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宮崎哲弥

2002.05.15
『公』と『共』──
  その立て直しのために

宮崎哲弥

みやざき てつや
評論家
1962年福岡県生まれ。慶応大学文学部社会学専攻卒、法学部法律学科中退。論壇誌、テレビ、ラジオなどのメディアを通じ、政治・社会問題からサブカルチャーまで広範に論じる。研究開発コンサルティング「アルターブレイン」副代表も務める。著書「憂国の方程式─日本愛さぬでもなし」「人権を疑え!」「新世紀の美徳―ヴァーチャス・リアリティ」「正義の見方」「自分の時代の終わり」「身捨つるほどの祖国はありや」、共著「M2 我らの時代に」「日本経済出口あり」「愛と幻想の日本主義」など。


近年「公」を巡る議論が続いているが、私は「公」には二つの側面があると考える。第一は統治権力のあり方としての、つまり国家、公権力の原理としての「公」。第二はより身近な、私達の意識のなかで生きるべき「公」である。

一般に「公」の対義語は「共」。「共」はいわば仲間内のこと。親密で価値観や時間を長く共有する関係で、最も濃厚な「共」同体は家族だ。元来の共同体は家族、村落など伝統的な、「顔の見える範囲」の集団だったが、高度経済成長期から企業、官庁といった機能的組織が共同体化してしまう、という日本独自の病理が表われている。これは、一方で機能集団の本来の存在理由や目的意識、効率性を見失わせてしまい、他方で家族や地域コミュニティの意味を稀薄化させた。

しかしながら、どんな集団、組織も「公」への志向と「共」への志向を併せ持っている。「共」の核たる家族ですら、その上位の集団、例えば近隣、地域、世間に対する意識が影響を与えている。これらが家族にとっての「公」である。同じように企業という「共」にとっての「公」は、社会であり市場である。社会や市場に対して説明責任を果たせないような「公」意識を欠いた会社は、現代企業として失格の烙印を押される。社会や国家もまた国際社会、国際世論という「公」を意識せずにはやっていけない。

このように「公」意識は、それなしには均質化し、内に閉じてしまう「共」の組織を上位から制御し、外部に「開く」働きがある。

例えば企業では最近、内部告発で不祥事が発覚するケースが増えている。内部告発は「共」の観点では裏切り者(!)だが、社会的存在としての企業を考えれば、内部告発は、「公」の立場から「共」のあり方を批判したものであり、開かれた公共社会を構築する上で必須のものとなる。

また本来ならば国益の守り手であるべき省庁が「共」の原理によって省益を追求し、国益を損なう面もあることが明らかになっている。これも内部告発が一定の成果を上げている。

近年激化している「公」と「共」の軋轢は、従来バランスを欠いて「共」の領域が肥大し巨大なムラと化した戦後日本が、グローバル化によって是正されるプロセスといえる。

統治権力の指導原理としての「公」の再定義は、いま「構造改革」というかたちで具体的な政策日程に上っている。構造改革の核心は、政府部門と民間部門の関係の組み替えだ。その流れのなかで政府や地方自治体は、従来型の直接指導者からルールセッターおよび裁定者へと変化しようとしている。当然、「公」も中立化し、公正を重んじるようになっていく。国民や民間企業は一刻も早く、国家依存体質から抜け出さなくてはならない。

ただ、そうした流れのなかで「日本らしさ」が揺らぐ。高度成長以降、大規模な国土開発が進み、日本人のアイデンティティの揺籃といえる自然環境、文化環境が破壊にさらされた。その廃墟にあって、グローバル化の荒波にも耐え得る日本のアイデンティティとは何なのかという模索がはじまっている。

例えばサブカルチャー。とくにアニメ。近未来を舞台にしたSFアニメに1950年代から70年代の失われた日本の風景が頻繁に顔を出す。

Jポップ・シーンでも70年代っぽいメロディやスタイルがいつのまにか主流になっていたりする。

まさに戦後日本人が自己の起源を求めて、記憶を遡及しているようにみえる。私はこういう試行が廃れない限り、日本人が己がアイデンティティを阻喪するこはないと考える。いま危殆に瀕しているのは「公」と「共」の不均衡体制であって、「日本」ではない。■


関連資料

日本人の社会意識 関連図書 「公」を読み解く10冊


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