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藤沢 久美 社会起業家フォーラム副代表;ソフィアバンク取締役

2004.04.15
「経済・産業活性化とソーシャル・キャピタル」

藤沢 久美 社会起業家フォーラム副代表;ソフィアバンク取締役


ふじさわ くみ
社会起業家フォーラム副代表;ソフィアバンク取締役
1967年大阪府生まれ、奈良育ち。大阪市立大学卒。外資系投資信託会社に勤務。96年国内初の投資信託評価会社IFIS (アイフィス)を設立、共同経営者に。99年アイフィス売却。2000年シンクタンク・ソフィアバンクのディレクター、のち取締役。多摩大学客員教授、政府税制調査会メンバー。2003年ソーシャル・アントレプレナーを支援する「社会起業家フォーラム」設立、副代表。NHK教育「21世紀ビジネス塾」のキャスターも務める。著書「プロが教える投資信託のすべて」、共著「2001年版買ってはいけないファンド 買ってもいいファンド」、論文「ソーシャルキャピタルはビジネスチャンスをどう拡大するか」など。

ホームページ>> http://www.kumifujisawa.jp/

 


地域の経済・産業活性化にソーシャル・キャピタル(SC)は大きな役割を果たす。かつて大企業のもとで企業城下町を形成していたような産業集積地は、今やほとんど崩壊しつつある。面のように見えていた産業集積は、実は大企業と中小企業の上下関係に過ぎず、大企業が中国や東南アジアに生産拠点を移したあとは、単に点が散在するだけになってしまった。

バラバラになった点を再び面として甦らせるには、子供の頃から同じ地域に住んでいるという地縁や人間関係、つまり地域のSCを産業活性化に生かすことを考えないといけない。地域に眠るプライベートな関係性を、どうビジネスの関係性に昇華させていくか、がポイントだ。

その際、地域全体の底上げを考えがちだが、そうでなく、まずやるべきは、いくつかの点が声を発すること。地域にはもともとの縁や信頼関係があるわけだから、声を発すれば耳を傾けてくれる人がいる。その声に影響を受けて揺らぎが起き、何かやらなきゃとみんな自分に何ができるかを考え始める。そうやって、自分を見直すことでSCが顕在化し、新しい動きが生まれてくる。

物事が動くとき、必要となるキャピタルはいろいろある。SCという概念は研究者ごとに解釈が異なるが、私が田坂広志氏と立ち上げた社会起業家フォーラムでは、SCを5つの軸で考えている。1番目は「ナレッジ・キャピタル」(知識資本)。知識と知恵、とりわけ知恵が大切だ。知識は本やネットでも得られるが、言葉になりにくい知恵である暗黙知は、感覚で伝わるものであり、コミュニケーションしない限り伝わらない。2番目は「リレーション・キャピタル」(関係資本)、いわば人脈。より多くの知恵を活用するには、知恵を持つ人間をどれくらい多くネットワークしているかにつながる。ただし、これは、単なる人脈ではない。知恵を貸し借りできる関係であることが重要だ。さらに言えば、そうした人脈をたくさん持つ人を、どれほど多く持っているか、が大事だ。3番目が「トラスト・キャピタル」(信頼資本)。リレーションを広げて他の人につなぐには、この人を紹介しても大丈夫という信頼がないといけない。4番目が「ブランド・キャピタル」(評判資本)。信頼を得、注目され評判になることで、加速度的に成長機会が増えてくる。最後が「マネー・キャピタル」(金融資本)。ソーシャル・キャピタルが根づいてくると、従来のように国が税金を徴収して再配分する形でなく、ファンド、個人個人の「投げ銭」のような形になり、マネーフローも変わってゆく。

そんなふうにステップアップするにしても、まずは誰かが「情報発信」することが出発点。それによって別の誰かが反応し、コミュニケーションが起きて「関係性」が生まれる。そして本気で喧嘩をしたり共感することで「信頼感」が生まれる、という形だ。

今、産業界で大きな問題は、多くの小さな企業に発信力がないことだ。だからリレーションもトラストも生まれない。大企業の下請け時代には、発信は必要なく、ただただ受け身でいればよかったが、今は、どうすれば伝わるか、を考えないといけない。まず声を出して発信することが最も重要だ。それも受け手が「おやっ」と思うような、サプライズのある情報を発信しないといけない。

