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高橋 潔

2003.09.15
「『リーダーシップ』への視点──変革へ夢を語ろう」

高橋 潔

たかはし きよし
南山大学総合政策学部助教授(産業心理学;組織心理学)
1960年大阪府生まれ。慶応義塾大学卒、同大学院博士課程単位修得、ミネソタ大学大学院博士課程修了。Ph.D. M日本能率協会マネジメントセンター勤務を経て、97年南山大学経営学部講師、2000年総合政策学部助教授。人事評価の心理学など研究。共著「会社の元気は人事がつくる―企業変革を生み出すHMR」など。



リーダーらしいリーダーが見えなくなっている。
かつて部長は何をしてるのかわからない人だった。デスクに座り、お茶を飲んだり新聞を読んだり、何のためにいるのかわからないけど、何かあれば相談に行く「不可解ながら存在感のある人」だった。ところが今のリーダーはプレイング・マネジャー。しょっちゅう動いていて、相談しようにも席にいない。プレイングとはよく言ったもので、リーダーがあまりに動きすぎて、チームに方針が伝わらず、攻めでも守りでもチームにどこか落ち着きがない。

こうなった理由の一つは、企業組織がフラットになり、中抜き現象で、一人のリーダーが大勢の部下を直接見るようになったから。リーダーたちは自分が仕事ができるだけに、年齢もスキルも自分とは随分差がある部下に仕事を任せるのが不安になってしまう。また、仕事が多くて、部下一人ひとりに手取り足取り指導する余裕もなく、結局、自分でやってしまう。仕事のスピードも速まり、外部環境変化に応じて迅速な意思決定が求められるから、リーダーが直接動いてしまうことになる。

となると次が育たない。部下は依存的になり、ひたすら指示を待つばかり__。その辺が日本企業の元気のなさにつながっている気もする。

日本が元気だった頃、日本流のリーダーシップはどうだったのか。NHK『プロジェクトX』のチーフプロデューサー今井彰氏の著作『プロジェクトX・リーダーたちの言葉』に出てくるリーダーを分類すれば、リーダータイプは4種類。

1つは「達成志向」のリーダー。南極越冬隊長の西堀栄三郎氏のように「とにかくやってみなはれ。やる前から諦める奴は一番つまらん人間や」と、目標達成を第一に考え、部下を叱咤激励する。成果主義全盛の現代には最適と思われるタイプだ。
2つ目が「チームワーク志向」のリーダー。伏見工業高校ラグビー部の山口良治監督のように、“All for One,One for All”(一人はみんなのために、みんなは一人のために)と、全員で力を合わせることの大切さを説くタイプ。
3つ目が「道徳的」リーダー。東洋工業(マツダ)のロータリーエンジンの生みの親・山本健一氏のように、私利私欲のためでなく、社会のため人類のためといった大きな使命感を持って、モラールに訴えるタイプで、技術者に多い。
4つ目は、「無為」のリーダー。三原山噴火の時に全島民脱出を指揮した大島町役場の秋田寿助役の「いつの間にかついた力、自然に身体に染みついた力が助けてくれた」という言葉に象徴されるように、決してリーダーシップを誇示することなく、みんなが動きやすいよう、謙虚に自然に下支えするタイプ。

とりわけ4番目の「無為」のリーダーは日本なり東洋人特有のリーダーシップのあり方だ。老子の教えに「太上は下これ有るを知るのみ」――優れたリーダーのもとでは、部下があまりに自然に動けるのでリーダーがいることすら忘れてしまう、という言葉がある。部下からすればリーダーは要らないことにもなるわけで、今のプレイング・マネジャーとは全く逆のスタイルだ。

日本が明確な目標を持っていた時代、つまり追いつけ追い越せの時代には、プロジェクトXの4タイプのリーダーがうまくいっていた。また、優秀な部下に任せてリーダー不要ということもあり得た。しかし今日のようにモデルのない時代には、別のリーダー像が必要で、それはプレイングに終始するリーダーとも違う。

今求められるリーダーは、「変革型」リーダー――現状を打破するために、節目節目でビジョンを示し、変革を促す方向に全員の力を集結させることこそ、リーダーの役割となる。例えばカルロス・ゴーン氏は、明確なビジョンを示し、それを実行するために部下を鼓舞し激励した。ビジョンを示すというのは「夢」を語ることだと僕は思う。目標ではなく「夢」。到達すべき美しい形として、どのようなビジョンを示せるかが、今、日本のリーダーたちに問われている。

さらに言えば、日本の産業構造が、伝統的なものづくりから、情報・サービス・知識の創造へと移るなか、日本の将来は、ユニークで付加価値の高いソフトづくりを、新しい産業として立ち上げていけるかにかかっている。宮崎駿監督のアニメ「千と千尋の神隠し」はアカデミー賞を受賞したし、北野武監督が「座頭市」でベネチア国際映画祭の監督賞を受賞した。また、おもちゃメーカーのタカラの犬語翻訳機「バウリンガル」は「人類と犬の平和共存に貢献した」ということで、ユニークな研究を評価するイグノーベル賞(ノーベル賞のパロディ版)の平和賞を受賞した。ただ、この「ソフト」というのは製造業中心のアタマでは理解しにくい。娯楽の提供など尊いことではないように思いがちだ。が、ソフトの中にもものづくりの要素はかなりある。映画にもアニメにも、あるいはショービジネスに使われる花火やからくり人形にも、職人芸、熟練技が生きているわけで、ものづくりを大切にしてきた日本人の共感は呼びやすい。あるいはあくまで製造業でいくにしても、意匠・デザインで大きな付加価値がつくわけで、やはりソフトが大事になっている。

言い換えれば、これからの産業社会が求めているのは「創造的労働」の実践であり、そのためにどうやって部下をモチベートしていくか。「売れるかどうか」に関心がある経営陣と、「つくりたいものをつくる」ことにこだわりがちな現場の人。ソフト産業の時代には、会議室と現場のニーズをマッチメイクする「プロデューサー的リーダー」が力を発揮する。

そして僕が期待したいのが、ソフト産業のモデルとしての関西だ。関西には吉本興業をはじめソフト産業を展開する基盤があるし、今年は星野阪神が優れたリーダーシップを見せ、かつてないエンタテインメントを提供してくれた。

ものづくりからソフト産業へ、産業構造転換のうねりのなかで、まずは既存の構造をうち崩す「変革型」リーダーの登場を求めたい。夢を語りビジョンを示す――人々のモチベーションは夢がキーワードだ。だけど「夢は仰々しすぎて、語るのは格好悪い」という人もいる。アメリカ人のようにフロンティアスピリットが文化のなかに埋め込まれている国と異なり、日本人は夢を語るのが苦手かもしれないし、社会が豊かになると素直に夢を語れなくなる面もある。だけどそれをやらないと、この先展開するのは難しい。

今のプレイング・マネジャーの下で、部下は仕事を任せられることが減っている。現代社会は成熟の度が過ぎてしまい、上の人たちが若い人のアイデアに対し自分の経験からコメントを差し挟んでしまう。だけどリーダーの出番は、節目節目の方針決定。あとは我慢して任せるようにしないといけない。それをしないと世代交代はない。そして何より、若者たちのエネルギーを上の世代がもらうことで、新しい動きが生まれるのだ。だからリーダーは、危なっかしくても我慢して若い人に仕事を任せよう。次世代にチャンスを与えることを忘れないようにしよう。そして、次世代に勇気と希望を与えるために、自らは照れず臆せず、責任を持って、美しい夢を語ってほしい。■


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