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山家 公雄

2004.03.01
「米国にみる電気事業者のリスクとチャンス」

山家 公雄

やまか きみお 
日本政策投資銀行ロサンゼルス事務所首席駐在員
1956年生まれ。東京大学経済学部卒。80年日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)入行。98年新規事業部環境対策支援室課長、99年エネルギー部電力室課長、同年10月環境・エネルギー部課長、2001年国際部参事役、同年6月ロスアンジェルス事務所首席駐在員。この間、95年米国ブルックリン研究所に派遣。著書「電力自由化のリスクとチャンス」、共著「金融技術と電力」など。


2001年6月にロスアンゼルス駐在になって以来、電気事業に関わる大事件が相次いだ。渡米直後はカリフォルニア州(加州)の電力危機の余韻があり、加州側は州政府やユ−テリティ(公益事業)が抱えた巨額の負債を、州外の電力会社の不正取引によるものと声高に罵り、損害賠償を請求した。2001年12月にはエンロンが破綻し、米国モデル自体を揺るがす大事件となった。そして2003年8月に北米大停電が発生し、包括エネルギ−法案に供給信頼性向上に係る具体策が盛り込まれた。

電気事業者は、特にエンロン破綻後、発電専門会社やトレーディング会社といったいわゆる自由化事業については、相次ぎ破綻し株価も低迷している。一方、地域に供給責任を有する(と一般に認識されている)伝統的な電気事業者(ユ−テリティ)は安定しており、堅調な株価を維持している。昨年は、米国株価が大きく上昇し、なかでもユ−テリティが著しく伸びた。12月3日付けのLAタイムスでは、「過去1年のダウ工業平均が11%増であるのに対し、電気事業インデックスは26%増。この理由として、1.安定供給体制を構築すべく各地の規制当局がユ−テリティに利益を確保させる施策を取っている、2.旧態依然の事業法を見直して合併をより容易にする施策が近々取られ(大停電を受けてエネルギ−法案に盛り込まれている)ユ−テリティの事業規模が拡大安定する、という点を指摘しうる」としている

さて、この間の最大の教訓は、自由化を前提とする中でも、電気事業者にとって供給信頼性を柱とする「社会的な信頼維持」が極めて重要だということだ。また、政策や政策当局(特に連邦政府)は当てにならない、ということもわかった。しかし、実効性のある自由化の推進と供給安定を同時に満たす「解」はまだ提示されていない。電気は極めて重要な財であり(やはり公共財だ)かつ貯蔵がきかないという特殊性を持つこと、自由化の推進に前向きな(後戻りできない)北部諸州と慎重な南部諸州との根深い対立が存在していること等を考えると、自由化の本領を発揮しうる環境がいつ整うか、予測不可能という感がある。

自由化推進の担い手であるFERC(連邦エネルギ−規制委員会)は、エンロン事件の後、世論に押される形で一部電力取引を価格操作と指摘した。値下げにつながると信じられていた自由化が価格吊り上げにつながっていたという事実があきらかになり、自由化は大きくイメージダウン、自由化路線を信じて参入した事業者は窮地に陥った。私見だが、バブル時代にエンロン等が行った市場取引は、他の財なら通常取引として特に問題にはならなかった類だと思っている。エネルギ−・トレ−ダ−たちはFERCの見解に大いに戸惑ったようで、昨年ダウジョーンズ通信にて、エンロンの元トレ−ダ−が金融取引に身を転じた理由として「エネルギ−取引は政治の介入を招くので、トレ−ディングには適さない」と語っていた。

