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2003.01.15
『地域主権』への視点──
  人づくりと地域づくり

橋本 大二郎

はしもと だいじろう
高知県知事
1947年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部、法学部卒。72年NHK入局、報道局社会部デスク、同副部長、報道局科学文化部次長などを歴任し、91年退局。同年高知県知事に就任、現在3期目。著書『知事─地方から日本が変わる』『いつもハッピー』『破天荒、大二郎がゆく』『政治家無用論』『土佐発 情報維新』『未来日本の構図』、共著『知事が日本を変える』『対談 知事として』など。

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2000年4月に地方分権一括法が施行され、上下関係にあった国と地方が対等な関係になった。国の事務を、いわば下請けの形で県が代行する「機関委任事務」がなくなり、「法定受託事務」と県が独自仕事として行う「自治事務」という名前に変わった。

しかし実際は、地方の裁量権はさほど広がっているわけではない。事業推進に関係する個々の法律が全く変わっていないからだ。いくら地方が主体的に取り組もうとしても、法律に縛られ身動きがとれない。法律自体を見直さないと、地域主権も実効性のあるものにはならない。

要するに地域主権のあるべき姿には、未だなっていない。国と地方の関係で言えば、今、国が進めている構造改革の基本コンセプト──地方にできることは地方に、民間にできることは民間に任せる、ということ自体は間違いではない。地方にできることを任せず、国の関与がまだ多いので、それはどんどんなくしてもらいたい。しかし一方で、国は何を担うかをきちんと示して欲しい。国の役割について一定の議論と合意があって、それ以外を地方や民間に任せようというなら解るが、それを曖昧にしたままでいることが、歪みを生んでいる。

例えば道路関係4公団の民営化議論も、国として道路整備をどこまでやるかを決めた上でなら、特殊法人民営化の手段や方法の議論だけで済んだのに、それが混在していたため、混乱を極めた。防衛や外交、基礎教育といった誰もが納得する分野以外に、国は何をどこまでやるのか。その議論をまずしないことには、構造改革が財政的な逼迫感からの辻褄合わせに終わりかねない。

それは地方交付税の議論にも見られる。財政制度等審議会では、地方交付税の「財源保障機能」は地方のコスト意識を低下させる一因だから廃止してはという提案が出ている。財源保障機能とは、各自治体の小中学校の教職員数、警察官数など、法律で義務づけているものに対し、国が一定の財源を保障するものだ。この廃止は、地方の自由度の拡大につながり、流れとしては正しい。しかしそれには法律による義務づけの解消、つまり国の関与をいっぺん整理することが必要だ。それをしないままでは、国の財政上の問題から、この金額を削ろうと地方にツケを回す形の改革としか思えない。方向としては正しいが、進め方が問題だ。

とはいえ、国の改革を待つのではなく、私自身、地方からの改革は既に始めている。今、関心があるのは人づくりだ。地域資源を生かせるかどうかは、人次第。どんなに良い資源があっても、それに気づき、マーケティングを理解し、実行する人がいるかどうか。リーダーシップをとって町を支えていける人材、地域主権を具体化していける人材をつくれるかどうかにかかっている。

だから県も、従来型の研修を変え、コンピテンシー型の能力開発を採り入れた。まず求める人材像を示し、自分に足りないものを研修プログラムの中から選び、能力として身につけてもらう。それを評価して、登用する時代になっているんじゃないか。そして県庁だけでなく、県内53の市町村で「高知人づくり広域連合」をつくり、市町村職員の研修に加え、地域住民にも参加してもらって、いろんな面で地域主権に応えられる人づくりをしていこうとしている。

これからの地域づくりで住民参加は重要だ。これまでのように何でも役所任せ、役所は陳情するか文句を言うかの対象という考えではなく、住民側も一緒にやっていく意識を持ってほしい。千葉の松戸市が始めた「すぐやる課」は、ある意味、あの時代の行政のシンボルだった。しかし何でも出ていってやります、はやっぱり良くない。官が担うものと民が自己責任で担うものを互いに意識しながら進めるのが新しい時代ではないか。

高知県では昨年度まで3年間、「県民参加の予算づくりモデル事業」を行った。制約が多い中で予算づくりの難しさや、税金を使うからには責任も生じることを感じて欲しかった。それは大変で時間のかかることだが、絶対に必要だ。だから自治体としては、まずは情報公開と説明責任を果たし、官民が情報を共有し、同じ土俵で議論する。そうやって住民自身が公共サービスの中で何を担えるかを考える──そういう関係にならないといけない。

そして地方の役割としては、私は大学を中心にした新しい街づくり、これまでのような全国一律の金太郎飴ではない地域づくりをしたいと思っている。そのため97年に高知工科大学を公設民営でスタートさせた。高知県は工業品出荷額が全国最下位、ものづくりでは大変遅れた県。企業をパワーアップしても、コスト競争になると中国に勝てない。やはり付加価値の高い製品をつくる技術開発力が必要だと、高知工科大学をつくった。

既存の大学では、東京大学のある駒場にしろ本郷にしろ、そこに新しい街をつくることはできない。だけど高知工科大学のある土佐山田町はまだ田園地帯で、これから大学を中心に、アメリカのスタンフォードのシリコンバレーやノースカロライナのリサーチパークのように、金太郎飴でない地域づくりを、10年、20年かけてやっていきたい。

今、日本はすべてにおいてアメリカナイズされ、日本の独自性は失われつつある。地方は地方で東京化が進み、地域の独自性は薄れている。関西も同様だ。NHK記者の時、77年から4年間、大阪に勤務した。大阪はとても面白い街で、面白い人も大勢いた。それがいつの頃からか、徐々に東京化現象が始まった。東京化現象が始まると、やはり東京には勝てない。大阪の持つコテコテの雰囲気は、まさに他にはないものだ。他の都市が東京をめざし一律化していくなかで、大阪の持つ文化的な強さを見失わず、もう一度生かすよう考えてほしい。

大阪が強くならないと、四国や中国は大変。東京は市場としては大きいが、遠く、物流コストの問題がある。大阪が強くて、大阪との取引だけで十分飯が食えるとなれば、大阪周辺の地域も変わってくる。それには地方の側からももっと働きかけがあっていい。国際コンベンションも大阪や京都だけに任せるのではなく、四国が一緒になって受け入れる。そういう形で連携する方法もある。互いの生き残りのためにも、ぜひ関西には頑張ってもらいたい。■


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