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松原隆一郎

2002.07.01
『消費』への視点──
  関西人の購買行動

松原隆一郎

まつばら りゅういちろう
東京大学大学院総合文化研究科 国際社会学専攻教授
1956年神戸市生まれ。東京大学工学部都市工学科卒、同大学院経済学研究科理論経済学専攻博士課程修了。85年東京大学教養学部助教授、のち教授。消費社会化した資本主義の分析には定評がある。主な著書「消費不況の謎を解く」「消費資本主義のゆくえ」「豊かさの文化経済学」「思考する格闘技」「挌闘技としての同時代論争」「さまよえる理想主義」「自由の条件」「経済思想」など。

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日本の流通シーンを見て気づくことは、コンビニに顕著だが、日本は圧倒的に品揃えがいい。アメリカはトイザらスなど広いところでは品揃えがいいが、日本は狭いところで品揃えがいい。狭い売場に売れる物をできるだけたくさん置こうというのがコンビニの発想で、価格は安くない。昨今の100円ショップはコンビニ同様、客のニーズに適った品揃えを行い、さらに値段を下げた。その意味で100円ショップは次元が一つ上がったわけだ。

コンビニを経験したせいで、日本人の消費行動はコンビニが前提になっている。日本人は忙しい。買い物に行けば欲しいものにすぐ出会いたい。ゆっくりした時代には、デパートなど屋上に人を集めて全館回遊させたりしていたが、それは今では嫌がられる。逆にいえば今、探す楽しみはなくなった。

これが平均的日本人(ないし東京人)と関西人で最も異なる点だ。関西人はものを買うとき値切るし、よく喋る。やりとりは関西人にとって楽しみ。一方、とりわけ東京人は気分的に忙しく、あまり喋りたくない。やりとり自体、東京人にはコストという感覚があり、喋らなくていい定価販売を受け入れる。よく関西人はケチと言われるが、それは値切ろうとする行動がことさら目立つから。東京人は黙って安いものを買うが、関西人は喋るから目立つ。

東京人は遊びとしての買い物と日常的な買い物を分けていて、日常の買い物は最短距離で欲しいものを手に入れたい。だからコンビニで用が足せるが、それだけでは寂しいので、フリーマーケットというお祭りで遊ぶ。言葉でやりとりすることを楽しむフリーマーケットは、極めて関西的だ。それは非日常のものとしては、東京で受け入れられる。一方関西人は、日常の中でも遊び、値切ること自体、喋ること自体を楽しむ。ギャグというより、どうでもいいような言葉のやりとり、いわばマッサージみたいな会話。どうってことはないけど、何となく気持ちいい……。その集大成が『探偵ナイトスクープ』という番組で、東京では全くウケなかった。

だが実は、関西の方が「世界標準」に近いと思う。バザールはアジアにもヨーロッパにも昔からあるし、アメリカにはフリーマーケットが多い。いずれも値段はバラバラで場当たり的。売り手と買い手のやりとりで値段がどんどん変わり、この言葉のやりとりがまたマッサージになっていて、「かなわんな」と。東京だとこれが「許せない」と喧嘩になるが、もともとマーケットってそんなもの。その意味で関西風こそ本来の世界の文化だ。

それに対してコンビニみたいな特殊な形態を創ったのが日本の特異性だ。物流網とPOSシステムを整備し、客と会話を交わさなくてもきっちり品揃えするのは、稀にみる珍しい文化。ふつうは何が欲しいかを知るためにも会話をして、そのプロセスを楽しむのに、コンビニはいわば東京の文化で、遊びがない。

消費というのは、いくら安くても欲しいものがなければ動かないし、コンビニのようにとことん効率的なのも寂しい。日本人が貯蓄好きという話も、貯蓄率が1〜2%のアングロサクソンと比較した話で、ラテン系とは大差がない。要は家族制度、大家族の国は貯蓄する。むしろ日本では大人が金を使うことが楽しい文化になっていない点が問題だ。ヨーロッパのように無駄な時間を使う文化が日本には定着していない。せいぜい足裏マッサージに時間を費やす程度で、生活を楽しむことや、遊びはまだ消費になっていない。

生活を楽しむという点で、私は関西に期待したい。いまや日本を席巻した効率性の極みのようなコンビニは、関西文化からはズレている。もともと関西には、たこ焼きのような安いものに限りなく情熱を注ぐ面と、阪神間モダニズムのように、文化を生み出すほどの金持ちの消費行動があった。近年、金持ちパワーがなくなったのは残念だが、本来、関西人は消費を楽しむことを知っている。

不思議なのは、いまや東京は9割方が東北人などよその人で、いろいろ集まってる割には、みんな喋らないし、喋っても東京弁だからみんな同じに見えることだ。関西もいろんな人が集まっているが、関西は京都・大阪・神戸・和歌山と個々の色がはっきり判る。東京はいろいろ集まって色を消し合っているが、関西はいろんな色がある。関西は個性が強く、良くも悪くもアクが強い。プラスもマイナスも絶対値が大きい。

ただ最近、関西の個性が少し薄れているのは気に掛かる。関西と似た雰囲気を持つ下町の東京でなく、70年代以降の無機質になった東京を追いかけている。東京は一見ワールドワイドだが、世界的に見てもあんなヘンな都市はない。東京は世界中から人やものを集め、集めることの凄さはあるが創り出す凄さはない。パッチワークが巧いだけだ。東京化が関西沈滞化の最大の理由ではないか。

むしろ関西は、関西にしかない世界に通用するものを探した方がいい。土着文化の中でクリエイティブなことをやればいい。沖縄は今でも民謡の新曲が毎年出ているし、沖縄版紅白歌合戦がある。ああいうことがないと東京に対抗できない。自分たちなりのものを生み出すカウンターの力をなくすと地域は停滞する。ぜひ関西には、世界に通じる独自の消費文化の創造を期待したい。■


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