなか使わない。体温も血圧も測ればわかるけど普段は測らない。だったら、家自体がセンサーとなって自動的に測るようにすればいい。

機能で言えば既に多様な技術がある。ヘルスケア分野では、血圧計や体重計、動き検知センサーもある。だけど、それらはプラットフォームがないので、バラバラ。たとえ使っても個々別々の機能しか発揮できない。いろんな機器をプラットフォームに載せれば、組み合わせていろんなサービスを提供できるようになる。使う側は、プラットフォームと一つ契約するだけで、自分にカスタマイズしたものをいくらでも選べる。

例えば、毎日毎日、体重や体温、血圧などの健康データをひたすらためておいて、調子が悪くなったとき役立てる。あるいは、寒い日に家に帰ると部屋が暖まっているとか、天気の良い朝は窓を開けてくれるとか、疲れてるときは癒し系の音楽が流れ照明が柔らかくなるとか。要するに、家が人間を「ケア」する。ケアのサービスに特化する。となるとケアしてくれるものは部材とか水回り機器、空調・照明など。洗濯機をネットワークでつないでもそんなに嬉しくはならないけど、窓が動いたり照明が変わったり家が健康状態をセンシングしてくれたらすごく嬉しい。それは情報家電とはちょっと違う。

人間にとっての幸せは時代によって変わる。19世紀後半から20世紀初頭、人間の幸せは雨露をしのぐことであり、公衆衛生という概念が出て、下水の整備などが進んだ。20世紀半ば以降は家事労働からの解放。洗濯機も掃除機も白モノ家電はすべて労働からの解放であり、所有の喜び。21世紀にはそれは当たり前になり、今の人たちは生き甲斐・自己実現など、マズローの最後の五段階目の欲求に入っている。情報住宅はそれを叶える家だ。

基本コンセプトは、電力サービスのやり方で情報サービスを行うこと。後は現場のアイデア次第。ゴールは、コンセントを入れれば電力サービスを受けられるように、高付加価値の情報サービスを受けられること。それが自在にできる情報配電盤、情報ネットワークの提供を、3年後くらいに実現したい。

電力会社はもとはコンシューマサービスの会社。文明開化の頃は大阪電燈・京都電燈として、家庭に電気を届けていった。そのときの文化的衝撃度。なんて明るくなったんだ、と。それに匹敵する新しい幸せを情報住宅で再現したい。だからもっと生活寄りのいろんなサービスメニューがあっていい。電気だけならメニューは限られるが、情報があれば拡がる。

電気のない生活はない。その電力の自由化とともに、関西電力は電力と情報、二本立ての「生活ユーティリティサービス会社」に変わるが、ユーティリティサービスとしてのビジネスモデルは、何ら変わらない。電気事業で培ったユーティリティサービスに情報を加え、オール電化と情報住宅という二本立ての生活ユーティリティサービス――これこそが、家電メーカーにも部材メーカーにもできない、光ファイバーを持つ電力会社ならではのサービスだ。■


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