情報発信力、言い換えればそれは本来、企業に不可欠な、外との関係性を深める「営業力」と、へぇと思わせるナレッジを発信する「企画力」だ。系列下で弱体化した営業力と企画力を回復する時間と修練が必要だ。

それを私は、まず狭い範囲で、有志たちの結束固めから始めればいいと思っている。つまりマーケットが小さい時代には地域地域でSCが生きていたが、大量生産・大量消費で市場が拡がる中で見えなくなっている。だからもう一度足元から、地域に眠るSCの顕在化から始めるのがいい。また、SCにはボンディング(結束)型とブリッジング(橋渡し)型があり、SC研究の先進地・アメリカではボンディング型の評価は低いが、私は、まずボンディングな形でSCを顕在化させ、それからブリッジング型に拡げていけばいいと思っている。

例えば京都の二代目経営者の集まり、機青連(京都機械金属中小企業青年連絡会)は、参加企業相互の工場見学と本音のディスカッションで、内部の結束を固めている。そして外に向けてアピールできるよう、それぞれが自社の得意分野を明確にすると同時に、全体での特色づくりとして試作品の共同受注サイト「試作ネット」を立ち上げた。それは、どのメンバーにも対応できないような発注が来ても、断ってはいけない。地域外にできる人を探しに行くなどネットワークを拡げ解決策を見つけるというルールで、産業再生を図っている。

再生・復活と言えば、今、問屋も復活している。大量消費時代には消費者は価格で評価していたから、中抜き現象で問屋不要と言われたが、今はつくり手側の思いまで汲んだ詳しい商品情報を問屋がわかりやすく販売現場に伝えることで、高くても買う人が出てきた。そして買った人の声をまた問屋がつくり手にフィードバックすることで、よりよい商品が生まれる。こういう、関係性を生み出す知恵の橋渡しをする問屋のような存在がとても重要になっている。

それは地域においては、宅配の酒店や電器店など、客の家族構成から好みまで熟知した昔のご用聞きビジネスが、もともとの商品・サービスの枠を超え多様な生活ニーズに応えるワンストップショッパーとして復活していることにも現れている。それは決して効率的じゃない。手間暇かかるサービスだから、その分、手数料を取り値引きはしない。客にとっては決して安くはない。それでも客が「本当にいいものを選んで届けてくれる」と信頼するようになれば、価格は判断基準から消えていく。

だから今、企業が生き残るには2つの道がある。ワンストップサービスの窓口になるか、仕入先として指定される業者になるか、どちらかだろう。客にとっては、窓口は地域密着型だけど、その商品提供者は全国規模・世界規模の広がりを持つ。だからワンストップ窓口の方は、いかに地域密着で人間関係を構築できるか、専門業者はどれだけ専門性を高められるか。いずれも営業力と企画力が勝負のカギを握る。

ソーシャル・キャピタル--それは当初アメリカで注目されたが、実はすごく日本的な概念だ。日本は昔からヨコ社会だし、縁や利他の精神といった東洋思想となじみが深い。またSCは、人の気持ちをわかろうとするなど、非常に人間味のある概念だとも言える。会社と会社の提携も、会社という人格がやるわけではなく、社員と社員、社長と社長の関係で話が進む。SCについて考えれば考えるほど、「人間力」を考えざるを得なくなる。

人間が持つ資質をいかに最大化していくか。そう考えると、今年の各企業のテーマは「人材育成」だろう。ほとんどの企業は、失われた10年のあとリストラ、財務改善、経営効率化、コスト削減を進め、多少の環境変化なら利益が出るようになった。今度は利益を伸ばすことを考えないといけないが、では誰が伸ばすのか。やはり社員が新しいチャレンジをしないと、成長の種は生まれてこないわけで、まさに社員のモチベーションを高め、人を育てることに力を入れるべき時であろう。

企業が人材育成に力を入れ、一人ひとりが自己投資して人間力を磨く。強い会社、強い地域づくりは、一人ひとりが関係性を広げ、ナレッジに磨きをかけ、どれだけSCを花開かせるか、にかかっている。■


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