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八幡 和郎・評論家

2003.12.15
「グローバル化のなかでの地域間競争――『関西州』自立への課題」



八幡 和郎

やわた かずお
評論家
1951年滋賀県生まれ。東京大学法学部卒。通産省入省。官房地方課長補佐、工技院国際研究協力課長などを経て、フランス国立行政学院留学、南仏ジェルス県庁で研修。90年ジェトロ産業調査員としてパリ滞在。のち通産省北西アジア課長、国土庁官房参事官・地方産業振興室長、官房情報管理課長などを経てアジア経済研究所総務部次長、97年退官。評論家として活動。著書「遷都」「『東京集中』が日本を滅ぼす」「官の論理」「さらば! 霞が関」「47都道府県うんちく事典」「東京の寿命」、共著「東京をどうする 地方をどうする」「未来首都・畿央」など。近刊「性格がよく分かる 県民性」(ナツメ社12月下旬発売)

ホームページ>> http://www.yawata48.com


グローバル化のなかで国家の枠組みが不明確になり、道州的な単位での競争が始まっている。私も先ごろ、イタリア、ドイツ、フランスを訪ねたが、ヨーロッパが道州的な方向へ動いていることを再認識させられた。EU発足以来、外交や経済の大きな枠組みは欧州全体で共通ルールを定め、生活や産業に関する行政実務は州単位で行い、国家の権限は相対的に低下。北イタリア独立運動を進めている有力政治家が「ヨーロッパは209の州の集合体になった。もはやイタリアは文化などの単位としてはともかく経済などでは何者でもない」と語っていたのが、印象的だった。

アメリカはもともと連邦国家であり、今後、世界的な傾向として、「日常生活経済圏」ともいうべき単位は道州へと移行し、道州レベルでの国際競争が展開されると言っていい。

ところが、日本だけが相変わらず国家に縛られている。労働力の国際移動も教育の国際化も遅れていて、国の規制も厳しいままだ。唯一、貿易と投資だけがグローバル化していて、滋賀や奈良の工場など生産現場は上海の工場と、泉州のタマネギだって中国と競争させられているのに、都市や地域は、海外と競争したくても自由にさせてもらえないのが現状だろう。

今日、規制緩和や地方分権が進んできてはいるというが、もともと東京が独占している機能には手をつけないままでの緩和であり分権だ。例えば関西国際空港の苦戦は開港当初から予想できていた。世界的に見て、その空港を根城にする航空会社がないままで巧くいった試しがない。国内航空会社の本拠地を東京に集中させたままで、海外とも自由に組めないとなると、ハナから勝負にならない。

世界の流れからすれば、関西や九州くらいの単位で新たな地域の枠組みをつくる必要があるが、それにあたっても、最大都市に首都がないことが成功する条件だ。EUの場合、政府であるEU事務局はブリュッセル、議会はストラスブール、裁判所はルクセンブルグと分散している。日本が東京首都のまま道州制にしたところで、地方は多少雇用が増える以外、メリットは少ない。その意味で首都移転が一つの課題になってくる。

もう一つ、都市間競争を考えると、日本の場合、新都市建設に取り組んでいないことが問題だ。前の大規模な新都市建設は安土桃山時代。神戸、横浜、札幌など数少ない例外を除けば、県庁所在地の大半は当時の都市設計思想でつくられた街であり、今や老朽化している。街というのは、つぎはぎだらけで改築を繰り返すか、壊して新築するか。それでいえば、壊してつくり直した方が巧くいくことが多い。マレーシアは事実上プトラジャヤに首都移転したし、韓国も現政権中に新首都に移ると言っている。これらはみな新都市建設だ。日本も新たな都市開発や、かなり大規模な再開発をやらないと、長期的には行き詰まってしまう。

さて、将来の道州制と地域間・都市間競争という観点で関西を見れば、各都市ともかなり老朽化していることに加え、国際化に向けた戦略と覚悟が欠けていると言わざるを得ない。国際競争への参加をめざすなら、世界的な都市として何が必要かを十分に考え直すべきだ。

もちろん京都のような歴史都市には、守るべきものもある。だが、観光資源としての景観は、保存だけでなく整理も考えた方がいい。かつてフランスの閣僚を務めた作家アンドレ・マルローは、パリの街頭や公園にある銅像を美術的価値や人物の歴史的価値に照らして審査し、3分の1にまで減らした。それでパリの景観は、非常にすっきりした。京都も自らの景観がいかにあるべきかという観点から、保存するもの、再生するもの、創造するものを、もう一度考えた方がいい。

一方、大阪の通勤圏人口は1000万人。規模からすれば、ロンドンやパリに匹敵するわけで、これらと同等の都市機能を持つべきだろう。関西で、空港もシンクタンクもオペラホールも、世界水準の機能をワンセット持つことが必要だ。それがないままに「独自性」を強調しても成功しないのは、これまでの関西の経験でわかるはず。まずは関西内で完結させないと、人はよそに流れてしまう。

そもそも国際競争力というものは、苦労や我慢なしには得られない。関西が国際競争に勝とうとすれば、関西の人は何を我慢するかが問われる。ところが経済団体などが掲げる関西の将来プランを見ると、苦労や我慢を前提にしない「おいしい話」ばかりが並んでいる。先端技術の育成、良好な環境の保全――これなら誰も反対しない代わり、他の地域との差は出せない。

滋賀が環境県としてそれなりに評価されているのは、ゴミの分別回収や琵琶湖の一斉清掃など県民が汗を流しているからだ。アジアに目を向ければ、香港はビジネスにおける中国語と英語の両立、シンガポールは厳しい社会的ディシプリンの維持と、汗を流して国際的な競争力をつけた。彼らに勝とうと思えば、関西も何かを我慢しないといけない。国際都市として世界中から観光客や企業を集めたいなら、例えば京都は旅行英語を、大阪はビジネス英語を徹底的にやる。全ホテルに英語力のあるスタッフを置くことを義務づけるとか、ビジネス英語ができる層を厚くするために関西だけ土曜日も学校教育を義務づけるとか。しんどい思いをしてこその国際競争力だということを肝に銘じるべきだろう。

最後に言えば、将来的な道州制への移行をにらめば、その根っこを担う人材、いわば知的プランナーの組織化は不可欠だ。優秀な人材が未だ中央省庁に集まるなかで、電力会社をはじめとした地域ブロック単位の公益企業こそが、知的プランナー集団を立ち上げる核になってほしい。

冒頭に述べたように、世界はすでに道州制を軸とする国際的な地域間競争の時代に入っている。長期的には日本も東アジアという枠組みでの道州制へと動くだろう。その中で何について汗を流し、いかに競争力を発揮するのか、関西をはじめ各地域のビジョンが、いま問われている。■


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