Insight時代を解くキーワード Presented by 関西電力
| HOME | このサイトについて | メルマガサンプル | 談話室 | 配信申込・解除 | お問い合わせ・ご意見 |
関西電力HPへ 関西電力HPへ
Main Column Break Close up エナジー News Clip 関西電力 講堂(イベント/セミナー)
 

Close up エナジー
 

「なぜ関西電力が『気象情報サービス事業』?」

2004.12.01
小久保鉄也・気象工学研究所社長



 気象工学研究所 
 社長 小久保鉄也



関西電力は2004年9月、社内ベンチャー制度で新会社「気象工学研究所」を設立、11月から事業を開始した。なぜ関西電力が気象情報サービスなのか、どのようなビジネスモデルなのか──新会社の小久保鉄也社長に訊いた。

――事業化に至った着眼は? //////////
電気事業はインフラ産業。巨大な設備を有し、電気をお届けするなかで、常に気象の影響を考えざるを得ない。電力需要ひとつとっても、気温が1℃上昇すると約110万kWの需要が増える、送電線への落雷は瞬間的な電圧低下や停電につながるなど、設備運営において気象対策は不可欠だ。私自身、土木部門、特に水力部門で育ち、長く黒部を担当していたが、1995年7月──この年は1月に阪神大震災、春にオウム事件があった大変な年だったが、さらに7月に黒部川で大水害があった。ちょうど今年の福井や新潟と同様、黒部峡谷にダム職員らが取り残された。「長年、黒部で仕事をしてるのに、なんでそんなことになるんや」──以前から降雨予測情報は活用していたが、自分たちに役立つ情報に加工する必要があると痛感したのが、始まり。もともと気象の影響を受ける事業だから、気象専門の子会社があっていいという思いもあったし、黒部ダムに遡る技術の会社としての自負もあり、新しい技術展開として気象という方向性は間違っていないはずだと。

――社内ベンチャー制度での設立だが、何が難しかった? //////////
ベンチャーは事業そのものが「旬」であり、あまり長期的に見ると踏み出せない。加えて、川は一歩一歩渡れない。川の畔まで来たら、最後は思い切って助走をつけて飛んで、向こう岸に辿り着くか、ポチャッと落ちるか。その決断が難しい。

――背中を押したのは? //////////
失敗すると思ったら飛べない。最後に飛んだのは、いけるはずだ、いけないはずがないという思い。もう一つ、独りで飛ぶわけじゃない。京都大学と日本気象協会という強力なパートナーがいた。95年の黒部の水害以降、三者で研究会をつくり、降雨予測の研究を続けていたことが、今回の新会社設立につながった。京都大学の学術的な研究成果、気象協会の専門ノウハウ、関西電力のインフラや気象に関する特許と、それぞれの強みを生かせるし、特に京都大学防災研究所の現役の先生が事業を手がける例は初めてで、これはインパクトがある。

――具体的な事業内容は //////////
地域(ローカル)の気象・防災に特化したシステムコンサルティングをやっていこうということで、現在、商品化してるのは「ローカル降雨予測システム」。これは1km四方のピンポイントで6時間先まで高精度な予測ができるというもので、関西電力が特許を持っている。試験運用中なのが「落雷予測システム」。ほかに気象に関するシステム設計や、携帯メールなどを使う情報配信サービスも行っていく。

――近々商品化する落雷予測システムも特許商品? //////////
そう。この会社の特徴は、関西電力の保有特許を活用してシステムを構築する点にある。降雨予測は関西電力が100%特許を所有。落雷予測は日本気象協会と関西電力が50%ずつ持っている。発雷予測は他にもあるが、落雷は恐らく初めて。関西電力は過去の落雷位置などに関する詳細なデータをLLS(落雷位置評定システム)として集積している。落雷位置がリアルタイムでわかる設備を持つ会社など、普通ない(笑)。ずっとデータを見ていると、雷雲の移動に伴って次はどこが危ないかわかる。これが落雷予測システム「カミナール」だ。関西電力は以前から、本店近くの中之島センタービルの屋上と福井県に、巨大な気象レーダー設備も持っている。現在は関西電力以外の目的では使っていないが、これも今後使っていきたい。

