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山本 昭二・関西学院大学商学部教授

2004.08.01
「顧客満足とサービス・マーケティング」

山本 昭二・関西学院大学商学部教授


やまもと しょうじ
関西学院大学商学部教授(マーケティング)
1959年兵庫県生まれ。関西学院大学商学部卒、神戸大学大学院経営学研究科商学専攻博士課程修了。関西学院大学専任講師、助教授を経て、99年教授。この間、95-97年デューク大学経営大学院客員研究員。著書「サービス・クォリティ-サービス品質の評価過程」、訳書「サービス経済下のマネジメント」、分担執筆「サービス・エコノミーの展開」「マーケティング・ネットワーク論」「日本型マーケティング」、論文「顧客参加とサービスオペレーション-顧客満足の2つの意味」「購買経験を利用した顧客維持戦略」「顧客満足モデルの発展」「顧客の関係性からの離脱過程とその維持」など。

ホームページ>> http://cvnweb.bai.ne.jp/~sjyama/

消費者運動はマーケティングの失敗だ――1960年代、アメリカで「不満足な客」が増え、消費者運動が大きなムーブメントになるなかで、マーケティングの成否を測る物差しは売上でなく「顧客満足度」だ、という考え方が強く意識されるようになった。これが第1次顧客満足時代であり、第2次は80年代以降。この時期には、顧客との関係性を重要視する「リレーションシップ・マーケティング」「CS経営」が喧伝され、顧客を維持することの重要性が強調された。その中でサービスは、顧客との相互作用によって、顧客を維持する能力が高く、差別化要因としても注目された。

ただ、顧客満足はあくまで経営資源の一要素。顧客さえ満足させれば企業は安泰かと言えば、そんなわけはなく、当然、利益を上げなければ成り立たない。だから成功しているホテルなど、単にアウトプットとしての顧客満足を金科玉条にするのではなく、それを生み出すための品質の管理――プロセスを含めた「サービス・クォリティ」の維持に腐心している。この「品質と満足のつながり」を経営のなかで意識することが非常に大事だ。

サービス品質を顧客満足につなげるにはいくつかの「架け橋」がある。一つはターゲット顧客の「クチコミ」。クチコミによる評判がCSに効きそうということで、企業はパブリシティなどに力を入れている。もう一つは苦情が起きた際の「リカバリー行動」で、企業はリカバリー行動を通じて顧客維持を図っている。

誤解されると困るのは、CSは特定ブランドを消費しないと発生しない。つまり買わない人にはCSは起きないわけで、買わない人にいくらCS経営をアピールしても仕方ない。むしろサービスをどう実践していくか。とりわけ生産-消費が同時発生するサービスでは、サービスを提供する仕組み――「サービス・オペレーション」が非常に大事。サービス業にとってのオペレーション開発は製造業にとっての製品開発と同じで、いかにイノベーティブな提供システムをつくるか、がカギになる。

これは業種によってかなり違う。ホテルや鉄道など、客が施設を利用しに来る業種の場合、直接接触する機会も多いから、客の声を聴きながらオペレーションを改善しサービス品質を上げていくことができる。一方、通信会社のような、顧客と接する機会の少ないサービス業の場合は、いかに接触面を確保するか。もし不満足が発生してもそれを知る方法もなく、スイッチングが起きてしまう。現にアメリカの長距離電話市場など非常に激しいスイッチングが起きており、企業は離脱候補者に割引価格を提供したり、DMを打つなど、リレーションづくりを懸命にやっている。

実はスイッチングは、顧客にとっても必ずしも望ましいことではない。いわゆる「スイッチングコスト」がかかるからだ。例えば電力からガスに代えようとすれば、設備から配線配管まで、物理的に大きなコストがかかる。あるいはスイッチングによってサービス担当者が代わると、新担当者に一から説明しないといけないような場合には、心理的コストも大きい。とりわけ品質の評価が難しい業種──行きつけの美容院とか病院、銀行などは、スイッチングコストが極めて高く、単に多少価格が安いだけでは、多くの客は動かない。

