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「世界初! マングローブ生長予測システム」

2007.04.01
関西電力研究開発室電力技術研究所環境技術研究センターの吉竹了所長



関西電力研究開発室電力技術研究所環境技術研究センター
所長 吉竹 了

地球環境保全と持続可能な社会の実現へ──関西電力らがタイで2000年度から取り組んできたマングローブ生態系修復のための植林技術開発研究において、先頃3つの大きな成果を得た。その経緯や具体的成果、今後の抱負は?──関西電力研究開発室電力技術研究所環境技術研究センターの吉竹了所長に訊いた。

――関西電力のマングローブ植林技術開発のこれまでの経緯は?  //////////
まず、1996年度からオーストラリアの海洋科学研究所と共同で、マングローブのCO2固定能力研究を4年間行い、その固定能力がかなり高いことが判明した。一方、90年代初めから東南アジア沿岸部でエビ養殖地の拡大や無計画な開発によるマングローブの減少が生態系破壊として社会問題化していることに注目、2000年度からタイ王国 天然資源・環境省 海洋・沿岸資源局と関西電力グループの環境総合テクノス(KANSO)と共同で、マングローブ林の復元、植林技術の開発研究に取り組んできた。この研究に着手して6年半になるが、第1フェーズでは植林手法の開発とCO2固定量の測定研究、第2フェーズでは主にマングローブ生長予測システムの確立に取り組んできた。

マングローブ
マングローブ

――生長予測システムとは?  //////////
マングローブを植林する場合、基本的には、もともとマングローブの生態系があったところに植林することが多いが、環境が既に変わってしまっていて、なかなかうまくいかない。生長には地盤の高さや土地の硬度、土壌成分など、いろいろな条件がある。こうした環境条件に生長を左右されやすく、かつ植林に時間と費用を要するマングローブを、失敗なく効果的に植林するために、生長予測システムを開発することにしたわけだ。我々は環境条件の異なる10地点で合計100haの植林にチャレンジしたが、その時点で持ち合わせていた技術を使っても、順調に生長したのは約半分であった。そこで約100カ所、1500本のマングローブのデータを分析し、どの因子がどの程度生長に影響するかを解析することにより、13種類のパラメータを用いた生長予測式を設定した。つまり、今この条件でこの地域にこの樹種を植えると、2年後の樹高はどのくらいになっているか算出できるというもので、失敗なく植林できるというメリットが1つ。もう1つ、生長予測に基づいて診断し、事前に対策をとることもできる。例えば、成長目標80cmに対し40cmという予測が出たら、どこが悪いのか目標達成に必要な条件をシミュレーションして、肥料を増やすなど最適な対策をとることができる。これは世界初の予測システムであり、国際特許を出願する予定だ。

――2つ目の成果が、マングローブの津波被害抑制効果の検証?  //////////
ちょうど生長予測研究の最中、2004年12月にスマトラ沖大地震によるインド洋大津波があり、そのときに、沿岸部にマングローブ林がある地域は被害が比較的小さいという情報を聞き、実際にはどうか解析してみた。現地調査と人工衛星のデータを解析して、マングローブとヤシとモクマオウ、3つの樹種の被害度を調べたところ、モクマオウが沿岸から内陸部へ1,320m、ヤシが1,110mまで被害があったのに対し、マングローブは520mと、一番、津波被害を抑制することが判明した。

――なぜ被害を抑制することができる?  //////////
マングローブは根に特徴がある。「支柱根」といって、1本の木から何本も足のように根が生えていて、それが文字どおり木を支えている。当然、木の表面積が広くなるため、障害物として津波のエネルギーを吸収しやすい。今回それがデータ的にもきちんと証明できた。我々はこういうデータをタイをはじめ各国政府に提示して、地球温暖化防止にもなるし、津波被害抑制効果もあるので、積極的にマングローブを植えようと働きかけていくつもりだ。

――温暖化防止に役立つという点で、マングローブのCO2固定能力はどのくらい高い?  //////////
マングローブというのは熱帯・亜熱帯の汽水域──海水と淡水が混じる場所に生息する支柱根を持った植物の総称で、かなり根を張るので、木だけでなく根の部分でもCO2を固定する。その固定能力は熱帯林に匹敵するくらい高い。

――今回3つ目の成果として、そのマングローブCO2固定量測定方法を開発したとか?  //////////
これは、もともとマングローブがどれぐらいCO2を固定するか調べるとき、今までは実際にマングローブ林に人が入って、木の大きさや幹の直径などを代表的なポイントで測り、全体ではこれぐらいのCO2固定量があるだろうと推定しており、非常に手間と時間がかかっていた。私も実際、現地へ行ったが、マングローブ林があるのは泥沼みたいな湿地帯だから、深く足を取られてしまい、本当に大変。その手間を省こうと、リモートセンシングで上空からマングローブ林全体を捉えて測定する方法を開発した。衛星写真だと解像度が悪いので、今回は無線ヘリコプターで撮影した画像を用い、画像範囲を狭めることで解像度を上げ、測定精度を高めた点がポイントだ。衛星写真だと解像度は数mオーダーでしかないが、無線ヘリだと数十cmオーダーという鮮明さ。そのオーダーで葉緑素を特定する波長の画像を処理することで植林密度を推定、90%前後という高い精度で簡単にCO2固定量を算出できる技術を開発した。これも国際特許を出願している。

――3つの成果が出たことで、ビジネスなどは考えている?  //////////
こういった研究成果を得たので、今後、協働していたKANSOが海外の植林事業でのコンサルティングなどに活用していく。既にKANSOは2006年からJICAがスタートさせているミャンマーの住民参加型マングローブ総合管理調査プロジェクトに参画している。

――では関西電力として今後の抱負は?  //////////
国連の発表では、全世界でマングローブ林は毎年約28万haが失われている。我々が今回行ったのは、植林事業でなく研究であり、その成果を各国政府や企業にどんどん役立ててもらいたい。我々はもともとCO2問題からマングローブに着目したが、現地の人にとってはむしろ津波被害や海岸の浸食防止の方が喫緊課題。CO2固定化が大事だとしても、地域社会にメリットがないと植林は進まない。エビの養殖場など、マングローブ林を破壊し環境を汚染しがちだが、地域経済のなかでは重要な位置を占めている。マングローブは水質浄化にも役立つわけで、漁業を続けながらマングローブを維持できれば──マングローブと水産養殖の共存「シルボフィッシャリー」を実現できれば望ましい。実際、平均5年で放置されるエビ養殖場のなかで、27年も持続的な養殖が行われている池があるし、マングローブ林にはマットクラブというカニが棲息していて、それを地元の漁師さんが獲って生活の糧にしていたりする。だから私たちは、この池を調査し、エビやカニとも共存できるマングローブの生態データをとって、タイ政府に提供。こうした持続的養殖システムで地域社会に貢献したい。もちろん環境技術研究センターは、マングローブだけでなく、火力発電所から排出されるCO2の分離・回収などの研究も行っており、電気事業者の責務として多方面から地球環境問題に貢献できる研究をしていきたいと考えている。 ■


研究開発情報>> http://www.kepco.co.jp/rd/index.html



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