――ただ、気象情報サービスというのは競合も多そうだが…… //////////
確かに、気象庁はじめ民間のサービス会社も多いが、よその気象会社はデータを売るだけ。我々の特徴は、お客さまのニーズを捉え、コンサルティングを行い、お客さまに合う情報に加工する。マスメディアで華々しい活躍をしている会社もあるが、その市場に出ていく気はない。むしろ地域に特化して、オーダーメイドでお客さま価値を創造していくのが最大のポイントであり生きる道。例えば国土交通省のダム事務所に対し、降雨量予測をするだけでなく、それを流量に変換するなどの加工をする。技術的には、ピンポイントで高精度予測ができるという特徴があるが、それは直接的な価値じゃない。ピンポイントで予測が欲しいなんて言う人はいない(笑)。お客さまは、川の水が増えるかどうか、あの土砂が崩れるかどうかを知りたい。だから地域の過去の気象データや地形を加味して、カスタマイズした気象情報に加工し、「こう使えば安全に便利になりますよ」と使い方まで教える。実際は、お客さま自身なかなか困っている点が見えてこないが、何度も足を運んで徹底的にヒアリングしながら、一緒に価値を生み出していく。ビジネスとしては手間がかかるやり方なので、恐らく他にない、泥臭いビジネスモデル。だけど、それも地域に根ざす関西電力には相応しいんじゃないか。

――どのようなお客さまを回っているのか? //////////
降雨となると安全確保が大事。避難勧告の発令やダム操作・運用までの迅速で的確な判断が必要なお客さまとして、国や県などの自治体、ダムの所有者、河川事務所など。落雷対策としては大工場や電鉄会社がお客さま。自治体サービスも民にできることは民にということで縮小傾向にあり、最後に残るのは安全・安心の防災面と高齢者介護面。防災面でのニーズがあることは事前に分かっており、それもポンと川を飛ぶ、最後の一押しになった。

――新会社では高精度な予測・加工に加え、さらに情報配信まで? //////////
防災の観点では、気象情報をいくら予測し加工しても、個人個人に情報が伝わらなければ、被害につながる。確実な情報伝達こそが大事なので、必要な情報を必要な人間に届けることを事業化したい。関西電力グループには、データセンターやシステム設計など情報通信関連の多様な会社があるので、それらと連携し、アウトソーシングでやっていく。既に先般、A自治体で災害時の情報配信システムを受注した。災害時、携帯電話は通じにくくなるが、メールならパケット通信で1分間に1万通以上配信できる。A自治体でそういうニーズがあると知ったので、関電事業所の仲介で即訪問。この技術は誰も持っていないので即受注。このシステムはB自治体、C自治体からも引き合いが来ている。

――気象工学研究所の事業化で、世の中はどのように変わる? //////////
私の学生時代の恩師で新会社の共同出資者で取締役も務める京都大学・池淵周一先生の言葉を借りれば、気象というのは時々刻々変わる動くインフラ。人間の生活はすべて気象の影響を受けている。ところが「気象工学」という言葉は広辞苑にも載ってない。気象学というサイエンスはあるが、実際に人間が活動する場を担当するのは工学。空の上の雲の学問としての気象学はあるし、雨が地面に落ちてからの河川工学もあるが、その間を結ぶものがなかった。そこを何とか結びつけたいというのが、気象工学の理念。雨や雷、気温の研究成果を人間の生活に結びつけ、最終的には個々の人間にまで伝えるための情報手段を提供することで、もっと利便性が増す、あるいは安全が確保できるようになる。

――今後の抱負は? //////////
新会社の現在の陣容は、関西電力からは私ともう1人、あと派遣社員として気象予報士が2人という小所帯。昼は原則外回り。夜は関係者が集まって議論したり提案書をつくったりと、悪戦苦闘の毎日だけど、やりがいはある。ほんの小さな「気象という隙間」があり、そこを埋めることで気象観測設備や情報技術、人脈など関西電力グループのいろんな資源が生きてくる。いいとこが空いてたと(笑)。グループ各社と連携してやっていけば、シナジー効果も生まれるし、人々の安全・安心に資源を投入するという関西電力グループの方向性にも合っている。幅広く一気に展開できる事業ではないので、まずは関西、足元から、地道に、しかし志高くやっていきたい。■

関連資料>> http://www.kepco.co.jp/insight/content/close/library068.html
気象工学研究所>> http://www.meci.jp



Columnカテゴリ検索
政治・外交
経済・経営
社会・生活
文化・文明
科学・技術
電力・エネルギー
関西
サイト内全文検索
バックナンバー
Insight時代を解くキーワード
Copyright (C) 2002-2008 KEPCO THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.