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高嶋 克義 神戸大学大学院経営学研究科教授

2004.05.15
「営業革新―関係性を重視した顧客アプローチ」

高嶋 克義 神戸大学大学院経営学研究科教授


たかしま かつよし
神戸大学大学院経営学研究科教授(経営学)
1958年愛知県生まれ。京都大学経済学部卒、神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期単位取得。近畿大学商経学部専任講師、助教授、神戸大学経営学部助教授を経て、98年教授。営業改革研究の第一人者。生産財マーケティング、マーケティング・チャネル、流通企業戦略など研究。著書「営業プロセス・イノベーション」「生産財の取引戦略-顧客適応と標準化」「日本型マーケティング」「マーケティング・チャネル組織論」など。

ホームページ>> http://www.b.kobe-u.ac.jp/takasima/

 


企業にとって今改めて、顧客との関係性を考えることが大事になっている。かつての営業活動は「ご用聞き」。顧客の注文を早くキャッチすれば十分だった。しかし、今の主流は「ソリューション」。モノを売るだけでなくシステムやサービス、ソフトを提案し、顧客の課題をいかに解決するかが問われている。となると、営業担当者だけの活動では顧客満足度を高めることは難しい。開発者や技術者、生産、物流、アフターサービススタッフなどが連携し、企業レベルで顧客に対応することが必要だ。そこで、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント=顧客関係性管理)という話になってくる。

間違えてならないのは、「関係性重視」というと、顧客に密着して顧客の喜ぶことをすると思いがちだが、それでは昔のご用聞きと変わらない。ご用聞きは顧客ニーズをタイムリーに捉えて注文をとってくるが、それではモノしか売れないし、顧客側がアレが欲しい、コレが欲しいというとき、すでにその商品は市場に出ているわけだから価格競争になる。つまり顧客が欲しいというニーズを捉えている限り、価格競争に陥り、利益は出せない。顧客が気づいていない潜在ニーズへの提案が大事だ。例えばセンサーのメーカーであるキーエンスの営業は、顧客の10年先の工場ラインをイメージして提案をする。顧客ですら気づかない問題を示すから、他との比較にはならず、価格も受け入れてもらいやすい。

また、営業活動では人間関係が大事だと言われ、「関係性」というと人間関係ばかりが想起されるが、人間関係は企業間の関係性の構成要素の1つにすぎない。確かに顧客ニーズを吸い上げるには信頼が大事だが、信頼には2つあり、1つは人格的信頼、もう1つが期待どおりにできるという能力への信頼だ。関係性でより重要になってくるのは後者であり、それには営業担当だけの力では難しく、開発もサービスも生産も含めた企業レベルの対応、いわば個人営業からチーム営業への転換が求められている。

ところがここに壁がある。チーム連携には情報共有が欠かせないが、その情報は顧客とのつきあいや経験から生まれる属人的・個人的なものだからデータに表せないと思い込んでいるケースが多い。顧客情報は暗黙知となっていて、社内で情報共有はできないまま。上司には結果としての売上「数字」は見えても「問題」は見えず、適切な指示や指導もできないまま、動機づけや叱咤激励するに留まってしまう。

経済全体が成長しているときは営業担当者個人の力量に任せておいてもよかったが、伸びなくなってくると取りこぼしている問題を見つけて分析しないといけない。

いわば経験と勘による属人的・個人的な営業スタイルから、データドリブン型のチーム営業へ--これが関係性重視の営業というわけだ。その中で、どういう局面で人間関係が大事で、どういう局面ではシステムに置き換えられるかを見極めることは必要だ。顧客情報の中で形式知に置き換えられるものをデータ化する一方で、人間関係を生かすべきポイントを絞り込んでいけば、企業レベルでの関係性の中で人間関係の強みがもっと生きてくる。

人間関係は営業担当者の財産だから他人には関わらせないという狭い考えはさすがに最近は少なくなったが、一方で、データベースかフェイストゥフェイスのコミュニケーションかという二者択一で考えがちだ。しかし、データベースを積極的に使っている企業では、データベースをコミュニケーションの先導坑として使うことで、両方による情報共有を実現している。データベースに載せられた顧客に関するシグナル情報を営業の人も開発の人も見ていて、何か問題やヒント、機会が見つかれば、直ちにインフォーマルなコミュニケーションを始める。つまり、コミュニケーションを誘導するためにデータベースを活用しているというわけだ。

その意味でデータベースに載せる情報は、詳細で深い記述である必要はない。一見バラバラで多岐にわたるような暗黙知をすべてデータベース化するのではなく、あらかじめ形式知化する情報を決め、定型化しておく。営業担当者に対しても、何でもいいから顧客情報を集めよと言うのではなく、ポイントを絞っておけば、有用で重要な情報が集まってくる。

定型化に関連して言えば、提案営業では、規格化・標準化されたものを持参するのは一方的な押しつけになってマイナスだ、と思われがちだが、実は違う。顧客適応レベルの高い企業は実は標準化している部分が多い。とにかく客の要望にすべて対応しなさいと言うと、うまくいかない。むしろ8割は標準化し、残り2割で顧客の要望に合わせるようにすれば、スタッフもその部分に集中して徹底的に知恵を絞るから、いろいろと気が働く。何でもいいからやれと言うと、何もできない。例えば、業務用のソフトウエア。フルのカスタマイズが当然のように思いがちだが、白紙の状態で何でもやりますと言っても、顧客はニーズをうまく伝えられず、手直しが続くだけ。むしろ8割を標準化しておけば、最初から顧客に8割のプロトタイプを示せるので、顧客はここを直して欲しいと明確に言える。そうやって残り2割を徹底的にカスタマイズすれば、結局は顧客満足度が高くなり、関係性が深まっていく。

また、8割を標準化しているから、個々の営業担当者の活動が共通したパターンになり、ノウハウの共有化がしやすく、営業担当者の能力も引き上げやすい。しかも顧客の声を標準化部分にフィードバックすれば、どんどん提案内容が良くなり、好循環が生まれる。

もうひとつ関係性で注意したいのは、関係性を強めることだけを良しとするのではないという点だ。関係性には、深い関係もあれば、浅い関係もある。全部の顧客と深い関係性をつくる必要はない。深い関係性を持ちたい顧客にはクロスファンクショナル・チームを編成して企業レベルで対応する。浅い関係性で良いと判断した相手には、標準化した手法でより効率的に顧客の満足を得ていく。関係性の重視とは、顧客選別でもあることを、強く意識しておきたい。■


関連資料

「関係性重視の営業改革」の周辺 関連図書 「顧客との関係性」を読み解く12冊


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