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「原子力発電所の新しい安全規制とは?」

2004.02.01
松枝啓之



 原子力事業本部保全計画グループ
 チーフマネジャー 松枝啓之



2003年10月、原子力安全規制が改正され、高浜3号機の定期検査から新規制が適用されている。そもそもなぜ改正され、従来の安全規制とどう違うのか――原子力事業本部保全計画グループの松枝啓之・チーフマネジャーに訊いた。

――そもそも、なぜ原子力安全規制が変わったのか? //////////
1999年9月のJCO事故を機に、2001年1月に原子力安全・保安院が設置され、翌年2月から国の総合資源エネルギー調査会の検討会で日本の原子力規制や検査について既に議論されていた。ポイントは3つで、まず安全確保のため、より実効的な検査制度にすること。次に、結果だけの確認でなく、プロセスを含めた保安活動全体を抜き打ち的に検査する。3つめに、優秀な事業者には次回から検査の間隔を延ばすとか検査項目を減らすなどインセンティブを与えること。この3本柱で2004年春からの導入に向けて検討されてきたが、2002年8月に起こった東電の自主点検記録等の不正問題を受け、半年ほど前倒しされ、2003年10月から新しい規制がスタートした。東電問題に関連して追加されたのは、自主点検の法制化で、それ以外は東電問題以前から検討を重ねてきた内容だ。

――原子力発電所の定期検査は、実際にどう変わった? //////////
これまで、とりわけ重要な設備については国の定期検査があり、それ以外の設備は電力会社の自主点検となっていたが、今回からこの自主点検が「定期事業者検査」として法的に義務づけられた。我々事業者は、もともとすべての設備を検査していたわけで、その意味では検査範囲は変わらない。しかし、検査の実施体制や方法も審査され、検査記録をきちんと取って保存すると同時に、報告することがルールとして明確化された。国の定期検査部分については従来から原子力安全・保安院の立会検査があったが、定期事業者検査についても独立行政法人原子力安全基盤機構の人が常駐し、24時間体制で立会検査を行い、その審査結果を国が評定する。いずれの検査も、結果だけでなく、検査準備や段取りまでプロセスを含めて全部見ていただく。それも当日の朝、検査員が「今日はここを見る」という形で、抜き打ち的に行われる。これにより、検査の適切性、信頼性、透明性が確保されるというわけだ。昨年12月18日から始まった高浜3号機の定期検査が、こうした新ルールに基づく日本初の検査になり、現在、基盤機構のチームが、原子力安全・保安院より移管された一部の定期検査のため1チーム、定期事業者検査のため2チーム、計3チームが発電所に常駐している。

――定期事業者検査では「維持基準」に基づく設備の「健全性評価」の実施・報告が義務づけられたが、「維持基準」とは? //////////
使っているうちに機器に生じた亀裂などの欠陥を評価し、設備の健全性を確保するために定めた規制基準のことだ。設備に亀裂などがあっても、必要な構造強度が維持されていれば、そのまま使っても安全運転に支障はない――こうした「維持基準」の考え方は従来からあったが、具体的なやり方が明確でなく、手間もかかった。例えば従来は亀裂が見つかると、事業者がそれぞれ独自に強度計算をして、○○年程度ならこのまま使っても大丈夫だということを国に報告をする。国はその都度、有識者や専門家を集め、妥当かどうか技術的判断を仰ぐ形でやっていた。今回、対象設備を決め、審査基準には日本機械学会の「維持規格2002」を用いる、とルールを明確化。客観的かつ統一的な手法により、「健全性評価」が行えるようになったというわけだ。

――安全性に問題はないのか? //////////
「維持基準」を明確にするということだけで、安全水準を甘くするものではない。「安全水準」自体は、設計時と同じ。もともと設備は、構造上十分な余裕を持って設計されており、亀裂が生じたからといって、直ちに安全上問題になるわけではない。ただ、その亀裂が、5年後にどの程度進展するかを予測し、構造強度が安全水準を満たしていれば引き続き使えるが、そうでなければ修理なり取り替えを行わねばならない。その判断が、誰にもわかる基準で行われることになったということだ。

――欧米ではどのような仕組みになっているのか? //////////
アメリカでは1970年代から米国機械学会(ASME)が維持基準の整備を順次進め、今やASME規格は世界標準となり、維持基準の考え方は既に各国で取り入れられている。今回日本で導入した維持基準も、ASMEの規格を参考にしながら、日本固有の地震基準なども加えて策定したものだ。

――新しい安全規制適用第1号となったわけだが、電気事業者としての抱負は? //////////
関西電力が原子力を手がけて30年余り。初期トラブルを経験しながら技術を磨いた時代から、今はある程度技術も成熟し、そんなに大きな設備トラブルはなくなってきた。原子力に携わる人も、プラント同様、徐々に世代交代が進み、トラブルを身をもって体験した世代と、トラブルが少なくなって机上で勉強している世代が混在している。今回の新しい規制体系では、検査の必要性からプロセスに至るまで、我々電気事業者に説明責任が課せられた。トラブルなくやってきた世代も、もう一度原点に帰っての説明が求められているわけで、これは「技術伝承」の観点からも望ましい。今後、我々電力会社自身はもちろん、国や立入検査をする側も、互いに切磋琢磨して安全性向上に努めることで、科学的・技術的に、より合理的で効率的な原子力安全規制の体系をつくりたい。それが原子力に携わる者の使命だと考えている。■



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