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内藤 正久・日本エネルギー経済研究所理事長

2004.07.15
「どうなる? 原油高騰と日本のエネルギー戦略」

内藤 正久・日本エネルギー経済研究所理事長


ないとう まさひさ
財団法人日本エネルギー経済研究所理事長
1938年生まれ。東京大学法学部卒。通商産業省入省。大臣官房総務審議官、貿易局長、基礎産業局長、大臣官房長、産業政策局長など歴任。94年三和銀行常勤顧問、97年伊藤忠商事顧問、代表取締役副社長などを経て、2003年より現職。フランスの石油メジャー「エルフ・アキテーヌ」国際諮問委員、米国のデュポン社、モレックス社ボードメンバーも務める。

日本エネルギー経済研究所>> http://eneken.ieej.or.jp/

今回の原油価格高騰は、過去の石油危機とは性格が違う。過去はOPECの協調対抗があったり、湾岸戦争があったりしたが、今回はそういう特別な事情がなくて価格が上がった。いわば静かな理由による価格上昇と言える。

価格上昇の原因はいくつか挙げられる。まず1番目は、国際石油市場における需給のタイト化。世界的な経済拡大の中で需要が伸び、供給余力のない状態になってきた。それは、産油国側の財政支出が、資源の生産投資以外の部分に多く使われているという面が大きい。

2番目は、政治的リスク。特に私が注目しているのは、ナイジェリア、ベネズエラ、イラク、サウジアラビアの状況だ。この前WTIベースで42ドルを超えた時、10ドルのリスクプレミアムがあったわけだが、その内訳は「1ドルはナイジェリアの宗教抗争を含む民族抗争、2ドルはベネズエラの政治抗争、3ドルはイラクの混乱、4ドルはサウジの王政崩壊も囁かれるほどの社会不安に根ざしたテロ頻発」。つまり政治的リスクが価格高騰を促している。

3つ目は米国におけるガソリン需給の逼迫がガソリン価格を押し上げ、原油価格高騰につながっている点。米国の場合、州別に環境規制が違うため、州同士で製品を融通できないこともある。原因の4つ目は、投機資金の動き。国際資本市場に石油をめがけた投機資金が大量に流れ込んでいることがある。

以上、4つの要因により価格帯が上方シフトしたわけだが、一方で、供給国側の代替エネルギーへの転換防止の思惑と、世界景気の動向、石油の回収率向上への技術進歩という価格引き下げ要因があり、これらを考え併せると、石油の異常高値がいつまでも続くわけではない。当面は32ドルから38ドルくらいで推移するのではないか。

そういうなかで日本はどう動けばいいか。
まず、アジアのエネルギー戦略として、中国はじめアジア諸国との協調が必要だ。アジアは基本的に消費国。既に石油輸入国になっている中国は石油消費量で昨年、日本を超えた。インドネシアも石油輸入国になり、アジアで石油輸出国はマレーシアとブルネイだけ。大部分は中東等の産油国に頼らざるを得ない。アジアの需要が増え続ける中で、需要は大きいが伸びは小さい日本と、需要も伸びも大きい中国との協力、さらにアセアンやインドとの協力が、産油国に対するバーゲニングパワーを持つ。協調の必要性の最大のものは、「アジア・プレミアム」の排除だ。欧米に比べてアジアは、同じ油が1ドルないし2ドル高いのが現状だから、それをいかに世界と同じ価格にするか。アジア諸国が共同歩調をとることで、初めて産油国と交渉ができる。

同時に、消費国同士の協力関係を深める。例えば、中国やインドシナ半島の備蓄政策に、日本の知見を供与する。あるいは経済発展に電力供給が追いつかず停電が起きている状況下で、発電所建設への協力は喜ばれる。一方で、最近シベリアからの石油パイプラインの話が具体化してきたが、ここで日中が争うことは避けるべき。東シベリアから中国の大慶へ引こうとしていたものを、日本がひっくり返す形でナホトカルートを決めようとしているのは問題だ。むしろ、中国との協調を考えないといけない。但し主権国家としての原則は明確にすべき。つまり東シナ海のガス田開発など領土問題に絡むものは筋を通さないといけない。

