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「CO2削減に向けた、関西電力の技術開発は?」

2006.01.01
グループ経営推進本部エネルギービジネス戦略グループチーフマネジャー 磯田宗孝



研究開発室研究推進グループ
マネジャー 小山博之



2005年2月に京都議定書が発効し、実施段階に入った温暖化防止対策。関西電力は、この京都議定書が1997年に採択される以前から事業活動におけるCO2の排出抑制に努めるとともに、CO2削減に向けた研究開発にも積極的に取り組んでいる。CO2の分離・回収から固定化、有効利用まで、多岐にわたる研究開発の成果と今後の見通しは?──研究開発室研究推進グループの小山博之マネジャーに訊いた。

――関西電力がCO2削減技術の開発に取り組み始めたのは? //////////
関西電力に限らず、電力会社は化石燃料による発電時に多くのCO2を排出しているため、その削減技術の開発は、我々の責務。地球温暖化が問題視されるようになった90年代初頭、リオ地球サミット前年の1991年から研究に着手した。研究は、1つは発電所から排出されるCO2を分離・回収し、地中や海洋に固定化、あるいは有効利用する技術。もう1つは大気中のCO2を吸収・固定する技術。この二本立てで研究を進めている。

――具体的にいうと? //////////
核となるのは、火力発電所のボイラーから排出されるCO2を分離・回収する技術だ。関西電力は、91年から三菱重工と共同で「化学吸収法」による分離・回収の研究を進め、既に実用化レベルに達している。設備的には2つの塔を持つ単純な化学プラントで、まず燃焼排ガスを「吸収塔」に引き入れ、排ガスからCO2だけを吸収する「吸収液」に接触させた後、吸収液を「再生塔」に導き、蒸気加熱するとCO2が分離する仕組みだ。分離・回収技術としてはほかに、物理吸着法、膜分離法があるが、実用化レベルにあるのは化学吸収法だけ。他の方法では大量の排ガスからCO2を回収するのは難しい。関西電力は当初から、この化学吸収法の開発に取り組み、大阪の南港発電所に1日2トンのCO2が回収できるパイロットプラントを設置して実証実験を続けている。実際の発電所の排ガスを使い、これだけの規模で実験できるプラントは世界でも例がない。

――この技術開発のポイントは? //////////
いかに効率の良い「吸収液」──つまりCO2をたくさん吸収し、少ないエネルギーで分離できる吸収液を開発できるか。同じ化学吸収法でも、米国で70年代後半から開発されてきた方法では、回収コストが高くつく。そこで我々は、エネルギー消費と吸収液のロスを大幅に低減させる独自の技術開発に取り組んだ。この吸収液の開発に6〜7年かかったが、完成したKS-1、KS-2、KS-3という3つの吸収液は、いずれも従来の液に比べ、回収エネルギーを20〜25%低減。国際特許も取得しており、現段階で世界最高効率だ。現在は主にコスト低減のための技術開発を進めていて、回収コストは従来を100とすれば、今は60くらい。さらに低減するため、吸収液やシステムの検討を行っている。

――分離・回収したCO2はどうするのか? //////////
大きく分けて、工業プロセスで有効利用する方法と地中などに固定化する方法があり、有効利用としては既にいくつかの実機プラントの導入実績がある。例えばマレーシアの国営肥料会社・ペトロナス肥料では、我々が納入したプラントが99年から稼働しており、1日160トンのCO2を回収し、農業肥料用の尿素を生産している。さらに大規模なプラントを2基、インドの肥料会社に納入することが決まっているし、国内の化学会社でも05年12月からプラントが稼働している。また、分離・回収したCO2とメタンからジメチルエーテルを合成する技術も研究している。ジメチルエーテルは取り扱いが容易で人体に無害、燃焼ガスもクリーンなので、LPGや自動車燃料の代替として期待できる。