スイッチングが起きるのは、苦情の累積や他社の画期的な新製品の登場。特に苦情では、顧客は一度のトラブルは見逃してくれるが、二度あることは三度あるわけで、二回続くと許してはくれない。ただし、使い慣れて満足体験を繰り返すと、それが「貯金」になり、多少の失敗は許してくれる。だから企業としては、いかに満足体験を積み上げ、スイッチングコストを高くするかを突き詰めていく以外にない。

ではどうやって満足体験を積み上げるか。顧客満足には期待感が大きく影響していて、「実現値−期待値=顧客満足」。「実現値」<「期待値」は当然ダメで、「実現値」=「期待値」もダメ。「実現値」>「期待値」でないと高い満足は得られない。購買意欲を喚起し、なおかつ満足を繰り返してもらうには、「期待値」をどこに設定するかが重要だ。業界標準とどの程度乖離を持たせるか。もちろん自社の実現値が業界標準に達していない場合は論外だが、そうでない場合、業界標準と実現値の間のどこに設定するかは、重要な競争戦略上の意思決定になる。

ただし期待値はある程度形成されると、そこで「高止まり」してしまうから、常に満足させ続けるのはかなり大変だ。特に人的接触や顧客が機器や設備を利用する場面が発生するサービス業の場合に、顧客とのインターフェイスが固定されてしまうと製造業と比べて品質改良や新製品の投入にも時間が掛かる。値段をいきなり半額とか3分の1に下げても、喜んでもらえるのは一度だけ。「実現値」>「期待値」を維持し続けるのは並大抵ではない。

そこで注目されるのが従業員だ。結局、顧客を満足させるのは、一人一人の従業員。彼らを、顧客満足を高める活動にどう巻き込むか。今までは従業員に対し、お客さんが満足するまで、とにかく一生懸命働けと犠牲を強いてきた企業も多かった。だけどこんなやり方は長続きするはずがない。自分が仕事をしていて楽しくないのに、お客さんを楽しまそうなんて、根本的に無理がある。

いわば「顧客第二主義」。一番目は従業員という考え方もある。例えばディズニーランドでは、お客さんは「ゲスト」、従業員は単なるアルバイトでなく、エンターテイメントを提供する重要な「キャスト」として扱っている。お客さんに笑顔でいてもらおうと思ったら、まずは従業員が楽しく、いきいきと働けるようにすることが大事だ。それには、フラットな組織をつくって現場に権限を与える。あるいは頭数で人を雇うのではなく、選抜する。少数精鋭にして、一人何役もこなせるプロフェッショナルとして教育すればいい。

選ぶと言えば、実はお客さんも選ばないといけない。どういう顧客をターゲットにするか、絞り込む必要がある。これは全ての人がお客さんという公益企業では難しいが、もう少しセグメントごとに差別化されたオペレーションを考えてもいい。

最後に電力会社のサービスに触れると、電力の場合、停電しないとか、電圧が安定しているとか、品質の物差しが比較的はっきりしているように思われている。だけどそれは物質的なクォリティ。電力会社が提供するサービス品質とは何か。安全な生活なのか、安心できるエネルギー源なのか。あるいは何を顧客満足のアウトプットとするのか。苦情を減らしたいのか、将来の電力需要を大きくしたいのか――それらを自ら精査しておかないと、顧客満足は掛け声だけで終わってしまう。

とりわけ電力会社にとって安定供給は非常に重要だが、それは、やって当たり前。そこに何をプラスαできるかが大事だ。サービス品質として競合商品との間でどういう違いをつけられるか。それがどんな満足を生み出すのか。東京の人が関西へ来て、東京電力とは全く違う関西電力のサービスに接して感動するほど驚けば、これはすごい。「実現値」>「期待値」の差はものすごく大きくなると思うが、どうだろうか。■


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