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「水素社会実現へ──世界初、移動式液体水素ステーションって?」

2005.08.01
岩城



関西電力研究開発室技術調査グループ
チーフマネジャー 岩城吉信



関西電力は、岩谷産業と共同で、世界で初めて液体水素方式による移動式ステーションを開発。燃料電池車の普及に弾みをつけ、水素社会実現への一歩を踏み出した。そのインパクトは? 今後の展望は?──関西電力研究開発室技術調査グループの岩城吉信チーフマネジャーに訊いた。

 

――水素ステーション開発の背景は? //////////

水素はCO2を排出しない究極のクリーンエネルギーであり、地球温暖化防止の切り札として大いに注目されている。とりわけ水素を燃料とする燃料電池車の普及は、今後の水素社会実現に向けた大変重要なテーマとして国も力を入れているが、それにはインフラと利用機器──水素供給ステーションと燃料電池車が一緒になって普及しないといけない。車の方は自動車メーカーが開発にしのぎを削っているが、ステーションは今、国主導で設置したものが首都圏で10カ所、愛知万博会場に2カ所あるだけ。しかもほとんどが定置式、つまりガソリンスタンド形式で、大掛かりなもの。燃料電池車の普及途上では、あちこちでデモンストレーションを行うだろうが、水素をどのように供給するか。本格的な水素ステーションの設置は、コスト的に高すぎて合わない。機動的に供給するため、移動させるのがいいが、既存の移動式ステーションは圧縮水素方式で、車2台分程度の充填容量しかない。だから、もっと低コストで機動的、大容量の水素供給装置が求められていた。

――今回開発したのは圧縮水素でなく液体水素方式? //////////
そう。ガスの状態では圧縮にも限度があり、あまりたくさん運べないが、液体にすると体積が800分の1になるので、コンテナで運べる量が圧縮水素と比べても数倍から10倍くらい増える。だから液体でやりたい。それをいろんなところにデリバリーしていくということで、液体水素方式の移動式ステーションとした。液体水素の製造工場から使う場所までトラックで運び、そこで気体にして燃料電池車に充填する。圧縮水素タイプだと2台分しか充填できないが、今回の液体水素では15台くらいできる。液体水素の移動式は世界で初めてだ。

――開発の苦労は? //////////
燃料電池車に水素を充填する際、現状の燃料電池車の標準的な充填圧力である35Mpa、350気圧くらいまで昇圧しないといけない。それには、できたガスをコンプレッサーで圧縮するより液体の状態で昇圧しておいて、気化して圧縮水素として充填する方が効果的で、そのためには、液体水素の昇圧ポンプが要る。ところがこれが、なかなかない。それと、マイナス253℃という水素を液の状態で持っていると、外部からの入熱でどんどん気化してしまう。これをBOG(ボイルオフガス)というが、タンクに入っている状態で1日2%ずつ目減りするのに加え、ステーション本体にマイナス253℃の液を通したとき、配管などは常温だからクールダウンするまでずっと蒸発し続ける。そういう意味では液体水素全部を燃料として使えない。いかに目減りを抑えるかが課題。今回はタンクから発生する低温のBOGを事前にステーション側に流すことで冷却しておき、ステーション立ち上げ時のBOGを抑える工夫をしている。もう1つの課題は、可搬式にするためのコンパクト化。4tトラックに積載する容積は、道路交通法により規定されており、機器配置等を工夫し規定内の2m×2m×6mに抑えることができた。

――岩谷産業との共同開発の経緯は? //////////
水素供給は岩谷産業さんやガス会社さんが行っており、液体水素のシェアは岩谷産業さんがトップ。種子島などの宇宙ロケット用にも供給していて、実績があった。我々も火力発電を持っているので、水素の原料になる石油やLNGなどの化石燃料を経営資源として持っているし、知見もある。水素社会が来るなら我々も総合エネルギー企業として携わるために、今から調査も含め技術的な知見をもっと蓄積していきたいという思いもあった。我々のグループ会社「堺LNG」が岩谷産業さんと共同で水素を扱っていることもあり、共同開発を決めた。