――CO2の利用法として「EOR」という技術もあるそうだが?//////////
EORとはEnhanced Oil Recovery──石油増進回収。通常、油田から採掘できる原油は埋蔵量の3〜4割だが、CO2を油層に注入すれば、原油の粘度が下がって採掘しやすくなり、採掘率は5割前後に向上する。いわば、出にくくなった老朽油田をCO2の力でもうひと働きさせる技術。この技術で05年12月、三菱重工とスーパーメジャーのロイヤル・ダッチ・シェルグループが提携。我々の開発した吸収液KS-1を使い、近くフィジビリティスタディを行い、結果が良好なら、中東湾岸諸国の老朽化した油田に適用していく計画だ。スーパーメジャーは資金力も技術力も豊富だから、大半の技術は自前で開発するが、そんな彼らが技術提携に踏み切ったのは、それだけ我々のCO2分離・回収技術の有用度を評価している証拠。排ガスからのCO2回収はまだコストがかかるが、原油が出てくるなら十分ペイできるわけで、CO2利用の観点からも大きな転機になると思う。

――尿素製造はアジア、EORは中東と、適用先はいずれも海外だが? //////////
ニーズのあるところを探すと、必然的に海外にならざるを得ない。例えば現在、石炭火力発電所の排ガスからCO2を分離・回収する技術の検討も進めており、長崎にあるJパワーの松島発電所で実証試験を行っているが、これも石炭火力の多い海外への導入をにらんだもの。将来的なマーケットとしても、基本は海外になると思う。

――一方のCO2固定化技術の開発状況は? //////////
現在研究が進んでいるのは「帯水層貯留」と「炭層固定」。帯水層貯留は、地下1000mほどの砂礫層にCO2を注入して固定化させるもので、RITE(地球環境産業技術研究機構)が技術開発を行っている。一方の炭層固定は、同じく地下1000m前後の石炭層にCO2を注入するもの。石炭層は大量のメタンを含んでいるが、CO2の方が石炭への吸着特性が強いため、CO2を注入するとメタンが分離される。不要なCO2を地下に固定し、使えるメタンを回収すれば「一石二鳥」。こちらは関西電力グループの環境総合テクノスが中心となって、北海道夕張の石狩炭田で実証試験を進めている。ただ、帯水層貯留も炭層固定も、まだコスト的にEORのようにビジネスとして成り立つには至っていないのが実情。10年、20年先の技術だと思う。

――大気中のCO2を吸収する技術の方は? //////////
最近の取り組みとしては、竹を炭にしてCO2を固定化する研究を、2004年に建設した「舞鶴CO2竹炭固定・有効利用実験センター」で始めている。竹は生命力が強いため、雑木林を侵食するなど森林の生態系に影響が大きい。特に舞鶴市は京都府の竹林面積の25%を有するだけに、竹林被害も深刻。だからこの研究は、CO2固定による温暖化防止と地域環境の改善という2つの目的を持っており、舞鶴市の全面的協力を得ているほか、地域のボランティアの方々も参加。まさに地域密着型の研究だ。 その一方で、CO2固定能力の高いマングローブ林の修復技術開発を2000年からタイで進めている。タイではエビ養殖場の開発などによって、1961年以降の約30年間で約20万ha──大阪府相当のマングローブ林が伐採されてきた。これを修復し、CO2吸収源を増やそうというのが、この研究の目的。既に植林技術の確立など、一定の成果を上げている。また04年のスマトラ島沖地震を機に、マングローブ林の津波被害の抑制効果についても独自の視点で調査を始めている。

――こうしてみると各研究ともかなり順調なようだが、その要因は? //////////
CO2削減は電力会社の責務ではあるが、だからといって単に研究だけ続けていればいいわけではない。民間企業である以上、しっかり成果を上げないといけない。一旦出たCO2の回収にはコストがかかる。そのため研究当初の先見性と、機敏で柔軟なマネジメント力が必要だ。数ある分離・回収技術の中で化学吸収法に着目したからこそ成果を上げたわけだし、インド洋大津波のようなことが起きた後、それに対応した研究を即座に始めたことで、相手国の信頼も得られた。そういう「しっかりした眼」を持つことが一番大事だと思う。

――最後に今後の抱負は? //////////
CO2に限った話ではないが、とにかく「技術的に」注目される研究開発を行っていきたい。世界初の技術とか、EORのようにスーパーメジャーも一目置く技術。胸を張って発表でき、世の中の役に立つ技術開発を今後も続けていきたいと思う。■


関西電力の研究開発>>
 http://www.kepco.co.jp/rd/index.html
  



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