それがアジアのエネルギー戦略の課題だが、次に世界の中で日本がどう動くか。ポイントは4つ。1つは、中東への対応。世界人口の2.5%の中東地域が、世界の石油埋蔵量の3分の2を保有しているわけで、中東の安定なくしてエネルギー供給の安定はない。しかもとりわけ今後も8割以上を中東に頼るアジアの安定は、中東の安定なくしてあり得ない。ニュージャージー州と同じ広さの地域で、3000年間争い続けている中東和平の問題に対し、日本はアメリカにくっつくだけでなく、公平な外交戦略を持つべきだ。イラク問題や中東民主化の動きに対しても常に注目し続ける必要がある。

2点目は、中東最大の石油埋蔵量を持ち、現在の生産量がロシアに次ぐサウジの情勢がどうなるのか。サウジ王政が徐々に劣化していくなかで、安定性が失われた最大の産油国・サウジに石油の安定生産が可能なのか。サウジ社会の安定性について注目していく必要がある。

3つ目はロシアへの対応。ロシアは最近ますます明確に、石油・天然ガス等のエネルギー資源を外交カードに使おうとしている。彼らと議論をすると、消費国の日本はエナジーセキュリティと言えば、デマンドセキュリティばかり考えるが、自分たちはサプライセキュリティ、歳入安定確保なんだと言う。同じようなことを中東産油国の首脳も言っている。需給に余裕がある時には消費国が産油国に経済制裁を課すことができるが、供給がタイトになったら彼らは石油を武器に使ってやるんだと言っている。石油が政治戦略商品であることを忘れ、金さえ出せば買えるコモディティだと思っている日本人の意識は、問題があると思う。

4点目。日本のエネルギー政策立案上、同じく資源小国であるフランスの政策をもっと真剣に学ぶべき。日本は1934年にフランスに習って石油業法をつくったが、70年後の今、日仏を比較すると、フランスには世界第4位のオイルメジャーがあり、日本ではそれを育てられなかった。日本の官民の分裂というか、情報交流さえ上手くいかないやり方とは対照的な、政府の一貫した戦略としてフランスのやり方を見習うべきだろう。

最後に日本のエネルギー政策として、石油以外の他の一次エネルギー源に目を向ければ、私は最も大事なのは原子力だと思う。資源がない日本としては、安定供給、環境対策、外交カードとしての重要性、技術伝承上の重要性という点から、原子力を国のエネルギーの中核に位置づけるべき。ところが今の使用済み燃料のワンススルーか再処理かという議論は、経済性を短期的に考えているに過ぎない。ウランは十分に安いから再処理は不要だという、アメリカのMITやハーバード大学の分析を金科玉条のようにして、感情的な議論をする人々に屈すると、道を誤る。

例えばアメリカでは80年代前半に2ドルを切っていたLNGが今や6.5ドルに高騰し、対応に苦慮しているのに、なぜウランは安いままだと言えるのか。また、地元との信頼関係も重要なのに、右往左往してひっくり返していいのか。さらに言えば、日本の原子力は平和利用に限っており、核兵器利用とは技術の深みが違う。それを同列に考えて、原子力を一遍止めて、様子を見ようなんてことになると、研究者もみんな離脱してしまう。私自身はむしろ原子力産業を再編成してでも原子力の技術伝承は重要だと思っている。現在、六ヶ所村で建設を進めている再処理工場を完成させ、サイクルまで踏み込んだ原子力技術を持つことが、外交上も非常に強い切り札になるわけで、深く考えないまま放棄するのは間違っている。それらを総合的に勘案して、原子力を日本のエネルギー政策の中核にどんと位置づけるべきだと思う。

もう1つ、自由化後の原子力を巡る国と民間の役割分担を明確にすべき。総括原価主義が崩れ、地域独占が崩れたということは、電力会社が普通の会社になったということ。従ってそのリスク分担は、普通の企業が負うようなリスクマネジメントは電力会社がやるべきだが、それを超える部分は国がやるということを明確にすべき。今のように、リスクのほとんどが民間の負担で、ごく一部の例外的リスクのみを国が負担するというスタンスは問題だ。

エネルギーを考える場合、マーケット、国際政治、技術進歩、地球環境という4つの視点が重要だ。なかでも地球環境問題は、今後100年を考えた場合、最も重要な問題になる。その中で、日本は他国がつくったルールに従うだけでなく、自らルールづくりのインサイダーになる時期に来ている。国際ルールづくりにおいて、日本は、アメリカ的ボトムアップアプローチとヨーロッパ的トップダウンアプローチの両方を見て、ブリッジ役になるべきだ。日本人はとかくこの頃ツボの中で顔を見合わせているだけのような感があるが、もっと世界を見て、世界に情報発信していく必要があると思っている。■


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