――今回の開発にはどのくらいの期間を要した? //////////
液体水素による配管クーリング試験や流量計技術など要素技術開発に2年、実際のステーション開発は2004年から1年間。現在、岩谷産業さんの滋賀技術センターで試運転・実証試験を行っている。実は、6月初旬、ミシュラン主催のエコカーラリー「ビバンダム・フォーラム&ラリー2005」があり、電気自動車や燃料電池車、CNG車など地球に優しい車が集結し、京都の国際会館から愛知万博会場まで走行を競った。燃料電池車は6台参加し、スタート地点でこの移動式液体水素ステーションで水素を供給・充填した。

――1回の充填での走行距離は? //////////
250〜300km。ガソリン車の半分くらいだ。ガソリン車と同等くらい走らせるには、タンクの大きさが一緒なら圧力を倍にしないといけない。なんとか500〜600kmにしたいというのが、今の燃料電池車の技術課題だ。

――今、燃料電池車は何台くらい走っている? かなり高額と聞いたが……。 //////////
日本で公道を走っているのは50〜60台くらい。政府の目標は高く、2010年に5万台という、かなり野心的な数字を掲げている。今はまだ研究開発段階にあるので1台1億円程度と高いが、量産化が進めば当然、下がってくる。水素社会に向け、まず利用機器の普及を進めようと、国家プロジェクトとして国が一生懸命後押ししている段階だ。

――諸外国は燃料電池車にどう取り組んでいる? //////////
欧米を中心に水素社会を模索している。主なプロジェクトは、ミュンヘンの空港内にステーションをつくってバスを運行しているのをはじめ、27台のバスをヨーロッパ7カ国9都市で運行。またアイスランドのレイキャビクにはバスが3台。ここは水力や地熱を使ってCO2を出さない水素社会を構築しようとしている。アメリカはカリフォルニア州を中心に車50台バス20台をめざして、実証試験を行っている。

――移動式ステーションは、関西での水素社会づくりに弾みをつける? //////////
現在、「おおさかFCV推進会議」が燃料電池車の普及に力を入れている。水素供給ネットワークが整うまでは、移動式ステーションが大いに活躍するだろう。パイプラインができれば、どこでも充填できるようになるが、それがいつ実現するかはわからない。この移動式ステーションは、関西をはじめ、地域での水素エネルギー普及に向け、燃料電池車への大量で簡易な水素供給ステーションとして、また定置式燃料電池などへ水素を供給する液体水素ネットワークのキーステーションとしても活躍できると考えている。

――将来の水素社会の展望と抱負は? //////////
水素社会が注目されているのは、利用段階でCO2を出さない点。現段階で水素は化石燃料起源で、究極のCO2フリーにはなっていない。ガス会社なども水素に取り組んではいるが、CO2フリーでなく、天然ガスで水素をつくっている。アイスランドのように水力・地熱などの再生可能エネルギーによる水素社会の構築が理想的だが、それがいつかと言うと気の遠くなるような話。とは言え、将来の水素社会は完全なCO2フリーをめざすべき。それには水力とか太陽光、風力という自然エネルギー、あるいは原子力も注目されている。原子力で電気をつくり、その電気で水素をつくる方法もあるし、原子力の熱を使って水を直接分解する方法もある。それが実現すればCO2フリーだし、太陽光や風力という小規模なものではなく、大きな力で大量につくることができる。将来の水素社会のイメージはまだ明確ではないが、水素に期待している人は多いので、今回の移動式ステーションなどをきっかけに、少しでも水素社会に近づけたらと思っている。■

プレスリリース
 http://www.kepco.co.jp/pressre/2005/0602-2j.html

研究開発情報
 http://www.kepco.co.jp/rd/index.html
  



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