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2002.03.01
『世界観』とは何か──
  日本人は世界をどう観ればいいか

薬師寺泰蔵

やくしじ たいぞう
 慶應義塾大学法学部教授;(財)世界平和研究所常務理事&研究主幹
1944年奈良県生まれ。慶応大学工学部卒、東京大学教養学部卒、マサチューセッツ工科大学政治学大学院博士課程修了。カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、埼玉大学大学院政策科学研究科教授を経て、91年より慶応大学教授。2001年5月まで慶応大学常任理事。公共政策、科学技術政策論、国際関係論などで論陣を張る。日米欧委員会委員、日独フォーラム委員、学術審議会委員。主な著書「テクノヘゲモニー」「テクノデタント」「政治家vs官僚」「無意識の意思の国アメリカ」など。


日本は湿気の多い国である。そのため昔は戸を開け放って蚊帳を吊って寝たものだ。浴衣がけ下駄履きは素足に心地良かった。その原風景を持った日本人がヨーロッパをまね、アメリカをまね、近代国家をつくり、日清、日露を戦い、満州国を建国し、大きな戦争に負け、国土を荒廃させた。原風景の日本とその後の近代国家日本にはあまりにも違いがあり過ぎる。しかしともに日本の姿であり、世界から観た日本の姿である。

グローバル化とはしょせんは欧米化、日本人とは相容れないのではないかと思われている。日本は世界に関心がなくても世界は日本に関心があり、日本が世界に羽ばたこうとしても世界はそれを拒絶する。それは、自他ともに国際人と思っている日本人の殆どが中年を過ぎると浴衣と下駄が恋しくなるのと同じだ。どんなに長くヨーロッパに住んでもヨーロッパ人にはなれない。同じように小泉八雲はどうしても日本人になることはない。こう思われている。やはり日本人は国際人ではないのだろうか。しょせんグローバルな視点は持ち得ないのだろうか。

そんなことはない。下駄を履いていても世界は観えるし、日本を愛した西洋人小泉八雲も世界を観ていた。つまり、近代国家をつくったから世界が観えた訳ではない。世界の大国清国やロシアを破ったから世界が観えたのではない。ここが大事なところだ。

世界観とは、とどのつまり世界の「ランドスケープ(風景)」を描けるかにつきる。世界を駆けるビジネスマンといえど点から点を移動しているだけなら世界のランドスケープを描けない。なぜなら、世界のランドスケープとは「見えない部分も見なければ」描けないからだ。想像力を豊かにして見えない部分を見なければ世界は観えない。見えない部分に「思いを馳せ」なければならないのだ。浴衣を着て下駄を履いていても、世界の見えない部分に思いを馳せれば世界は観える。逆に、日英同盟を結び、世界を相手に戦っても、見えない部分に思いを馳せなければ世界は観えていない。

私は、最近、心境の変化というか思うところがあって、国際政治を学ぶ学生に挑発的な言い方をしている。君たちは国家を見たこともないのにアメリカがどうだとか日本がどうだとか言っている。君たちは自分が絶対参加できないのに国際政治を学んでいる。国際政治学は全く役に立たない。何故なら同時多発テロに対して何も効果的な解決策を示せなかったでないか。全く役に立たない学問をなぜ君たちは学ぼうとするのか。

そう学生を挑発しながら明日の日本を支えるグローバルな視点を持った若者を育てたいと思っている。見えない部分に思いを馳せ、世界のランドスケープを描ける若者を。外国語など出来なくて良い。世界に興味があり、山の向こうに何があるのかなあと子供のころ思ったように、自分の住むところ以外の人々、文化、社会、国家、そしてその国家の企み、戦略、憎しみ合い、に思いを馳せれば、直接参画しなくても、国家も世界も観えてくる。そして参画できる。この逆説の中に世界観の本当の意味がある。世界観は育てるのではなく、自分の観念の中に育てるのであり、それを確認するために現地に行けばよい。現地語を学べばよい。日本人の世界観はどうも逆さまのようだ。■

世界平和研究所ホームページ


関連資料

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