また、北米大停電に関しては、原因調査タスク・フォースの中間報告で、最初の停電の発生地域であるオハイオのユ−テリティであるファーストエナジー社が主犯として名指しされた。多くの識者が、自由化への環境整備不足等政策面でのを含む本質的な原因を指摘していたにもかかわらず、結果的には個別会社が供給信頼性維持の努力を怠ったとして、責任を一手に負わされる形となった。このことは以前より広い範囲からの電力調達が一般的となる自由化の下での最終責任のありかたについての問題を投げかけた。さらに、米国で自由化が上手くいっていない理由として、規制機関のメンバーに電気の専門家があまり入っておらず、そもそも電気をよく理解していない、ということも言われている。一方で、自由化を導入した地域は、問題が生じても元の規制には戻せないようだ。電力危機を経験し自由化へのアレルギーが強い加州でも、新たな市場取引のルールづくりが進められており、早ければこの春にも実験的な取引が開始される。

こうした中で、電気事業者(特にユ−テリティ)は、電気という商品の性質や流通の特徴に精通し、また消費者と日々接触している専門家として、一方で政策は必ずしも完全でなく変わり得るとの前提にたち、自らの知見と判断で、「競争と供給信頼度維持の両立」という難しい課題を追求していくことが求められる。つまり短期戦略と長期戦略を冷静に分析することが重要になる。電気事業者のリスク管理の基本線はここにある。それを軸に、個々の戦略を構築するということだろう。

エネルギ−事業の具体的なリスクとして一つ紹介しておくと--米国では、近い将来の天然ガス不足が懸念されており、LNG輸入が注目を集めている。先ごろシェブロン・テキサコ社の計画するメキシコ湾沖合LNG基地建設に対し、連邦政府からの認可がおりた。また、燃料の多くを州外に頼っている加州向けの事業がメキシコやロングビーチで複数計画されているが、米国の場合、国内天然ガス市場が存在するだけに、長期取引を特徴とするLNG事業の価格変動リスクにどう対応するかが注目される。

一方、米国にて感じる電気事業のビジネスチャンスとして、分散型電源と石炭火力発電、ITサ―ビスの三つを挙げておきたい。分散型電源(エネルギ−)は、確実に浸透していくと思われる。大停電の余韻が残る一方で送電線投資が本格化するには時間がかかり、現実的な対策として注目できる。また、9.11同時テロ後、エネルギ−・セキュリティの意味が、従来の安定供給だけでなく「テロ対策に有効」との視点が強く意識されるようにもなっている。先日シリコンバレーのベンチャーキャピタルの方と話す機会があったが、その人は期待できる分野として分散型電源に焦点を当てており、現在ボストン、サクラメントの燃料電池、シリコンバレーの太陽光の新技術に着目している、と語っていた。加州では最近、廃棄物のサーマル・リサイクルにも注目が集まっている。加州政府筋より我々の事務所に、「日本の技術と実践を高く評価しており日本と是非交流をしたい」との話もあった。

また、クリーンコール・テクノロジー促進の名の下に、石炭火力発電が見直されている。これも、大型発電では、石炭が最もセキュリティに有効、という認識が根底にあるようで、地球環境の視点では肩身の狭い思いをしている石炭だが、セキュリティの名目で復権するかもしれない。

最後に米国では、イーコマース(電子商取引)が大幅な伸びを続け、またIT関連株価の上昇もあって、2001年春のITバブル崩壊以来久しぶりにIT復権の雰囲気が出てきている。こうした中、もともとネットワークというITと関わるインフラを持つエネルギー企業もイーコマースに進出している例があり、カナダのガス・サービス会社BC-Gasと米国配電会社Enbridge社は2002年1月に双方のカスタマ−サ−ビス部門を切り離しCustomerWorks社を設立した。しかし、ITスキルが乏しい、マネジメント力、営業力が弱いといった要因のため生産性が上がらず困っていた。そこで、AccesstureというITにも強いコンサルティング会社とパートナー契約を結び、その後立ち直っている。これは、最近ITサービスの新分野として注目を集めている、関連業務を含めてアウトソースするBPO(Business Process Outsourcing)という形態だ。

こうした米国の動向がすべて日本の電気事業のリスク、チャンスにあてはまる訳ではないが、不安定性、リスクへの対応、短期・長期戦略整合の必要性、分散型電源や新ビジネス進出といった米国の先例を充分踏まえ、今後の日本の電気事業のあり方を考えるべきではないだろうか。■


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