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「日本初! モデル検査支援ソフトウェアの開発
 ――ソフトウェア開発工程での不具合を早期発見」

2007.10.15
関西電力研究開発室電力技術研究所の篠崎孝一主任研究員



関西電力研究開発室電力技術研究所
主任研究員 篠崎孝一

ソフトウェアの信頼性向上に貢献──。関西電力はエネゲート、メルコ・パワー・システムズと共同で、ソフトウェアの開発工程でシステムの不具合を早期発見できる「モデル検査支援ソフトウェア」を開発した。その特徴は? 商品化の目処は?──関西電力研究開発室電力技術研究所の篠崎孝一主任研究員に訊いた。

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――そもそも「モデル検査」とは? ●○●
機器類を制御するソフトウェアを開発する際に、機器のすべての動作パターンを自動的に抽出し、設計上の不具合を発見するもので、設計者が見落としがちな不具合を未然に防止し、ソフトウェアの信頼性を向上させる技術だ。日本語や英語などの言葉が持つ意味のバラつきを避けるため、厳密に定義した「数学モデル」をつくってコンピュータに入力したうえ、そのモデルが取り得るすべての可能性を網羅的にチェックして、不具合が起きないかどうか、自動的に検証する。もともと1980年代にアメリカで確立された技術だが、非常に高度な数学的理論が必要で、誰もが扱えるわけではなく、今まではNASAの宇宙開発や航空機など、非常に高い信頼性が要求される極めて限られた分野でしか使われていなかった。

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――今回開発した「モデル検査支援ソフトウェア」とは? ●○●
モデル検査を行うために必要となる複雑な検査プログラムを、フロー図の作成により自動生成して、使い勝手を大幅に改善できるソフトウェアだ。ソフトウェアの動作をパソコン上にフロー図の形で入力すれば、それを読み取ってコンピュータが自動的に検査プログラムを書き、モデル検査をしたうえで不具合があればフロー図上で「ここが違う」と教えてくれる。従来のモデル検査の場合、設計者は自分が設計するソフトウェアのプログラムとは別にモデル検査用の言語を習得し、それを使って検査プログラムを書かなくてはならず、検査結果データから不具合を読み取るにも時間がかかった。この支援ソフトウェアがあれば、専門的な数学知識がなくても、普段から描き慣れているフロー図を使い、簡単に検査することができる。

――支援ソフトウェアを使うと、どんな効果が期待できる? ●○●
ソフトウェア工学の専門家でなくても、産業用ソフトウェアの開発現場でモデル検査が実施でき、作業時間も従来の5分の1程度に短縮できる。その結果、設計品質が向上して、ソフトウェアの作成後に不具合が見つかり初めに戻って修正する、いわゆる「手戻り」が減る。実は日本は欧米に比べ、ソフトウェアの「手戻り」頻度が非常に高い。「手戻り」というのは、戻る手間も大変だが、修正することにより今度は別の不具合が出るようなこともある。検査して直す「下流工程」も大事だが、最初の設計段階──「上流工程」にもっと力を入れようと国も言い始めており、モデル検査支援ソフトウェアは、その上流工程で不具合を早期発見できるので、ソフトウェアの信頼性向上と開発作業の効率化に大きな威力を発揮するはずだ。

――でもなぜ関西電力がこういう研究をしているのか? ●○●
産業技術総合研究所が、産業界に役立つ研究をしていこうと、彼らの持つモデル検査の技術シーズについて共同研究する民間企業を探していた。関西電力もさまざまな制御システムを使用しており、常々ソフトウェアの信頼性向上の重要性を認識していたので、早速手を挙げ、2002年末から共同で研究を始めた。最初の3年間、いろいろなソフトウェアへの適用実験を繰り返した結果、すごい技術だということは分かったが、実際に検査プログラムを書くのは非常に大変。でも、このままでは、この素晴らしい技術が産業界には広がらないと感じ、「もっと簡単に使える支援ソフトウェアをつくろう」と、関西電力グループのエネゲートがフロー図による入力機能を、三菱電機グループのメルコ・パワー・システムズがフロー図からモデル検査プログラムへの自動変換を担当し、3社共同で「モデル検査支援ソフトウェア」を開発したというわけだ。

――具体的にはどんな分野への適用が考えられる? ●○●
受注ソフトウェア開発は、経済産業省の統計では、国内市場が年間約6兆円と言われており、まさに目に見えない工業製品である。今やソフトウェアは産業機械から自動車、家電、携帯電話まで、ありとあらゆるものの中に入っており、身近な分野にも広く適用できると思っている。そもそもこの支援ソフトウェアを開発したのも、電気事業用というより、「誰でも簡単に使えるものをつくって社会の役に立てたい」という思いからなので、産業界にどんどん広まっていけば嬉しい。

――開発にあたって、苦労した点は? ●○●
まず一番大変だったのは、我々自身がモデル検査を理解し、自由に使えるようになること。その習得と産業用に使えることの実証に3年間かかった。また、支援ソフトウェアをつくると決めてからは、どのようにすれば使い勝手を高めることができるかに苦心した。例えば、一からフロー図を描くより、ひな形があったほうがラクだとか、文字入力用のウインドウはどういう形式にしておくと便利か等、細部にわたって使いやすさを追求するのに苦労した。

――今回開発したソフトウェアを、ホームページで公開しているそうだが? ●○●
モデル検査という技術自体がまだ十分認知されていないので、まずは知っていただくことが必要と考え、06年1月に「モデル検査によるソフトウェアテストの実践研究会」を立ち上げてWebページを開設。07年4月から支援ソフトウェアの試供版とマニュアルを誰でもダウンロードできるようにした。近年EUが推進している国際的な安全規格で、モデル検査のような数学的手法が要求されていることから、自動車関連メーカーや大学の研究機関等からのアクセスが多い。

――市販の予定は? ●○●
商品としては既に市販できるレベルに仕上がっており、なるべく早期に、できれば08年中には有償提供を始めたい。しかし、あまり高価だと敬遠され、今回のソフトウェアの良さも分かってもらえないので、もう少し認知度が高まってニーズが増え、安価な価格で発売できる状態になればと思っている。

――最後に、今後の抱負は? ●○●
ホームページ開設から約1年半、これまでは「まず知っていただく」ことを重点的に取り組んできたが、そろそろ次のフェーズ──実際に使っていただく段階へステップアップする時期。そのために、使用方法を教える技術セミナーを実施したり、ソフトウェア業界のシンポジウムやワークショップに出展するなど、PR活動を積極的に行っていきたい。この支援ソフトウェアは、高度な検査を誰もが簡単に行えるようにと開発したものだが、小手先の使いやすさだけがウリではなく、モデル検査という数学的理論に裏付けられた非常に信頼性の高い技術を使いこなせるところが優れていると自負している。しかも我々が調べた範囲では、国内はもとより海外にも同種のものはないので、これがデファクトスタンダードとして定着し、「ソフトウェア開発時はモデル検査が当たり前」になれば、こんな嬉しいことはない。それによって「手戻り」も激減し、日本のソフトウェアの信頼性がさらに高まることを願っている。 ■


「実践! ソフトウェアモデル検査」>> http://www.modelcheck.jp/



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