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後藤 康浩・日本経済新聞社 編集委員 兼 論説委員

2004.06.01
「関西経済活性化に生かしたい関係性資産」

後藤 康浩・日本経済新聞社 編集委員 兼 論説委員


ごとう やすひろ 日本経済新聞社 編集委員 兼 論説委員
1958年福岡市生まれ。早稲田大学政経学部政治学科卒。日本経済新聞社入社。社会部、国際部、バーレーン支局、欧州総局(ロンドン)、産業部、中国総局(北京)などを経て、現職。著書「強い工場―モノづくり日本の現場力」など。


関西経済が回復基調にある。2〜3年前まではどこまで沈むかわからないほどの沈下を続けていたが、昨年から様変わりした。現在はむしろ首都圏以上に好調企業も多く「西高東低」と言っていいほどの明るさだ。デジタルブームと中国ビジネスという日本全体を押し上げている2つの要因が、とりわけ関西に効いている。

その背景にあるのは、関西の経済タイプが時代に合い始めたということだろう。今は総合的なシステムより、デバイス一品で勝負する時代。システム全体をすべて自社でつくり、売ろうとする企業は落ちぶれていく。個々のデバイスが非常に高度化しているため、システムすべての要素技術を高い水準にするのは難しい。特定分野に集中しないと世界トップにはなれない。しかもユーザー、消費者は自分で選択権を持ちたいので、「全部うちのを使ってくれなきゃ困る」なんていう総合メーカーは相手にされなくなる。実際、世界でも競争力があるのは、携帯電話のノキア、パソコンのデル、ルーターのシスコシステムズ、CPUのインテルなど、殆どが単品メーカーだ。

この点、東京系の企業は総合的なシステムをクローズドな形でつくることを得意としてきたが、関西系企業はシステムよりデバイス──例えばシャープの液晶とか、サンヨーなら太陽電池など――とりわけ「キラーデバイス」を握ることに熱心だった。単品、部品の強さで勝負してきた歴史があり、それが今の時代にぴったり合っている。

関西系企業の研究開発のあり方も時代に合っている。大企業の研究開発というと中央研究所を頂点とし、各事業部門が応用研究・製品開発を行うというヒエラルキー構造が多いが、関西系企業は現場重視のボトムアップ型。研究開発は1000億円投入しても、実際に製品になるのは5%、10%しかない。製品化までの「大きな死の谷」をどう飛び越えるかが課題とされてきたが、関西の企業には「谷を飛ぶより、地べたを進もう」といった実務感覚がある。生産現場との情報共有を意識した応用開発に力を入れているため、収益に結実させやすい面がある。

ソーシャル・キャピタル、関係性資産ということで考えても、関西にはある種の秩序感覚、棲み分け感があり、これが巧く機能している。高度成長期ならパイ自体が拡大していたから同じ分野に集中しても問題はなかったが、GDPが横バイの中では共倒れになる。ところが関西の企業は、ムダな競争を避け、割と巧く棲み分けてきた。例えば京都をみても、村田製作所、京セラ、ローム、堀場製作所、島津製作所……、あれだけ世界的な技術力を持つ優秀な企業があるのに、競合はあまりない。適度な秩序感覚が働き、みんなで利益を確保する民間の知恵がある。

しかもまさにリレーションだが、関西では大企業と中堅中小企業、あるいは産学の連携がほかの地方にくらべ巧くいっている。大企業が自前の技術をブラックボックス化したまま生産だけを発注するのではなく、中堅中小企業の持つ技術力を上手に引き出しているし、中小企業と新興大学がうまく産学連携するケースも多い。東京の場合、産学の間に「官」を挟んで支援を得ようとするきらいがあるが、関西は官に頼らない気風がある分、産学の連携がより密接。相互補完的、相互依存的であると言える。

関西だけでなく、日本の中堅中小企業の技術力は、世界でも類のない高水準。これまで日本の大企業の力だと思われていたものは、実は中小企業の力──優れた最終製品を形づくる部品一つ一つの品質の高さだったと言ってもいい。その品質の高さが、1990年代後半には「高コスト構造」と否定され、生産の海外シフトが進んだが、数年もたつと、やっぱり精度や耐久度が違うとみんな気づき始めた。海外で1円の部品が日本では5円だけど、確かにその価値はあるとわかり、国内回帰の動きも出始めた。そんなレベルの高い中堅中小企業が数多くあり、その力を巧く活用できているのが関西の強み。「世界の松下」が門真を離れず商売していることが立派な証拠だ。優れた産業基盤があって、企業と企業、産と学の関係性もよく、なおかつ中国ビジネスでも戦前から独自の結びつきがある。アセットとしては、素晴らしいものを持っている。

ところが、このせっかくのアセットを損なっているのが行政だ。たとえば、関空、伊丹、神戸の三空港問題。空港は現代社会ではキー・インフラ。それがてんでばらばらでは、どうしようもない。行政が綱引きばかりしていることが、競争力を殺ぐ要因になっている。現に中国との関係にしても、今は福岡を中心にまとまりが出てきた北部九州に押され気味。早く関西という地域全体でのまとまり、関係性をつくっていかないといけない。

そういう中で期待したいのが、「地域経済の顔」といわれる電力会社の役割だ。電力会社にとって、最大のビジネス目的は電力需要を伸ばすこと。だとすれば、電力会社は地域産業活性化のために、もっと力を尽くすべきだし、できることもたくさんある。とりわけ重要と思われるのは、中堅中小企業など企業間の関係性を強化するための器、インフラの提供だ。

90年以降、大企業の「中小叩き」に遭った中堅中小企業は、大企業に頼らず、自立する道を模索し始めた。その中から出てきた動きの一つは、自分たちで最終製品をつくること。ただ、個々の企業が持つ技術は限られているし、新しい技術を開発する力もない。だったら必要な技術を持つ他の中小企業と組めばいい──異なる技術を積み上げて最終製品をつくろうと、「垂直統合」型の関係を築き始めた企業がある。一方で、従来のケイレツにとらわれず売り先の幅を広げた場合に生じる生産力不足の問題を、同業者が横に結んで共同受注する形、「水平結合」によって解決する方法も出てきた。そしてもう一つ、中小製造業に欠けている販売力、財務体力を補うため、総合商社、投資ファンドなど製造業以外と結ぶ「異業種連携」という方法も出てきた。

しかしいずれの連携も、当事者だけで一つずつ進めるのは大変だ。むしろ中立的・第三者的な性質の器──インキュベータのようなインフラがあれば、企業間連携もより円滑に進むはず。また物理的なインフラだけでなく、異業種交流のようなネットワークを築くことができれば、さらに関係性は深まるだろう。

電力会社がそうしたインフラを提供することで、地域の企業が活性化し生産活動が活発になれば、電力需要も増える。産業用だけでなく、働く人が増えて家庭用の需要も増えるし、オフィスビルの需要も増える。オール電化住宅の推奨もいいけれど、「電力か、ガスか」といったトレードオフの闘いだけでなく、地域の顔たる電力会社には、ぜひ地域全体の底上げ、成長、関係性強化につながるような活動を期待したい。■


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