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2002.03.15
『大失業時代』、大阪の雇用問題のポイントは

猪木武徳

いのき たけのり
大阪大学大学院経済学研究科教授(労働経済学・経済思想)
1945年滋賀県生まれ。京都大学経済学部卒、マサチューセッツ工科大学博士課程修了。大阪大学助教授を経て87年より教授、95〜97年学部長。この間、フランス国立科学研究所客員研究員、独マールブルク大学客員教授、ハーバード大学客員研究員なども務める。労働経済学、経済思想、日本経済論を専門とし、人材の開発・配分や雇用システム、功利主義経済思想などを研究。主な著書「転職の経済学」「自由と秩序」「デモクラシーと市場の論理」、共編著「ホワイトカラーの人材形成」「雇用政策の経済分析」「日本の雇用システムと労働市場」など。2002年4月より国際日本文化研究センター教授。


世界相場から見ると、日本が特に目立つというわけではない。しかし高度成長期の人手不足時代を経験した世代には、今の日本の完全失業率の高さはたしかに異常に映る。なにしろ、石油危機の直後、2%を超えて大騒ぎになったほどだ。現在はその倍以上になり、いずれは3倍になるだろうと言われている。

なかでも大阪府は都道府県別に見ると最も悪い数字を示している。その原因はいろいろ取り沙汰されている。たとえば、他府県に比べ大阪は、廉価な公営住宅の居住者が多い。これらの人々が失職した際、住宅費が高くなる他の地域への移動が(たとえ仕事が見つかっても)難しいのではないか。あるいは外国籍の人々が失業した場合、労働市場に差別があって再就職が難しいのではないか等々。こうした仮説は、信頼しうる手法を用いて、もちろんきちんと検証されねばならない。

しかし大阪の一番大きな問題は、完全失業者の「数」といった雇用の量的な問題ではない。雇用の「質」が悪くなっている点をもっと問題にすべきだろう。この場合、雇用の「質」とは、権限のある、管理・監督的な、「やりがいのある仕事」のことである。これらの仕事が、過去20〜30年の間に大阪から東京方面に流出してしまったのである。大阪から本社機能が東京にどんどん移ってしまったことが最大の原因である。

東京に本社のある企業から、2〜3年の期間だけ、単身赴任の人々が大阪「本社」にやってくる。しかし彼らはあくまでも一時的な滞在者であって、目はつねに東京を向いている。大阪に住み着く予定はない。長期にコミットしようと考える人々こそが、その地域の長期的利益を考え、その利益実現に貢献しようとする気概を持つはずだ。ツーリストがその町の首長選挙に加われないのには理由がある。

現下の大阪の高失業率は、日本全体がこの長期不況から脱出しない限り、特別な解決策はない。しかし雇用の「質」の問題は大阪固有の問題であって、それをどう解決するのか、あるいはどう受け入れるのかを検討して行かねばならない。これはまさに大阪という大都市・歴史都市がいかに再生するかという問題でもあるのだ。■


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