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2002.01.15
『電力自由化』のあり方

野村宗訓

のむら むねのり
関西学院大学経済学部教授(経済政策)
1958年神戸市生まれ。関西学院大学経済学部卒、同大学院経済学研究科博士課程修了。大阪産業大学助教授などを経て、現職。英国における競争政策と民営化政策など研究。主な著書「電力─自由化と競争」「民営化政策と市場経済─イギリスにおける競争促進と政府介入」「イギリス公益事業の構造改革―競争移行期のユーティリティズ・ポリシー」、共著「電力市場の参入者」「公益事業の評価と展望」など。


2001年は1月のカリフォルニア州電力危機に始まり、12月のエンロン倒産で終わった。これはあまりにも一面的な現象だけを捉えた誇張表現かもしれない。しかし、エネルギー・金融関係者に「昨年の10大ニュースは?」というテーマで今からインタビューしたとしても、おそらくこの2つは上位にランキングされるであろう。それほどインパクトが強かったのは否定できない。

では、日本の一般国民がこれらの事実をどのように受け止めたのだろうか? 予測の域を出ないが、電力危機に関しては過去に米国滞在の経験があるか、西海岸近辺を旅行した人なら、成り行きをフォローしていたかもしれない。エンロンについては国内で発電所建設の可能性があった地域の住民なら、新聞記事に目を通していたはずである。残念なことだが、それ以上の反応はないと思われる。

「新規参入者が出現すれば価格が低下する」という論理は経済学的に正しい。電気料金の引き下げを望む大多数の国民は純粋理論を信じて疑わない。だが、現実には「新規参入者が価格を操作した結果、既存の大手電力会社が支払不能によって倒産する」事例や、「新規参入者が倒産して、供給契約の破棄によって需要家に被害が及ぶ」事態もみられる。もちろん、この背景にはその国や地域の電力規制当局が制度設計を誤った点や企業グループとしての戦略にミスがあった点など、複雑な要因が絡んでいる。

エンロンの倒産によって日本の金融界はMMFの元本割れなど大きな打撃は避けられないが、国内の電力ビジネスについては本格的な操業前であったので、影響は軽微にとどまっていると考えられる。しかし、自由化に失敗した代償は小さくなく、例えばカリフォルニアでは結果的に州政府が倒産企業の業務を引き継ぎ、公営化という意図していなかった結末になった。極論だが自由化の理念を徹底的に押し通すのであれば、倒産とそれに伴う停電は当然であり、州政府の救済策は不要であるという主張も成り立つ。しかし、誰もこの主張を認めないに違いない。

電力とは異なるが英国の鉄道事業でも類似した事件が起きている。1993年に国鉄(BR)は「発送電分離」と同様の「上下分離」という手法を用いて分割・民営化された。列車運行会社25社とインフラ専門会社1社に分けられたが、民間企業となったインフラ会社レールトラックが昨年10月に倒産するに至った。倒産後の管財人が指名されると同時に、政府はこれまでどおり鉄道ネットワークを維持する方針を明らかにしている。

以上のように、米英の改革から鮮明になったのは、自由化の進展によって供給停止に陥る危険性がある点と、最終的に政府と利用者は安定供給の継続を望んでいる点である。確かに、ドラスティックな自由化は短期的に経済活性化の恩恵をもたらしてくれる場合もある。しかし、重要な問題は中長期的にインフラ投資が円滑に行われるのかという点である。日本の電力自由化を進める際には、発電設備の建設と送電網の拡充があげられる。この点を熟慮した上で、将来を見据えた判断に基づき自由化の見直しが進められなければならない。さらに、国民の多くが自由化の実態についての知識を深め、世代を超えたインフラ整備の必要性に理解を示すべきである。■


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