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2002.07.15
『ものづくり』への視点──
  世界に通じる職人芸継承のために

植田浩史 

うえだ ひろふみ
大阪市立大学経済研究所助教授(中小企業論)
1960年埼玉県生まれ。東京大学経済学部経済学科卒、同大学院経済学研究科理論経済史学専攻博士課程修了。大阪市立大学助手を経て、現職。主な著書『産業集積と中小企業』(編著)、『グローバル競争とローカライゼーション』(共編著)、『日本企業の研究開発システム』(共編著)など。


21世紀、世界の先進国は、産業構造に占める製造業の位置づけが高い国と低い国とに分かれていくだろう。前者の代表はドイツや日本。昨今は情報・金融を軸としたアメリカ型の産業構造が幅を利かしているが、先進国の中にも多様なスタイルがあっていい。製造業を軸とした産業構造もその1つだ。

とはいえ日本の製造業を取り巻く環境は、中国をはじめアジア諸国の急成長で大きく変化した。アジアとの関係や日本の特色、蓄積を踏まえながら、「追いつき追い越せの20世紀型」とは違う製造業のあり方、またそれを実現するための課題と施策を、今後10年くらいの間に真剣に考えていかないといけない。

課題の1つは、熟練技能の継承だ。1980年代のNC(数値制御)マシン登場前、工員たちは旋盤や工作機械など在来型の機械で、経験を積みながら技能を蓄積してきた。一方、NC登場後の世代には、在来型の機械は扱えない。今後日本が多品種少量・高付加価値生産を進めるには、在来型とNCの組み合わせが大事であり、熟練工が引退する前に技能を継承しないといけないが、これが難しい。第一、熟練工自身を含め、周囲がこうした技能を正当に評価していない。また熟練技能は「坐学」では身に付かないのに、学ぼうという若者もいない。ドイツのマイスター制度なども参考に、技能継承の仕組みづくりが必要だ。

熟練技能とは、単なる工芸的な腕の良さではなく、仕事の段取りや問題発見ができる能力でもある。経験を積んだ人なら図面を見ただけで製造コストや日数を弾き出せるし、より良い製品づくりの提案もできる。これこそノウハウであり、ものづくりに精通した中小企業と大手のジョイントも増えているが、一方では試作機だけ日本で造り、生産は海外、というケースも少なくない。中小企業にすれば技術提供に留まり、商売には結びつかないわけで、次第にノウハウを出し渋り、技能を高める努力も怠るようになる。技術・ノウハウに価値を認める慣習がなく、知的所有権への意識も低い日本では、大手も中小も「なあなあ」でやってきたが、このままでは互いに不幸。早急なルール化が望まれる。

さて、ものづくりといえば関西。東大阪に代表される関西の中小企業は、他地域と比べても際立った違いがある。例えばハイテクからローテクまでを扱う多様性。同じ中小企業でも、東京の大田区は精度の高い部品だけを扱う会社が多いが、東大阪の場合は、ロケット部品のすぐ横で、雑貨を造っていたりする。

ローテク品は工賃は安いが仕事は多い。もちろんローテクなだけに容易に海外移転してしまうマイナス面もあるが、必需品が多いから100%空洞化することはない。逆にハイテク品だけに特化していると、工賃は高いが、需要は限られるため、一気に仕事がなくなることもある。また高度に専門化・細分化され、「なんでもできる」という総合性・汎用性に欠ける面もある。ハイテクからローテクまで幅広く扱え、Aが駄目でもBがある、という多様性は、企業や地域が生き残る重要な要件だ。

さらに興味深いのは、関西企業は、中小でも自社のブランド品を持とうとする意識が高いことだ。例えばネジひとつでも「部品」でなく「商品」にしてしまう。実際、金属加工分野で東大阪と大田区の企業を比べると、大田区は「加工賃収入」の比率が高いが、東大阪は「製品収入」が高い。要するに関西人は商売好き。なんでも商売にしてしまおうというバイタリティがある。

ただし関西企業はこれまで「独立独歩」が多かった。大田区などが早くから企業間ネットワークを組んでいたのとは対照的だ。これは多分、危機感の差。関西企業は多様性などが幸いし、これまでなんとか商売が成り立ってきた。しかしこのままでは先が危ういと、最近は変わり始めた。

頑張っている企業に共通するのは、変革に頭を使い、従来の延長上に未来を据えず、新しいビジネスモデルを模索していること。インターネットを活用し、異業種での共同開発や共同受注、情報発信をめざす企業グループも増えてきた。ネットワークは上手く使えば大きな武器になる。これを生かせば、関西人の「商売上手」の手腕をグローバルに発揮できる。中国を商売仇としてでなく、「市場」として捉えることこそ、商魂逞しい関西中小企業の面目躍如。そうやって意識とやり方を変えていけば、ものづくりの未来は明るいはずだ。■


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