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2003.03.15
「元気出せ、関西!──
   『再生』への処方箋」

森永 卓郎

もりなが たくろう
UFJ総合研究所主席研究員
1957年東京都生まれ。東京大学経済学部卒。日本専売公社、日本経済研究センター、経済企画庁総合計画局などを経て、91年より三和総合研究所(現UFJ総合研究所)主席研究員。専門はマクロ経済、計量経済、労働経済など。著書『年収300万円時代を生き抜く経済学』『日本経済最悪の選択』『ニッポン経済 勝手に構造改革』『シンプル人生の経済設計』『デフレとお金と経済の話』『痛快ビンボー主義!』『バブルとデフレ』など。「ニュースステーション」レギュラーコメンテーターとしても活躍中。

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いまの関西経済は、はっきり言って最悪だが、私は決して悲観することはないと思っている。デフレ不況は早晩必ず収まるし、その後には関西が強みを発揮する時代がやってくる。

デフレ不況の中で、企業は価格競争力をつけようと、「選択と集中・本業特化・コスト削減」というビジネスモデルを展開しているが、デフレが止まるとこのモデルはジリ貧になっていく。価格競争力をめざしても、伸びない部分に資源を集中させるわけだし、やがてはアジアとの競争で落ちていく。

デフレが止まった時、強いのは「クリエイティビティ」――価格競争力でなく付加価値競争力を持つ企業だ。「安くていいモノをつくる」ことは、もう何の価値も持たない。価値をもたらすのは、センス、アイデア、伝説といった得体の知れないもの。一着何十万円もするイタリア製の服と、100円、200円の中国製の服は、素材や縫製などほとんど変わらない。でも確かにイタリア製の方が、中国製よりセンスがいい。そこにものすごく大きな付加価値がつく。

実はイタリア経済と日本経済はよく似ている。GDPに対する政府債務の比率はほぼ同じ。少子・高齢化が進み、財政も年金も破綻し、贈収賄も横行。だけど、イタリアは強い。なぜなら、そういう状況でも暗くならないから。イタリアはラテン。「カンターレ、マンジャーレ、アモーレ」──歌おう、食べよう、恋をしようと、ワクワクドキドキ、生きていられるから強い。

これこそがクリエイティビティの源泉。クリエイティビティとは人を感動させる能力。まず自分がワクワクドキドキしてないと、他人を感動させることなんかできない。暗い人からはクリエイティビティは生まれない。

日本も明治維新までは、国全体がラテンに近かった。江戸の庶民も宵越しの金は持たねえとか、みんなが飲んで歌って踊って恋をして、地域の中で楽しく暮らしてた。だからこそ明治中頃までの日本文化は、工芸品から浮世絵、陶器、絹織物と、あらゆるものが欧米の憧れの的になり、ジャパネスクブームを巻き起こした。工業技術力でなく日本の感性、クリエイティビティが、世界的な競争力を持っていた。

そして現在、日本でそれを期待できるのは、東京でなく、圧倒的に関西・大阪だ。もともと日本文化は関西発。上方で創られたものが「下りもの」として江戸へ運ばれ、「下りもの」にもならないものを「くだらない」と言った。残念ながら今は、本来の関西のクリエイティビティが商売に結びついていない。デフレ不況でマーケットがないので、出ていけない。

だけど関西はくじけない。私はこの前「ラテン度の計量分析」をやってみた。失業率と自殺率は強い相関関係があるので、それをもとにこの失業率なら自殺率はこれくらい、という計算値を出す。そこから各都道府県の実際の自殺率を引いた値、つまり「死ななかった度合い=ラテン度」と捉えると、1位が沖縄で、大阪は4位。大阪人は多分にラテン気質を持っている。

実際、もし大阪の人たちが東京人や東北人のような感性だったら、大阪はもう壊滅状態。ラテン気質だからこそ生き残っている。先日出席した企業経営者の会でも、「あいつのとこも潰れたで。この会もどんどんメンバーが減るなア」と溜息をつきながら、その舌の根も乾かぬうちに「今年の花見、淀川にクルーザー浮かべて、ぱあっとやろか」なんて相談している。この明るさ、脈絡のなさ! 素晴らしい感性だ。

そういう感性、クリエイティビティは、特定の人をエリート教育したからといって身に付くものじゃない。膨大な「創造性の海」があることが大事。その海の中で、たまたま光が当たった人が認められるだけ。日本のサッカーが強くなったのもサッカー人口が増えたから。バレーボールはトレーニングのための技術やシステムは完璧だが、やる人が少なくなったので弱くなってしまった。

つまり、おちゃらけた人が大勢いないと、クリエイティビティは磨かれない。例えば、街なかでボールを投げるふりをすると、東京人は遠巻きに見てるだけ。大阪では必ず受けるふりをする人が出てくる。そういうおちゃらけ精神こそ、関西の最大の資産なのに、最近はますます東京の真似ばかり。不況が長引くほど、東京、つまりアメリカ型の市場経済が魅力的に見えるが、決して魂を売ってはいけない。

弱肉強食の市場原理を貫いているかに見えるアメリカでさえ、長く繁栄を続けている会社は、経営者が強いリーダーシップで引っ張ってるわけでも、次々に従業員をリストラしてるわけでもない。むしろ一人ひとりの自由な発想を大切にして、「みんなで楽しくやろう」という会社が長持ちしている。

加えて早晩、デフレが止まったときには、全く違う経済社会が出現する。全員の所得が上がることは、もうあり得ない。現に今も知的創造分野では、一流と二流の所得格差は約100倍。松井選手は年俸6億円、二軍選手は600万円程度だし、家庭教師でも学生アルバイトは時給2千円だが、一流のプロは20万円稼ぐ。この「100倍の法則」があらゆる分野に行き渡り、100人中1人だけ大儲けするのが、自由競争社会の最終的な姿。つまり99%の人は景気が戻ってもビンボーなまま。雇用はあっても年収が低くなるから、「お金がなくても幸せ」な社会をつくっていくしかない。既にヨーロッパでは夫婦共稼ぎで年収300万円くらいが普通なのに、みんな幸せに暮らしている。

日本もこれからは「楽しく生きられる術」を持ってる人が、勝ち。東京人はきっと「俺は人生の落伍者だ」と暗くなっていくが、関西人なら「まあええか」と明るく前へ進む。「関西一人勝ちの時代」は、すぐそこまで来ている。そんな時代を謳歌するためにも、関西人は笑いのセンスにいっそう磨きをかけ、「まあええか」のラテン気質で、明るく、しぶとく、したたかに、デフレを乗り切ってほしい。■


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