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圓尾 雅則

2003.06.15
「競争力強化に向けて──
  『財務・IR戦略』への視点」

圓尾 雅則

まるお まさのり
ドイツ証券 株式調査部ディレクター
1966年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒、同大学院理工学研究科修了。1991年 大和総研入社、企業調査部にて証券アナリストとして電力・ガスなど公益事業を中心に担当。2000年ドイツ証券へ移籍。


エネルギー業界担当のアナリストを務めて10年になる。この間、電力会社の財務事情は大きく変化してきた。

変化をもたらしたのは、言うまでもなく自由化である。地域独占・料金認可制から自由競争に移行したことで、電力会社は財務体質の脆弱さに危機感を持ち、設備投資を絞って、借金返済に充てるようになった。もともと電力会社の自己資本比率は10%台。日本の全産業平均が約30%だから、あまりにも低すぎた。だから自由化を機に、借金返済にトッププライオリティを置いたのは正しい選択だったと思うし、その成果が出始めていることは評価したい。

ただ、そろそろ次の戦略を考える時期である。今後も自由化範囲は拡大するとはいえ、家庭用はまだしばらく規制料金のまま。他の産業よりは明らかに事業リスクが少ない。そう考えると自己資本比率も、今までは低すぎたが、かといって他の産業並にする必要はないかもしれない。では何%くらいがいいのか、どの程度の財務安定性が最も望ましいのか。今後の規制緩和の動向をにらみながら、自分たちにとってのベストポジションをみつける必要がある。

そのうえで、余った金をどう使うか。電力会社はこれまで、需給バランスだけを考えて設備投資をしてきた。○○年には最大電力がこれくらいになりそうだから、これだけの設備が必要だ。そのためには○○年に着工して__と、全部そこから逆算していた。しかしこれからはもう少し戦略的な発想が求められる。例えばコンバインドサイクルをつくるなら、既存設備に多少余力があってもガスタービンが安い時を見計らって設備投資し、早めにリニューアルしてもいい。それこそが経営者の腕の見せどころではないか。

また電力会社は常々、公益性とのバランスを考えざるを得ない立場に置かれてきた。しかし自由化が進むなか、ここでも少し発想転換の必要があるのではないか。民間企業である以上、株主が期待するのは投資への見返りである。株主利益を代表する経営者はそれに応えなければいけない。そのために電力会社は、もっと「儲けること」に敏感であるべきだし、将来的なリスクの排除にも積極的に動くべきだろう。

例えばエネルギー政策における国と民間の役割分担について、電力会社はオフィシャルな場で堂々と主張した方がいい。競争環境下における供給義務の問題、あるいは原子燃料サイクルのバックエンドは誰が担うのか――未だ明確になっていない課題も数多い。株主利益を代表する民間企業としての立場から、企業としてできることとできないことを明確にし、曖昧さを解消する。そうしないと漠然としたリスクがどんどん積み重なり、最終的にリスクを被るのは株主。電力会社はその事実をもっと厳しく認識してほしい。

IR戦略についても、いくつか課題がある。まず大切なのはIRとPRを混同しないことである。IRはアピールの場ではなく、リレーションシップをとる場。どんな人でも、一つの会社で何十年も過ごすと、どうしても物の考え方が偏ってくることは否めない。自分たちは正しいと思っていても、社外の人から見れば正しくないこともある。電力会社の人はよく「ご理解賜りたい」と言うが、自らの考えや立場を押しつける前に、まず自分が相手を理解する。外部の声を聞き、外部の眼に自分たちはどう映っているかを知り、それを知ったうえで経営判断を下すためにこそ、IRがある。

もちろん外部評価を聞くには、情報を隠さないことが大前提である。IR担当に情報が集まるようにしないといけないし、外部評価がきちんと経営トップまで伝わるようにする必要もある。だからIR担当は社長直属部隊、あるいは企画部門などIRの結果を経営にフィードバックしやすい部署に置いた方がいい。

その上で、資本市場に対しもっと明確なメッセージを発信して欲しい。残念ながら電力会社はまだ、自分たちの課題をきちんと整理して外部に伝えようという意識が弱い。これからの半年で何をするのかと聞いても、「一旦お約束したことはやり遂げないといけないので、軽々には言えません」と二の足を踏んでしまいがち。でもそれは間違い。将来のために、明日、三カ月先、半年先までにしなくてはいけないことがあるはず。もちろん経営環境は刻々変化するから課題も変わって当然だが、その瞬間瞬間ではきちんと整理されていないといけない。それを発信してこそ初めてディスカッションが可能になる。

資本市場の意見も、決してすべて正しいわけではない。「市場の論理で言えばこうなる」というだけのことだ。日本企業は諸外国と異なり、従業員の雇用を守るという良い文化がある。今後日本企業は、雇用を守りながらも信賞必罰をきちんと行い、雇用制度をより良い方向にリニューアルしていく。加えて、株主や消費者など企業を取り巻くステークホルダーたちの声を聴き、それをまた経営にフィードバックしていく――。とりわけ電力会社にとっては、自由化時代の競争力強化へ、財務・IR戦略が果たす役割は大きい。■


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