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2003.02.15
『都市文明』への視点──
  その起源と本質の先に

竹山 聖

たけやま せい
建築家;京都大学大学院工学研究科助教授
1954年大阪府生まれ。京都大学建築学科卒、東京大学大学院博士課程修了。83年設計組織アモルフ設立。東京理科大学講師を経て現職。古代都市遺跡を訪れ、都市発生を探求。97年京都市内の6大学で教える若手建築家や学生と共に京都建築大学ネットワーク(KASNET)を結成。主な作品「MARUYO 代官坂」「OXY乃木坂」「D-HOTEL大阪」「強羅花壇」など。著書「独身者の住まい」など。


都市は日本語で「都の市(いち)」、中国語では「城市」と書く。その言葉どおり、都市はマーケット──モノとモノを交換する場として誕生した。

都市の発生は、紀元前3000年頃のメソポタミアに遡る。マーケットが生まれ、取引の約束事を記すために文字が出現、調停のために権力が出現した。権力者は平和なマーケットを提供する代わりに「賦金」を納めさせ、それで神殿を築き、軍備を整えた。宗教と軍事力で都市を治めたわけだ。

だから都市とは、最初に住民ありきではなく、マーケットありき。そこに人が集まり、そのシステムをコントロールする官僚組織ができた。物質的には何も生産しないが文字が書ける、要するにホワイトカラーが都市とともに出現した。

紀元前2000年期には物流が拡大し、世界マーケットを開いたのがフェニキア人で、文化的に洗練させたのがギリシア人。彼らは神殿だけでなく、野外劇場やジムナジオン(運動施設)、スタジオン(競技場)などアメニティプログラムを生み出し、オリンピックなどのイベントも行った。多くの人を集めるとマーケットが活気づき、都市の富が増すと判ったからだ。それをローマが軍事力で継承し、都市文明は環地中海全域に広がった。

それはヨーロッパが「暗黒の中世」を迎えた後もアラブ世界に引き継がれ、イベリア半島にアラブ最大の繁栄を誇る都市・コルドバが築かれた。当時の戦争は都市を落とすこと。近代戦争は国境を獲ることだが、かつては、すべての文物が集まっている都市を落とせば一帯を支配できた。

当時、アラブは文明的にも最先端だったから、今の僕たちが英語を学ぶように、中世ヨーロッパ人はアラビア語を学んだ。アラブに学んで力を蓄えたヨーロッパは、十字軍でアラブを駆逐しようとした後、ルネサンスを開花させたが、その原動力になったのもマーケットだ。マーケットが広がって国際化し、アラブから古代ギリシアやローマの文化が改めて流れ込んだからだ。

やがて18世紀末に産業革命が起きると、都市は大きく変貌する。それまで細々と農作業をしていた人々が工業労働者として都市に囲い込まれ、「工業都市」という新しいタイプの都市が生まれた。同時にマーケットの支配者として現れたのが、近代国家だ。国家は国内に安定したマーケットをつくるため、プレイヤーとして大企業を育て、それに成功したのが今日の先進国と言えよう。

ところが近年、グローバル化が進み、企業自体が国内マーケットを超えて世界市場をめざすばかりか、企業や国家に頼らない個人プレイヤーも誕生。国家と大企業と国内マーケットという「近代国家の三角形」は解体しつつある。

近代国家を経験した僕たちにとって、都市というと工業都市のイメージが強いが、それはたかだかここ200年のこと。もともと都市は何も生産せず、モノ・人・情報を交換するだけの場。都市の本質はやはりマーケットであり、それをグローバルに開いていくことが、都市の戦略としては最も正しい。実際、世界のトップ都市はニューヨークもロンドンも、パリ、ミラノも、みんな国家を超えたアイデンティティを持っている。

翻って関西を見たとき、関西の力を削いでいるのは、一旦国家を経由しないと世界と繋がらない今のシステムかもしれない。 しかし逆に言えば、関西がグローバルにマーケットを開き、国際的に通用するアイデンティティを築くことができれば、日本という国家のコントロールに服さなくても自立していける。

だから関西、とりわけ大阪の戦略としては、まず都心部にモノ、人、情報が流れ込むマーケットを築く。国際的なレジデンシャルゾーンをつくり、領事館もすべてそこに移し、インターナショナルスクールも整備して、外国人を住まわせる。そんな安心して都心生活を満喫できる環境を整えれば、日本の熟年層も住みたがる。とりわけ遊び慣れた団塊の世代が高齢化するこれからは、都心回帰はさらに進む。国際的なマーケットと高齢者のマーケット──それらを目に見える形でつくり、ふさわしいプログラムを準備することが、これからの最重要戦略だ。

そしてマーケットの顔である都市景観について言えば、景観的アイデンティティを意識するあまりか、建築物にとってつけたような日本風デザインが施されていることがある。そんなことをしなくても地域特性は自ずと現れる。例えば関西の建築物は鮮やかな色づかいが多く、関東はモノトーン。白砂の関西とローム層の関東、土の色が違うからで、美しさを追求すれば自然とそうなる。

むしろ僕は、「時代の技術」が景観を決めると思っている。建築は時代を映す鏡、常にその時代の先端イメージの反映であるわけで、中途半端な飾りは要らない。そもそも技術自体、自ずと遊びの要素を含んでいる。それは古代メソポタミアで都市の発祥からしてそうだった。人間が生きるには麦や羊があれば十分なのに、彼らはラピスラズリや紅玉など贅沢な工芸品を欲しがった。必需品と贅沢品の交換から都市が生まれ、文明が築かれたというわけだ。電気だって、最近は必要なことばかりに使われてるわけじゃない。ルミナリエも生活には必要ない。でも人を感動させる意味では必要で、これが人間の面白いところ。「遊び」が文明を進化させる、というわけだ。

要するに景観は、見る人に感動を与えられるかどうかが決め手。人の心を動かす遊びに技術が使われ、人が元気になれば社会総体の生産力は上がる。この社会総体の元気をどうつくるかを考えるのが、古代メソポタミアで出現した非生産層、つまり官僚や神官、書記官だ。畑を耕す人は日々の生活しか考えないが、それでは文明の進化はない。長い目で社会を豊かにするにはどうするかを考える人が、都市にはやっぱり必要だ。

その意味で大阪は、長期的にマーケットをどう開いていくのか。最後に一つ指摘しておけば、大阪は外の人をどんどん入れることだ。インターナショナルであることが、都市の活気・元気には欠かせない。本来都市は外に開き交わる場であるのだから。■


関連資料

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