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「原子力のバックエンドコストって?」

2004.01.15
小田英紀



 原子力事業本部原燃計画グループ
 チーフマネジャー 小田英紀



原子力発電の「バックエンドコスト」に注目が集まっている。原子燃料を繰り返し有効利用するリサイクル路線を堅持する一方、電力市場の自由化も加速度的に進むなか、バックエンドコストは誰が、どのように負担すべきなのか──原子力事業本部原燃計画グループの小田英紀・チーフマネジャーに訊いた。

──そもそも「バックエンド」とは何か? //////////
バックエンド(後処理)とは、原子力発電所でウラン燃料を燃やした後の工程のこと。使用済み燃料を再処理し、燃え残ったウランや新たに発生したプルトニウムを取り出してMOX燃料に加工したり、再処理工場などから出る放射性廃棄物を処理処分したりすることをいう。
これらの工程全般を指して「バックエンド」と呼ぶが、実際の工程は発電後すぐに行えるものではないし、短期間で終わるものでもない。例えば使用済み燃料は再処理前に数年間の冷却期間が必要だし、高レベル放射性廃棄物は最終処分までに30〜50年間冷却して放射能レベルを下げる。さらに最終処分(地層処分)した後も、何十年間もモニタリングする。つまりバックエンドとは、100年オーダーの長々期にわたる事業だということをまず知ってほしい。

──そのバックエンドコストとして電気事業連合会は2003年末、再処理工場を40年間運転した場合、総額約18.8兆円が必要との試算を公表した。非常に莫大な費用という印象だが? //////////
18.8兆円という数字は、再処理工場やMOX燃料加工工場の操業費から、これらの工場が運転終了した後の廃止措置に関わる費用、さらにはその際に発生する放射性廃棄物の処分費用まで、バックエンド事業全般を網羅したもの。これらの中には、今までの電気料金に含まれていたものもあれば、含まれていなかったものもある。確かに巨額だが、今後「新たに」18.8兆円必要ということではない。今回改めてバックエンドコストを──これまでにプールしたものも、していないものも含めて──全部積み上げたら18.8兆円かかる計算になった、ということだ。

──具体的には、今までの電気料金には何が含まれており、何が含まれていなかったのか? //////////
代表的なものを挙げると、含まれていたのは、使用済み燃料の再処理費用、高レベル放射性廃棄物の最終処分費用など。これらは再処理引当金制度や、NUMO法(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律)に基づく積立金制度に則り、電気料金に織り込まれている。一方、含まれていなかったものには再処理工場の廃止措置費用や、TRU廃棄物(超ウラン核種を含む放射性廃棄物―燃料集合体の被覆管など)の処分費用などがある。
バックエンド事業は非常に長期にわたるため、不確定要素も多い。だからこれまでは見積が可能なものから、あるいは制度の整ったものから、順次電気料金に織り込むという方法でやってきた。結果、本来は過去の電気料金に含まれるべき費用も、未回収になってしまっているものもある。

──その「未回収分」はどうするのか? 電気料金に上乗せされるのか? //////////
未回収分がどれくらいあり、どのような措置を講じるかは、今後、経済産業大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会電気事業分科会で議論されることになっており、現時点では未定だ。ただ、電事連としては、自由化範囲の拡大に伴い、過去に原子力発電による電気を使用したお客さまから回収することが現実的には不可能となるため、これまで原子力の恩恵を受けてきた国民の方々に「広く薄く」負担していただきたいと主張している。
なぜなら未回収分とは「過去の発電」に起因するコスト。つまり自由化拡大以前の、すべてのお客さまが原子力発電所でつくった電力会社の電気をお使いいただいていた時点で、本来回収させていただくべきだったものだ。合理的見積もりができない等の理由により、電気料金として回収することが適当でなかったため回収が遅れてしまったが、だからといって電力会社のお客さまだけから回収したのでは、新規参入者に乗り換えたお客さまが過去に使った電気のコストを、一般家庭など自由化対象外のお客さまに強いることにもなりかねず、公平性を損なう。従って過去の発電に起因する未回収分だけは、なんらかの形で「広く薄く」国民のみなさんにご負担いただきたいと考えているのである。ただ、広く国民のみなさんにと言っているのは、あくまで自由化拡大以前の発電に起因する部分で、18.8兆円のすべてではない。
また、エネルギーセキュリティや環境適合性といった原子力のメリットは、特定地域や特定のお客さまだけでなく、国民誰もが享受しており、その意味でも「広く薄く」負担していただくことが公平性に適っている。

──ただ、それでは国民は、未回収分を負担したうえ、さらにバックエンドコストを上乗せした高い電気を買うことになる。そもそも原子力は経済優位性もメリットのひとつだったはずだが、その優位性が崩れるのでは? //////////
そんなことはない。実際、今回のバックエンドコスト試算と同時に電源別の発電原価も試算したところ、運転年数40年、割引率3%の場合、原子力は5.3円、石炭火力が5.7円、LNG火力6.2円、石油火力10.7円(いずれもkWh当たり)。発電所建設コストの低減などもあり、前回試算の5.9円よりさらに安くなる。確かに石炭火力との差は接近しているが、長期的に見れば依然として最も割安な電源といえる。
もちろんこの5.3円は、バックエンドコスト0.81円を含んだ数字。0.81円の中には、これまで電気料金に含まれていなかった再処理工場の廃止措置費用なども入っている。つまりバックエンドコスト18.8兆円の項目をほぼ網羅して、これを織り込んだ発電原価が5.3円だ。従って巷間囁かれている「バックエンドコストを加味すれば割高になる」というのは間違い。バックエンドコストを含めても、原子力の経済性は他の電源との比較において遜色はない。

──とはいえ今後の政策如何によっては、原子力を取り巻く情勢が大きく変わる可能性もある。電力会社は相当のリスクを抱えることにならないか? //////////
確かにそうだ。もちろん今回試算した18.8兆円は、絶対的・確定的なものではなく、ある程度の変動幅も見込んだ数字。規制の見直しや設計・施設の合理化など、合理的範囲内での環境変化には対応できるが、大きな政策転換までは考慮していない。従来の規制下なら、原価主義に基づくコスト回収が可能だった面もあるが、将来の自由化拡大に伴い、いかに経営努力を重ねようと大きな政策変更による増分コスト回収は困難になる。
そうならないためにも、リサイクル路線を進める中での官民の役割を明確化してほしいと要望しており、これについても今後、電気事業分科会で議論される予定だ。

──審議の予定や制度設計の見通しなど、今後のスケジュールは? //////////
契約電力50kW以上のお客さまにまで自由化対象が拡大される2005年がひとつのポイントになる。それまでになんらかの制度をつくっておかないといけないから、2004年1月下旬からの電気事業分科会で審議が行われ、2004年中には結論が出ることになるだろう。議論の結果がどうなるかはまだ分からないが、我々としては、1)バックエンドコスト18.8兆円の試算は、相応の合理性をもって算出したものであること 2)バックエンドコストを含めても原子力の経済性は、他の電源と比較において遜色はないこと 3)自由化拡大以前の発電に起因する未回収分については、公平性の観点から「広く薄く」負担していただくのが望ましいこと──この3点を主張し、公平かつ妥当な制度設計を要望していきたいと考えている。■



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